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サイドストーリー14「商店街PR撮影:美女ふたり、地元を救え!(人力版)」

――昼下がり、買い出し任務の最中。

今日はKAINもABELもお休み。完全人力体制で、サッちゃんとリナはマイカートを押し、ユウトが財布を握っていた。


ユウト「唐揚げ粉は大さじ1で足りるから……」

サッちゃん「了解ですっ! 大さじ1、心に刻み──」

リナ「声デカいのよ」


そこへ、アーケードの端から商店街会長(法被+蝶ネクタイ)が猛ダッシュしてくる。

会長「お、お嬢さん方ッ! 買い物姿が!美!! ぜひ街のPR動画に出てもらえんか!」

サッちゃん「PR…?」

会長「そう! 今週末に流す!近所に大型スーパーができたからな、この商店街を守るため君たちのような美しい人が出演してくれると助かるのだ!頼む。 謝礼はコロッケ券20枚!!」

サッちゃん「やります!!」

リナ「30枚よ。」

会長「乗った!!」

ユウト「決断が秒速‼」


会長の背後から、サングラス姿のメグミ監督が現れる。小さなカチンコを構え、レンズ代わりのスマホを構図チェック。

メグミ「キュピーン! はい決まり。今からワンカメ地上波っぽく回します。私が監督、会長はAD。ユウトはツッコミとナレーション。KAINとABELはお休み。以上!」


ユウト「え、俺の肩書き“ツッコミ”が正式なんだ……」


① 八百屋「押さない愛で、艶は出る」


メグミ(サングラスに指二本)「はい、本番。サッちゃんは“買い客代表”で入って、リナは“所作の解説”。テロップは脳内でお願いしま~す」


サッちゃん「了解ですっ! 微ゼロ接近……艶ッ! ヘタの反りッ! 確認ッ!」

ユウト「それ口に出さないで!」


店主「お、目利きいいねぇ、お嬢ちゃんプロだね」

リナ「トマトは押さない。光の帯を見るだけ。ほら、**斜め22.5°**で──」

サッちゃん「艶のスペクトル、入射良好っ!」

ユウト「語彙が理系!」


マイカートの車輪が山積みみかんにぶつかる。

会長(AD)「やば! みかん崩落5秒前!」

メグミ「静止ッ! サッちゃん、急いでカート後退、リナ、手をこう──扇形に」


ふたりの連係で山積みみかんは無事だった。店主が親指を立てる。

メグミ「ワンカットOK。ナレーション、ユウト」

ユウト「『押さないやさしさ、ここにあり。八百屋の艶は、目で磨く』」

会長「地上波っぽいぃ~~!」

ユウト「地上波ってなに?」


② 魚屋「タコとの和解(仮)」


魚屋の氷上で、タコがうごめく。

サッちゃん「タ、タコさん……! 交渉、開始しますっ!」

リナ「交渉じゃなくて距離。ぬめりは尊重」


サッちゃん、勇気を出して指一本でご挨拶。

タコ「(ぺと)」

サッちゃん「ひゃあああああ!! つ、捕縛っ!? いえ違う、握手!!」

ユウト「それ握手のグリップじゃない!」


メグミ「リテイク。ここは“怖いけど頑張るチャレンジ”に筋書き変更。タコさんはモザイクじゃなく“ハート目テロップ(脳内)”で可愛く。はい、アクション」


撮り直し、成功。魚屋のオヤジが笑って一言。

「あんたら、テレビより面白いな」

会長「いただきました!」

ユウト「会長はどこを目指してるんです?」


③ パン屋「粉と湯気は盛らずに勝つ」


パン屋の奥から焼き上がりのベル。

リナ「湯気は待つのよ。ほら、5秒……今」

サッちゃん(小声)「ふわぁぁ……パンの生命活動……」


うっかりサッちゃん、粉袋をムキムキに持ち上げ──ぶちまける。

店主「わわっ! 小麦の雪!」

ユウト「盛ったな粉!」


メグミ「止め。雪景色は季節外れよ。店主さん、笑顔で『掃除も楽しみのうち』ってひと言もらえますか。3、2、1」

店主「掃除も楽しみのうち!」(満面)

メグミ「OK! これで“事故→前向き”の流れが地上波っぽいわ」

ユウト「まるで鬼畜の所業…」


④ 和菓子屋「餅つきは待ちで決まる」


和菓子屋の裏庭で突き台が出てくる。

会長(AD)「安全確認よーし!」

メグミ「本番。サッちゃん“つき”、リナ“手返し”」

ユウト「大丈夫? その組み合わせ危険物なんだけど」


ドン! ドン!

