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冷徹と噂の旦那様が手を離してくれません!  作者: 蒼黒せい


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19話(最終話)

「結婚式をやり直したい」


 ソニアを抱擁から解放したクラレンスの第一声はそれだった。

 参列者がいない。

 誓いのキスをしない。

 指輪の交換なし。

 盛大な宴も、初夜も何一つ行わなかった結婚式。

 それをクラレンスはやり直したかった。

 ソニアも、そんな結婚式の記憶を上書きしたくて、クラレンスの希望にうなずく。


 それからもう大忙し。

 その時になって初めて、ソニアは自分が公爵夫人になるということを理解した。

 公爵家として大勢の招待客の選定から招待状の作成、披露宴の調整、ウェディングドレスの作成などなどなど。使用人たちから結婚式の準備についてあれこれ投げかけられ、ソニアはパンクしそうになった。


 さらに付け加えれば、二人はフランコス元公爵による襲撃事件から国王夫妻を守った立役者だ。それもあって、国王夫妻からさらに盛り上げようと王都でパレードをしようとか、大々的にお披露目をしようという流れまで起きている。


 ほんの数か月前まで使用人以下の扱いを受けてきたソニアが、そんな大それた内容を取り仕切るだけの知恵も経験もない。

 当然クラレンスもそれを分かっていたので、応援を呼ぶことにした。


「ソニア、これから結婚式まで私の両親を呼ぶことにした」

「は、はい!」


 ガゼボで束の間の休憩をしていたとき、クラレンスはそう切り出した。

 思えば、ソニアはまだクラレンスの両親と対面したことはなかった。

 というのも、クラレンスは仮初の結婚ということで両親に結婚した事実を伝えていなかったそうだ。

 しかし今回は本物の結婚。

 そうなれば両親を呼ばないわけにはいかないし、なら手伝ってもらったほうがいい。

 そう判断した。


 それから一月後、クラレンスの両親が到着した。まず先にクラレンスが説明をすることに。

 両親はクラレンスの突然の結婚に驚いていた。さらにクラレンスは、今回の結婚の経緯について、包み隠さず両親に話した。

 なにせ妻となるソニアは、魔法師団前団長の孫娘という肩書こそあるが、一方で罪人となったリベルト元侯爵家の血筋でもある。加えて、まともな教育も始まったばかり。


 そんな人を公爵夫人として迎えようというのだ。下手な隠しごとをしたところですぐにばれるし、だったら最初から正直に説明したほうが得策だと考えた。

 クラレンスの説明に両親は最初こそ渋ったが、ソニアの祖父が両親も世話になっていたこと。ソニアのことを王妃が気に入っていること。そしてなにより、これまで一切女性を寄せ付けてこなかったクラレンスが、ずっと想い続けていた女性だということ。それらの点から認めることにした。


 その後、ソニアと二人は対面。

 義両親との対面にソニアはものすごく緊張していたものの、先にソニアの境遇の説明を受けていた二人は穏やかに対応した。


 義母はソニアの謙虚で控えめな性格、それでいて息子を上回る魔法の才能を持つことに好印象を抱く。

 高い魔法の才能を持つ者は傲慢になりやすいが、それが見られないソニアの気質を気に入った。

 そしてソニアは義母から結婚式までの間、様々な準備を手伝いつつ、公爵夫人としての心構えを習っていく。


 義母の協力もあって、準備は順調に進んだ。

 そして最初の結婚式をした日から1年後となる今日、、ソニアとクラレンスは2度目の結婚式に執り行れる。


 屋敷の侍女たち総動員で行われたソニアの準備は熾烈を極めた。

 公爵家の威容を知らしめんとソニアを徹底的に磨き上げていく。

 針子たちと何か月も議論と調整を重ね、贅の限りを尽くしたウェディングドレスは最高級の絹がふんだんに使われている。床を引きずる裾であるロングトレーンは、ソニアの身長の2倍ほどだ。

