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サイドストーリー18「同級生くのいちノア、学園に舞う」


――朝、星ヶ丘高校・正門前。

のぼり旗が微風に揺れ、チャイム前の通学ラッシュタイム。

その人は、校門の脇の極太イチョウ……に縦に貼り付いていた。

女子A「ねぇ、あれ……木の皮から美脚生えてない?ほらミスコンにいた…」

女子B「え、演出? 新手の広告?ほんとだ、ミスコンの…」

男子C「(スマホ)“木から脚出てる”で検索……出ないな」

ノア(囁き)「……任務開始。目標はハリケーン・ドール及び紫チャイナの回収……!」

(※木の陰からスッ……と降りるも、落ち葉を踏んで転がっている)

ノア「……任務続行キリッ


——

ユウト「おはよ……って、なんか今日、視線の圧がすごいな」

メグミ「ユウト、後ろ。ポールの影にポニーテールがはみ出てる」

ユウト「え、ポールって影出るの?」

メグミ「出てる。しかも長身。すねが綺麗な、ミスコンに出てた…」

ポールの影からスッと現れたのは、長身の美人。黒のボディラインが出るジャージ、やや長めのポニテ、目元は涼しげ、表情は超真面目。腕には「新聞部(自称)」の腕章が……雑に付いていた。新聞部なんてあったのか。

ノア「……朝比奈ユウト。取材の申し込みだ」

ユウト「は、はい?」

ノア「朝食は“白米大盛り、味噌汁、目玉焼き”か?」

ユウト「(当たった!)なんでわかるの?てか取材って何?」

ノア「忍の見立て。ついでに、君の周囲に“危険物(筋肉)”の反応あり」

ユウト「サッちゃんのこと?危険物呼ばわりはやめてあげてよ」

廊下の端、窓の外。紫の影が手を振る。

リナ(小声)「——丸見えよ、ノア」

ノア(ピタッ)「……察知済みか、椎名リナ」

リナ「“椎名先輩”ね。礼儀くらい守りなさい」

ノア「私は任務を守る」

リナ「こっちは“校則”と“社会常識”を守る」

ふたりの視線が火花を散らす。しかし教師が通ると、同時にスッと姿勢が良くなる。

担任「廊下は走らない。あと、壁から生えるな。もうこの学校何でもありだな」

ノア「……はい(素直)」


ホームルーム(と、黒板裏の攻防)

HR開始直前。

黒板の後ろから、黒装束の袖がじわっと伸び——黒板消しをサッと持ち去る。

ノア(黒板裏から)「……粉の匂い。ここに日々の営みが——」

リナ(反対側から手を差し入れて)「返しなさい。先生が困るわ」

ノア「“困る”という言葉は苦手だ。任務に言い訳は無い」

リナ「じゃあ理屈で行くわ。黒板消しを奪うと、HR開始が遅れる→在校時間が伸びる→ユウトが倒れる→監視対象(=私たち)が動く。はい詰んだ」

ノア「……詰んだ(納得が早い)」

黒板の上からぴょんと飛び降り、何事もなかった顔で席へ向かうノア。

クラスがざわつきだす。

メグミ(小声)「いきなり同級生が一人増えたのになんて自然さ、逆に目立つ……」

担任「今日から転入生を紹介する。先日ミスコンに出ていただいた風間ノアさん」

ノア「私は…ミスコンに敗北した。この学校でリベンジさせてもらう」

担任「リベンジ?に来てくれました。皆さん仲良くしてあげてくださいね」

ノア「……よろしくおねがしますぅ(噛む)」


教室の後方、サッちゃんが窓枠に正座している。

ユウト「サッちゃん、なんでいるの?」

サッちゃん「窓掃除のついでに登校の安全確認ですっ♥」

担任「もうツッコまないから座れ」


昼休み:食堂“ハイカロリー忍法”

