第15話 ドキッ!メイドだらけの料理番組
呼び出し――地元局からの依頼
朝比奈邸・食堂。テレビから“夕やけクッキング”の告知ジングル。
アナウンス『特集:メイドの愛情スイーツ! 生放送対決!』
ユウト「タイトルがすでに危険、なんちゅー番組だよ」
KAIN「地元局から出演要請あり。安全誓約書は未添付」
リナ「添付を求める。粉塵・油火災・電磁障害。保険証書も」
サッちゃん「テレビですっ! ご主人様に“美味しい”って言ってもらう全国……ローカル!」
KAIN「対戦相手リストに『マリー・マカロン』」
リナ「黒百合の戦闘メイド。来るわね」
スタジオ入り――現場監督・リナ
地元テレビ局・スタジオ3。照明リグ、ケーブル、IH調理台。
リナ「動線チェック。カメラ1正面、2寄り、3クレーン。消火器二箇所。スプリンクラー手動切替は?」
フロアD「確認します!」
KAIN(放送卓接続)「過負荷監視、アラートはこちらへミラー」
ユウト「張り切っちゃって、それは番組を“作る側”だろ、俺たち」
サッちゃん「甘味兵装は“シュガー・バレット”と“ホイップ・ハンマー”!」
リナ「加熱・電子レンジは私の許可後」
マリー登場――糖衣の笑顔と刃
こちら控室。金髪をアップにまとめた若きパティシエ。白黒のコックコート。胸元に小さな黒百合ピン。手には温度計。
マリー「ごきげんよう。甘味は世界を救う、マリー・マカロンです」
サッちゃん「一緒に世界救いましょうねっ!」
マリー「スタジオの中で」
「なんでサーシャとリナが一緒にいるのかしら」
リナ(小声)「礼儀正しい。しかし油断は禁物」
いよいよ生放送開始、それぞれに緊張感が走る。
ジングル。観覧席の拍手。
司会「本日のテーマは“愛情スイーツ対決!”。挑むのは話題のメイド・サッちゃん、若き天才パティシエ・マリーさん!」
サッちゃん(決めポーズ)「ご主人様の笑顔のために、撃ち抜きますっ!」
リナ(小声)「語彙を柔らかく」
マリー「甘さは刃物。切れ味を、あなたに」
司会「まずはパンケーキ! 10分、スイーツ対決!レディー…ゴー‼」
司会(小声)「※本日は“止めない・焦らない・盛り上げる”の三原則で行きます。スポンサー的にもCM避け」
マリーは温度・泡立て・寝かせが完璧。
サッちゃんはボウル三台同時で回す。
ユウト「三台いる?」
サッちゃん「愛情は量で殴れますっ!」
IHが低く唸る。トッププレートの隅に薄紫の光。
KAIN「検出。結晶《FLUX-ζ》。IHに寄生、磁場暴走」
リナ「まずい、小休止を。司会、トークでつなぐ。腕の見せ所よ」
司会「生意気な小娘――こちとら司会30年のでぇべてらんだぞー、見てろよー」
フロアD「!」
切替が間に合わず、IHの表示が999。金属ボウルが浮く。
観客「えっ!?」「浮いた!?」
ユウト「やば」
リナ「カメラ3、高らかに寄り。エンタメ化。KAIN、逆相を計算!」
KAIN「出す。裏のサービス端子から注入可」
リナ「ユウト様、床下パネル!」
ユウト「了解!」
磁場が暴れ、泡立て器やスパチュラが舞う。悲鳴と笑いが半々。
サッちゃん「飛ぶ器具は任せてくださいっ!」
リナ「**刃物禁止。**非致傷だけ」
サッちゃん、ボウルはキャッチ&リリース。泡立て器は指でクルッと回してトレイへ。あちこちから拍手が起こる。
マリー「……見事」
彼女は銅鍋を盾に磁場を利用、ムースを浮かせて冷やす。
ユウト(床下)「逆相、注入。3、2、1……!」
IHの唸りが止み、器具がふわりと床へ。
司会「ただいまは演出でした! ねっ?」
KAIN(小声)「演出と言い切る度胸、評価A」
(司会、拍手を煽るタイミングを1拍ミスり、逆に笑いが起こる)
司会「改めて、焼きへ! サッちゃんさん、フリップどうぞ」
サッちゃん「コンセプト――『ふわふわ、時々、拳』!」
リナ「拳は不要」
マリー「私は**『静かな幸福』**。食べ終えて、静かに目を閉じる甘さ」
焼き上がる二人の生地。サッちゃんは高さ40cmのタワー、マリーは端正な3段。湯気が白く映える。
司会「試食! こちらこの街の高校生、朝比奈ユウト君!」
ユウト「サッちゃんのは軽いのに腹に来る。甘さと気合いが殴り合ってる。好き」
サッちゃん「やったぁぁっ♥」
ユウト「マリーさんのは静かに染みる。上品で、後味が消える。毎日食べられる」
マリー「ありがとう」
司会「視聴者投票、開始!そして料理は第2ラウンドへ突入だ!」
テーマはクレープ。
マリーは薄く均一、フリップ無しで返す。
サッちゃんは二枚同時、片方は空中泡立て。
リナ「殴らない」
サッちゃん「愛情エアレーションですっ!」
IHは安定。しかし照明の一部が共振し始める。
KAIN「結晶が照明回路へ転移。3次高調波」
リナ「クレーン3、上昇停止。安全索投入。――ユウト様、落下ネット」
ユウト「任せろ!」
マリー「続けます」
マリーはクレープを巻きながら、飴の糸を細く引き、揺れるケーブルへそっと揺れ止め。
リナ「器用」
マリー「飴は武器にも盾にも」
サッちゃん「じゃあ――シュガー・バレット!」
リナ「待て」
サッちゃん「(照明に当てず)固定部に極小糖塊をパチン」
KAIN「振幅低下。収束」
クレープ完成。サッちゃんは**“ハートの山”、マリーは“リボンの花束”**。
司会「投票結果――ドロー!なんと同票⁉」
テロップ:味=マリー/演出=サッちゃん/総合同点
観客「納得」「どっちも良かった」
天井裏で黒百合の結晶が最後の抵抗。照明ハンガーのサドルに米粒大の結晶。
リナ「ライト落として。――サッちゃん、スパチュラ投擲」
サッちゃん「はいっ!」
ヒュッ……コツン
結晶が外れ、コロリと落ちてきた。リナが白手袋で回収し、耐磁ケースへ。
KAIN「No.5《FLUX-ζ》確保。機能:誘導加熱/共振の増幅・転移」
放送後。モニタにコメントが流れる。
視聴者コメント
「事故を芸にした回」
「マリーの所作が尊い」
「サッちゃんの“拳エアレーション”天才」
「司会の肝、鋼」
フロアD「トレンド1位、“神回”!素晴らしい、皆さんほんとにありがとう」
サッちゃん「ご主人様、ちゃんとできましたか!」
ユウト「最高だった」
サッちゃん「っ♥」
マリー「――あなたの“拳”は面白い。だけど、料理は刃物。切先は常に制御して」
リナ「忠告に礼を。そちらの黒百合ピンは、**風紀委員(私)**が注視中」
マリー「ふふ。甘さの先、いつか見せるわ」
KAIN「彼女の屋台、位置ロスト。追跡保留」
メグミ(客席で白ヒゲ)「いつの間にか牛乳飲まされてた……」
リナ「水分補給は大事」
非常灯がぽつんと点り、静かに消える。騒がしかった現場に、心地よい余韻。
(第15話 完)