 当然ドレスもそれに合わせて重くなるため、現場ではアテンドが付く。

 もはや着せることすら困難を極めるそれを、侍女一丸となってソニアに纏わせた。

 そして仕上げとなる化粧を施し、すべての準備は完了。


「奥様、できましたよ」


 マリーの声にソニアはそっと目を開けた。


「………」


 鏡の中に映る自分の姿に、ソニアは驚くしかなかった。

 1年前のソニアは、栄養不足で体はやせ細り、髪も艶やコシが無くぼさぼさ。用意された既製品のウェディングドレスはサイズが合わず、手直しされたものを着た。

 それが今やどうだ。身長こそほとんど変化ないものの、女性らしいふくらみを持つまでに成長している。もうブカブカのドレスに着させられていた姿は無い。

 大空色の髪はハーフアップにまとめ、白い絹のドレスにとても映えた。

 化粧はソニアの肌の良さを生かすため、さりげないナチュラルメイクに。ソニアの少し幼げな顔つきの唇には、薄めのピンク色のルージュを。

 イヤリングにはクラレンスの瞳と同じ黒色のブラックダイヤモンドをあしらっている。


(素敵なドレスを着せてもらって……こんなにも素敵に仕上げてもらって…私は幸せだわ)


 感動に震えて動けずにいると、準備ができたことを聞きつけたクラレンスが部屋に入ってきた。


「ソニア」

「旦那様!」


 クラレンスは白いタキシードに身を包み、髪は後ろになでつけている。

 普段とは違うクラレンスの装いに、ソニアは我を忘れて見入ってしまった。

 それはクラレンスも同じで、これ以上ないほどに美しくなったソニアを前に、お互いに見つめ合い、動けなくなっている。


 そのまま互いを見つめてどれくらい経ったか。

 クラレンスの後についてきたリチャードはわざとらしく咳ばらいをした。

 それに、二人の時が動き出す。


「旦那様、そろそろ時間にございます」

「あ、ああ、そうか。ん゛ん゛…ソニア、とても似合っている。今日の君は、間違いなく最高の花嫁だ」


 ソニアを讃えるクラレンスの顔は、ソニアの美しさに照れ、ほんのり赤く染まっている。

 それはソニアも同じで、白い肌がほんのり紅潮していた。


「旦那様…そんな風に言っていただけて、本当にうれしいです。旦那様も、とても素敵です」

「ありがとう。さぁ、行こうか」

「はい」


 クラレンスの差し出した手に、ソニアは手をそっと乗せた。

 玄関まで向かうと、待機していた馬車に二人は乗り込む。

 教会の前に着くと、クラレンスの手を借りて馬車を降りた。

 アテンドの力を借りてロングトレーンを整えると、いよいよ二人は教会の中へと入っていく。


 中には大勢の参加者が既に座っており、最前列にはソニアの祖父やクラレンスの両親、国王夫妻も座っている。

 数百名が座る中を、二人はゆっくりと神父の元へと進んでいった。

 神父の前に着くと、淡々と式が進んでいく。

 そして、いよいよ誓いの言葉のときとなった。


「新郎は健やかな時も病める時も、富める時も貧しい時も、互いに愛し、敬い、支え合うことを誓いますか?」

「はい、誓います」


 クラレンスの力強い言葉に、ソニアの心は火が付いたように温かくなった。

 ついで、神父はソニアのほうを向く。


「神父は健やかな時も病める時も、富める時も貧しい時も、互いに愛し、敬い、支え合うことを誓いますか?」

「はい、誓います」


 今度はクラレンスがそれを聞いて口角を上げた。

 ソニアも、自分の発した誓いの言葉に喜びを感じている。


「では、指輪を」


 神父の差し出した箱には2つの指輪が乗っていた。

 金で出来たシンプルな結婚指輪だ。

 クラレンスの瞳の色にして、決して朽ちない金属。二人の愛は永遠であるという願いを込めて作られた指輪だ。


 まずはクラレンスが手に取り、ソニアの薬指にはめた。