食堂の列。

ノア、給食トレーを持ちながらミリ単位で後方警戒。

厨房の奥から、巨大お玉を構えるサッちゃん。

サッちゃん「ご主人様ぁ~! 今日の“大さじ1”はほんとに大さじ1でお届けしまーす!」

ユウト「それ“大さじ100”くらいあるよね?」

サッちゃん「筋肉に盛らないのは礼儀違反ですっ!プロテインの摂取に抜かりなし!」

ノア、静かにユウトのトレーの上の唐揚げ山を見つめる。

ノア「……油断(油)を断て」

ユウト「うまいこと言うな」

リナが間合いに入る。

リナ「油断は断つ。でも“栄養バランス”は取る。ノア、あなたは頑固で一直線ね。そこでもっと周囲を見る練習をしましょう」

ノア「周囲……?」

リナ「サラダ、味噌汁、タンパク、炭水化物。横一列で整列。ほら、忍の隊列だと思って」

ノア「……隊列。理解した(素直2回目)」

メグミ(ニヤ)「で、ノアさん。何が目的で学校に来たの?」

ノア「私は“黒百合”からの連絡員。ハリケーン・ドールと椎名の“回収”が目的」

リナ「回収? お断りよ」

ノア「任務は——」

サッちゃん「ごはんは笑顔で食べるのが任務ですっ!」

ノア「……任務更新……?」

メグミ「更新すな」


5限目:体育(※忍者、現代スポーツに負ける)

バレーボール。

ノア、跳躍力で圧倒的スパイク。だが全力すぎてボールが体育館の壁を抜けそうになり、寸前でリナの指先が回転を殺す。

リナ「力じゃないわ、角度と回転で逸らすの」

ノア「角度……22.5°?」

リナ「そこに戻るのやめなさい」

サッちゃん、コート外で審判台を抱えて移動。

ユウト「いやいや、一体何キロあるんだよ…」

サッちゃん「審判さんっ、日陰つくっておきますねっ!」

審判「君の筋力のほうが日陰作ってるよ……」

ノア、ネット際で忍足。

ノア「——見切った」

リナ「——まだよ」

ふたり、空中で低い声の会話をしながら普通にラリーを続ける。

クラスメイト「これは?舞空術?」

メグミ「みんなここは戦場よ。すぐに逃げて!」

最後、ノアが猪突猛進で転び、床に頭を垂らす。

ノア「……屈辱。床と友達に……」

リナ「床は大事よ。落ち葉より滑らない」

ノア「落ち葉……(朝の自分を思い出して目が泳ぐ)」


放課後:図書室“忍び読み禁止”

静かな書架の間。

ノア、書棚の影からスッと現れ、「家庭科全集:やさしいアイロン」を手に取る。

ノア「……アイロン、過熱しすぎてはならない。布にも心にも折り目を」

リナ「名文ね。サッちゃん向けに貸出二冊お願いします」

司書さん「一冊しかありません」

ノア「では任務として写経」

司書さん「やめて(速攻)」

ユウトが別の棚で小テスト用の問題集を探していると、ノアが背後で仁王立ちしていた。

ノア「英語、少々か」

ユウト「うん、“少々”便利」

ノア「便利は敵だ。基礎を固めろ。SVO。主語・動詞・目的語。任務・実行・対象。忍語訳だ」

ユウト「急にわかりやすい」

メグミ(いつの間にか向かい側)「ユウト、**“順番待ち”と“ありがとう”**も世界語だよ」

ノア「順番待ち……隊列。ありがとう……任務完了の合図」

リナ「いいじゃない。その発想。ここじゃ“撤収”より、“帰還”が似合うでしょう?」

ノア、少しだけ表情が緩む。すぐに戻る。

ノア「……任務に情は不要」

リナ「情がないと、布は焦げるわよ」

司書さん「図書室ではお静かに」


下校:屋上経由の“決戦”

