第5話「家庭科室で激突!フライパン抗争と萌え弁当」
──早朝・朝比奈家のダイニングキッチン。
「さあ! ご主人様のために、最高の愛情朝食をっ!」
気合い十分のサッちゃんは、フライパンを振り回していた。 しかし――
\ボンッ!!!/
天井がまた一枚、吹き飛んだ。
ユウト「……なんで毎回、爆発するんだよぉぉ……」
サッちゃん「不思議ですね! 今日は火加減に“闘志”しか込めていないのに!」
KAIN《ガス供給停止。緊急冷却モードへ移行します》
ABEL《再建費:屋根、調理器具一式。予算の再申請を推奨します》
サッちゃん「ううぅ……どうしても料理だけは上手くいきません……っ!」
ユウト「だったらもう任せてくれって……」
KAIN《ところで本日、ご主人様の学校では“調理実習”が予定されています》
サッちゃん「……!!」
目を輝かせるサッちゃん。
「つまりリベンジのチャンス……!? ご主人様に美味しいって言ってもらうために……学校に潜入、決定ですっ!!」
ユウト「まさか、学校に来るのか……?そんなこと、いくらお前でも無理だろ!」
──登校中の坂道。
「……んあぁ……筋肉痛……」
ユウトはカバンを引きずりながら坂道を登っていた。
「朝比奈くん、大丈夫?」
メグミが声をかける。中学時代から知る優しい幼なじみで、生徒会長。
「昨日、電子レンジが爆発してさ……」
「電子レンジって……爆発するの?」
「我が家のは、たまに自我に目覚めるから……」
──その瞬間。
「ご主人様ぁ〜っ♥ おいていかないでくださいよ~潜入任務開始ですっ!!」
制服アレンジ済のサッちゃんが爆走登場。
ユウト「また来たー!? その制服、どうやって用意したの!?」
サッちゃん「本日は“調理任務”に同行いたします♥」
メグミ(誰……この人……?)
──朝・教室。
担任「おはよう。今日は転校生を紹介するぞ」
ザワつく教室。
担任「椎名リナさんだ。じゃ、自己紹介を」
リナ「ごきげんよう。椎名リナです。料理と掃除が得意。以上」
クラス「美人すぎる……」「なんか完璧……」
ユウト(なんでこのタイミングで。 昨日オムライス作ってたやつだよな……制服の着こなしも完璧って……)
サッちゃん(教室の外でヒソヒソ)「出たなツンケンチャイナ……やはり任務中ですね」
──【家庭科室】
教師「今日はペアで“理想のお弁当”を作ってもらうぞ」
サッちゃん「はいっ! ご主人様とペアですぅ♥」
ユウト「ちょ、メグミとやろうと思ってたのに……」
サッちゃん「メグミ様の分も、愛情たっぷり♥」
メグミ「え……ありがとう……?」
リナ「ペアが足りないなら、私が加わるわ」
教師「じゃあ三人グループで作ってくれ」
──【調理開始】
サッちゃん「今日の食材はABEL特製・真空おかずセットっ!」
KAIN《校内ネットワークリンク完了。火器使用は安全基準内に収めてください》
サッちゃん「控えめに……火花程度に留めますぅ♥」
ユウト「その“控えめ”がいつも爆発するの!」
──【調理バトル】
サッちゃんは全力愛情モードで卵を割り、ケチャップでハートを描く。 リナは流れるような手際で栄養バランス満点の和風弁当を仕上げる。
メグミはその間、自分の分の調理器具を整えながら静かにフライパンを温めていた。
メグミ(……この空気の中で私も作っていいのかな? いや、生徒会長として、見守るだけってのもアリ……? でも悔しい……!)
メグミは意を決して野菜を切り始めたが、鍋を振るたびに後ろから炸裂音や歓声が響いて集中できない。
「ご主人様〜お口あーん♥」
「やめろ! 公共の場ぁぁ!!」
「では朝比奈君、こちらを」
「(くっ……なんか悔しい……!)」
メグミ(なにこの三角関係……誰も私に気づいてない……!)
──【鍋の爆発】
サッちゃん「仕上げに、萌えブースト・オン♥」
\ドカン!!!/
天井にぶつかる鍋。火災報知器作動。
教師「誰だ!? 何をした!?」
KAIN《非常事態モード。消火システム作動》 ABEL《被害報告提出完了。調理事故と認定》
──【クラス騒然】
ユウト「これ、ただの弁当作りだよな……?」
メグミ(……今さら何もできなかった。完全に空気だった……!)
──【ラスト】
校長「また朝比奈家か……屋根の修理費はどこから出すんだ……」
サッちゃん「ご主人様の胃袋、絶対に私が射止めますっ♥」
ユウト「もう胃袋ごと爆破されそうなんだけど!?」
──【エピローグ・放課後の屋上】
ユウト「結局、何もかもぐちゃぐちゃだったな……」
メグミ「うん……私はサラダしか作れてなかった……」
サッちゃん「でもっ! ご主人様に食べていただけたので大勝利ですっ♥」
リナ「そのせいで校内火災報知器が3回鳴ったわ」
KAIN《本日の校内損害:火災報知機3基、天井パネル1枚、調理器具5点》
ABEL《損害報告を自動提出しました。なお、ユウト様の“胃袋被害率”は76%です》
ユウト「そんな数値いらねぇぇぇ!」
──そのとき。
担任「おーい朝比奈、お前ら来週の“野外調理実習”に向けて準備しとけよ」
ユウト「……なんすかそれ」
担任「山で飯盒炊爨だ。火の扱いに注意しろよ。前例あるだろ?」
ユウト「……嫌な予感しかしねぇ……」
サッちゃん「今度こそ完全勝利の機会ですねっ♥ 野外訓練と聞いて、燃えてきましたーっ!!」
メグミ「それ……比喩だよね? 火じゃないよね……?」
ユウト「やめろサッちゃん! ぜってぇ燃やすなよ!!」
──そして物語は、第6話へ続く──
【第5話・完】