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第2話「深夜の脱出訓練」



――午前2時。


静まり返った屋敷。虫の音が心地よい夜風に溶け、月明かりが古い廊下に静かに差し込んでいた。


そんな中、布団に包まれながらユウトは、ささやかな安眠を享受していた。


「……ん、うへへ……フカフカ布団最高……」


その瞬間。


《ガシャァァンッ!!》


部屋の窓が突如、爆裂的に開いた。


「起きてくださいご主人様ッ!! 非常脱出訓練の開始でーすっ!!」


「ぅわああああああああっ!? な、なんだぁぁっ!?」


寝ぼけ眼のままユウトは布団ごと担ぎ上げられ、サッちゃんにお姫様抱っこで連行されていく。瞬間、階段を飛び越え、庭へ直行。


「やめろぉぉぉぉおぉ!! 着地方法知らねぇだろアンタァァ!!」


「着地は愛と気合いでなんとかなります♥」


「なんとかなってねぇぇ!! 背中死ぬぅぅぅ!!」


庭に着地(衝突)した直後、サッちゃんはユウトを芝生に落とし、勝手に軍用ヘッドギアを被り始めた。


「では、本日の訓練内容を発表します!」


「……誰が頼んだ……」


「その名も! “敵襲に備えた深夜即応脱出ルート開拓訓練っ!”」


「名称長いわ!」


「さぁ、制限時間30分以内に、庭から安全ルートを通って屋敷裏の避難小屋に到達してくださいっ」


「そんな小屋あったっけ!?」


「5分前に建てました!」


「え、今!?」


「なお、ルートには【対人用罠】、【爆風圧センサー】、【高圧水流ゾーン】など、さまざまな障害がございます♪」


「もはや脱出というより拷問じゃん!?」


「なお、特別ルールとして“声を出すとスコア減点”ですからね!」


「無理ゲーだろそれぇぇぇ!」


ユウトは靴すら履かされていない。パジャマにサンダルという戦闘力0の姿で、深夜の庭に放り出された。


「こ、これは……罠ってレベルじゃねぇ……」


目の前には明らかに地雷原のように盛り上がった芝生、釣り糸のようなものが張り巡らされ、遠くからは“ゴボゴボ”という液体音まで聞こえる。


《ぴっ》


ライトON。そこに映し出されたのは、真夜中にもかかわらず煌々と輝く“レーザーセンサー地帯”。


「どこが一般家庭の庭だよこれぇぇぇ!」


《サポート開始:屋敷AI・KAIN》


「おお、KAIN助けてくれ! 今すぐこの訓練中止に──」


《申し訳ありません。メイド権限が上位のため、当AIには介入権限がございません》


「なぜだぁぁぁ!」


《なお、現在の推定生存ルート:15%。健闘を祈ります》


「生き残る気ないだろそれぇぇ!!」


サッちゃんは草陰から双眼鏡でユウトを覗き、メモ帳に謎のスコアを記録していた。


「うふふ、成長記録っと……(♥マーク大量)」


【ABEL、突入】


そのころ、敷地外では、青いスポーツカー“ABEL”が走行モードを解除し、車体を軟着陸させるように庭の隅に滑り込む。


《状況把握完了。ユウト様、搭乗を》


「ABEL!? どうしてここに!?」


《貴方の生命反応が“限界ギリギリ”でしたので。安全確保のため、強制介入を実行しました》


「助かったぁ……車が話しかけてくれるってだけで癒やされる……」


ユウトは運転席のドアが自動で開いたのを見て、思わず飛び込んだ。


「……あったかい……車内ってこんなに平和だったっけ……」


《温度26度、湿度40%、アロマ:ラベンダー抽出》


「最高すぎる……もうここに住むわ……」


そこへ、


「ちょっとユウト様ー? 隠れてもムダですよ〜♥」


サッちゃんがエンジンノイズを感知してやって来た。


「来たァァァァ!!」


《逃走ルート確保》


ABELは音もなく発進、庭の端に設置された“明らかに違法”なランプ付きスロープを駆け上がり──空を飛んだ。


「おいィィィィ!? なんで車が飛ぶんだよおおお!!」


《緊急時のため、飛行モード解禁》


「ありがとうABEL、でも空から見える地獄もいやだぁぁぁ!!」




──屋敷の外、柵の陰から双眼鏡をのぞく少女。


「……なにあれ。……罠?いや訓練?……いくら広い屋敷だからってはしゃぎすぎじゃないの……」


それは、生徒会長・メグミだった。


寝間着にカーディガンを羽織り、目をこすりながらも真剣なまなざし。


「朝比奈くん、まさか……闇堕ちとかしてないわよね……?」


──そして遥か上空、ビルの屋上。


「ふん、動きが鈍いな。あれが“黒百合”の末裔か」


紫のチャイナ風メイド服をまとった女性──椎名リナ。


彼女はモニター越しにサッちゃんを観察していた。


「なら、試してみる価値はあるわね……」




最終的に、屋敷裏手に着地(衝突)したユウトとABEL。


「うっ……なんとか……」


ABEL「お見事です、ご主人様。なお、衝撃耐性による安全性評価:Bプラスです」


KAIN《なお、訓練評価:Dマイナス》


「うるせぇぇぇぇぇ!!!」


サッちゃん「はいっ♥ 今夜の訓練は大成功ですっ♪」


ユウト「どこがだよおおおおお!!!」


──そして夜が明ける。


サッちゃん「次回は“高層ビルからの滑空訓練”ですっ♥」


ユウト「絶対にイヤだあああああああ!!」


【第2話・完】



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