サッちゃん「ハッ! ハッ! ハッ!」

リナ「待て──はい、今」

ドン!(完璧)

「はい、今」

ドン!(完璧)

ユウト「まさかの無事故」


店主のおばあちゃんが目を丸くする。

「手の入れ方が**22.5°**で美しいわぁ。うちで働かないかい?ユウト君家の3倍出すよ!」

ユウト「サッちゃん、目が泳いでるな、なびいてるなびいてる。」

メグミ「セリフ神。そのまま採用するわ」


⑤ 金物屋「音、主役」


刃を砥ぐ音がキンと澄む。

メグミ「ここは無音演出よ。ユウト、ナレもささやきで」

ユウト(囁き)「――音が整うと、暮らしも引き締まる。音のソノリ…」

メグミ「はーい!カット!ナレーション気を付けて。」

会長「危ない危ない。」


サッちゃん、鍋をぽんと叩いてリズムを取ろうとする。

メグミ「そこは音足さない。削る勇気!」

サッちゃん「削りますっ!」

リナ「あなたの筋肉もね」

ユウト「言葉の刃も切れ味抜群」


⑥ おもちゃ屋前「路上インタビューは一問一答」


メグミ「市井の声、いきます。質問は一個だけ。『最近、この商店街で嬉しかったことは?』 サッちゃん、マイク**22.5°**で」


高校生カップル「パン屋さんで端っこパンもらった」

犬連れ紳士「干物屋の看板犬とうちの子が挨拶できた」

八百屋の常連「分からない野菜、押さずに選べた」


ユウト「なんだこの商店街。」


⑦ 屋台の焼きそば「行列は隊列」


屋台の前に長蛇の列。

メグミ「撮り高チャンスよ。並ぶ。割り込まない、抜かさない、笑顔」

サッちゃん「隊列、了解ですっ!」

リナ「焼きそば一舟ぶんの間隔を保持して」


ユウト「例えが独特」

会長(AD)「最後尾はウチのノボリ持って盛り上げて!」

サッちゃん「ノボリ、うっすら筋肉で支えます!」

リナ「うっすらと言いながらガッツリなのよ」



⑧ ラストロング「ワンカメぶっ通し60秒」


メグミ「総仕上げ。ロング一発で商店街の端から端まで。“挨拶のリレー”で繋ぎます。失敗しても止めないよー。ユウト、生ナレ」


会長(AD)「行き交う人、左右安全! よーい――アクション!」


八百屋が手を振る→和菓子屋がお餅を掲げる→パン屋が紙袋を渡す→金物屋が砥ぎ水を跳ねさせる(足元安全)→魚屋のタコ(控えめ)→屋台の湯気が横切る。

サッちゃんは笑顔で受け取り、リナは小さく会釈で橋渡し。

行き過ぎざま、サッちゃんが子どもの靴紐を微ゼロで結び、リナがサングラスのメグミに視線を送る。

メグミ「キュピーン! ――はい、フィニッシュ!」


ユウト(生ナレ)「押さず、待って、笑って、また来よう。地元が一番、お腹が笑う。」


会長「カットォォォ!」


エピローグ:上映とオマケ


夕方、アーケードの端に即席スクリーンが設置された。

メグミがスマホ一本で編集した60秒が流れる。テロップは控えめ、音はやわらか、笑顔多め。


八百屋「うちのトマト、艶がスターだ」

和菓子屋「**22.5°**なんて言葉、うちの家訓にしようかねぇ」

魚屋「タコの出演料、イワシでいいか?」

パン屋「粉、掃除、楽しみのうち!」


会長、鼻をすすりながら拍手。「地上波っぽい……地上波より好きだ……!」


メグミ(サングラス上げて微笑)「ワンカットOK」


ユウト「地上波って何?」

リナ「五十点」

サッちゃん「低い!!」

リナ「現場で+二十。人力で+二十。……合計九十点」

メグミ「残りの十点は“次もやれる余白”よ。はい、解散!」


会長(AD)「出演料はこちら! コロッケ券×30、端っこパン詰め合わせ、包丁研ぎ一回無料、看板犬の鼻先タッチ権!」


ユウト「また出た鼻先タッチ権……」


サッちゃんは嬉しそうに紙袋を抱え、リナはふっと目を細めてアーチを見上げる。

メグミはサングラスを人差し指で上げ、キュピーン。

KAINもABELもいない日、人だけで作った60秒が、商店街を少し明るくした。


――そして、PR動画公開初日。

アーケードの人出はいつもよりちょっとだけ増えて、

コロッケ屋の揚げ音が、ほんの少しだけ誇らしげに響いた。

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