夕暮れの屋上。

ノアは制服の裾を風になびかせ、フェンスの前で両腕を組んでいた。

リナがドアから現れる。

サッちゃんはどこからともなく現れる(たぶん外壁)。

ユウトとメグミもなぜか居る(メグミが鍵を持ってた)。

ノア「宣言する。二人を——連れ戻す」

リナ「宣言返し。帰らないわ」

サッちゃん「帰宅なら毎日してますっ!」

ノア「そういう帰宅ではない。黒百合が二人の帰還を求めている」

ノアが言い終える前に煙玉を投げた。周囲を覆う煙に紛れてノアが仕掛けてきた…

——風が強くて本人に全部戻っていく。


ノア「……演出、失敗。風読み不足」

リナ「ここ、丘の上だもの」

メグミ「屋上だと風が吹いてくるもんね。体育館とかにすればよかったのに」

ユウト「そんな目で見たらかわいそうだろ」

ノアは真顔に戻り、まっすぐユウトを見る。

ノア「……朝比奈ユウト。あなたは弱い」

ユウト「うん、こっち⁉否定はできないけど」

ノア「だが、あなたの中心に“立ち止まらない軸”がある。臆病ではあるが逃げない。それが、彼女たちの護衛線を強くする。——観察報告、以上」

リナ「観察“報告”ってことは引いてくれるのかしら?」

ノア「今回は引こう。だが監視、報告は継続の必要がある」

サッちゃんがにこっと笑って、ノアの手を取った。

サッちゃん「ね、ノアさん。うち、夕飯食べていきます?」

ノア「……任務中」

サッちゃん「任務:栄養補給。次の任務に備える。忍語訳でもOKですっ!」

ノア「……任務受領(素直3回目)」

リナ「ちょろ……いや、素直」


——

屋敷前・夜

KAIN《来客検知:コード“残念忍者”》

ユウト「ラベルがひどい」

KAIN《褒め言葉辞書に“残念=伸びしろ”として登録済み》

ノア「声の出所は……屋敷じゅうか。気配はあるが体は無い」

KAIN《褒め言葉として受信》

ダイニング。

本日のメニューは手羽元と野菜の煮物。

サッちゃん「火力は中弱、味は丁寧、笑顔は強火ですっ!」

リナ「完璧ね」

ノア、ひと口。目を丸くする。

ノア「……優しい」

ユウト「うーん、優しさが染みる。美味しい」


食後。

ノア「観測ログ。黒百合の“戦場”では、こういう静かな時間が最大の隙だった」

リナ「ここでは、それを“暮らし”って呼ぶのよ」

ノア「……報告保留。再観察を要請」

ユウト「それってつまり、また来るってこと?」

ノア「任務は継続だ。だが——今日のところは、見なかったことにする」

メグミ「融通、出てきたじゃん」

ノア「またうまい飯を食わせてもらおう」

玄関で靴を履き、月を仰ぐノア。なぜか自信満々だ。

ノア「……朝比奈ユウト。弱いなら、強くなれ」

ユウト「うん。ちょっとずつ、ね」

ノア「“ちょっとずつ”は忍語で“毎日”を意味する」

ユウト「忍語⁉初めて聞く言葉ですけど…」

サッちゃん「毎日、お弁当を——」

リナ「話が飛ぶから一旦座りなさい」

ノアはふっと笑いかけ、ポニーテールを揺らして夜の道へ消えた。

足音は極端に静かで、でもたまに石につまづく音がする。

KAIN《評価:残念率 18% → 14%(改善傾向)》

ユウト「パーセント出すのやめろ」


——そして翌朝。

校門のイチョウ。幹には誰も貼り付いていない。

代わりに、根元に落ち葉で描かれた矢印がある。

「HR →」「食堂 →」「図書室 →」

最後の一枚だけ、屋上を指していた。

小さな文字で——


“今日も任務。横、見るの忘れずに。”


メグミ「……かわいいとこあるじゃん」

リナ「残念の、良い使い方ね」

サッちゃん「今日も笑顔任務がんばりましょうっ!」

ユウト「(俺も、毎日を任務にしよう)」

チャイムが鳴り、四人は人波へ溶け込む。

イチョウの葉が、いい感じの角度で風に舞った。

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