 今度はソニアが指輪を手に取り、クラレンスの薬指にはめていく。

 自分の指にはまった金色の輝きに、嬉しさからソニアの瞳からは涙がにじんだ。


 そしていよいよ結婚式はクライマックスとなる。


「誓いのキスを」


 二人は向き合い、クラレンスはそっとソニアの顔を覆っているヴェールを後ろに流した。

 そして、ゆっくりと二人の顔が近づいていく。ソニアは目を閉じ、その時を待った。

 2人の唇が触れた瞬間、ソニアの頬を一滴の涙が流れる。

 2人が離れ、ソニアが目を開くと、そこには恍惚の表情を浮かべたクラレンスの顔があった。


(旦那様の顔が……素敵すぎます…!)


 それはクラレンスも同じで、キスにより緩んだ唇と、潤んだ瞳を間近に見てしまい、理性の紐が千切れかけた。


(なんて顔をしているんだ、ソニア……!ダメだ、今はこらえないと)


 そうして無事に結婚式を終え、そのまま披露宴となった。

 さすがに国王提案のパレードは、ソニアの懇願と、その願いを聞き入れたクラレンスによって却下されることに。

 その代わり、披露宴は復旧した王宮を使って盛大に行われた。


 豪勢かつ大量の料理と酒に、大勢の賓客は食べ、飲み、二人の幸せを祝った。

 国王夫妻を救った二人の英雄の結婚に、貴族の誰もが称賛の言葉を惜しまない。

 次々と届く祝いの言葉に、クラレンスはともかく、慣れないソニアはすでに疲労困憊だった。


「失礼。妻はあまりこのような場に慣れておりませんので、今日はこの辺で失礼させていただきます」


 そう言ってクラレンスはソニアを会場から連れ出した。

 2人の宿泊用にと用意されたのは、王宮でも最高級の客室だ。

 十分な広さと、高級な調度品の数々が置かれている。ベッドは広く、ダブルサイズだ。本来は国賓向けの部屋だが、今回に限り特別に使用を許可された。

 あてがわれた部屋に向かうと、待機していたフォースター公爵家の侍女たちによってソニアはドレスを脱がされ、清められ、たっぷりとマッサージを施された。

 あとはもう寝て終わり…ではないことくらいは、ソニアも知っていた。


(い、いよいよ、初夜、なのね)


 王宮の侍女ではなくフォースター家の侍女がいるのは、敬愛する主人たちの初夜の準備を、何が何でも自分たちが整えたいという強い願いによるものだ。彼女らは特別に王宮内に泊まることが許され、朝の二人のケアも行う予定である。

 ソニアの緊張は徐々に高まっていった。

 夜着は光を当てれば透けるものを着させられた。もちろん下着も付けていない。

 それがまたソニアの緊張を煽る。


(うぅ…こんなのを着なくちゃいけないなんて、はしたないと思われないかしら?)


 恥ずかしくて、両手を交差させて胸の前にを隠してしまう。

 薄暗い部屋の中、ソファーに座ってじっと待っているとクラレンスが部屋に入ってきた。


「ソニア、待たせたな」

「い、いいえ…」


 クラレンスはガウンだけを身にまとっていた。

 まだ髪が乾き切っていないのか、額に張り付いた髪がなんともなまめかしい。

 クラレンスはそっとソニアの横に腰を下ろした。

 ソファーが重みで沈み込み、ほんの少しだけ二人の距離が縮まる。

 そのちいさなことが、ソニアの鼓動を跳ね上がらせた。


「…緊張、しているよな?」

「は、はい……」


 ソニアには未経験の世界。それがこれから訪れようとしている。

 当然そういったことの教育を受けているけれど、知っているだけではどうしようもないことだ。

 そっと、クラレンスの手がソニアの手を握った。


「大丈夫だ。出来る限り優しくする」

「旦那様…」


(あぁ…旦那様に握ってもらうだけで、どうしてこんなにも安心してしまうのかしら)


 ソニアはクラレンスと手をつなぐのが大好きになっていた。

 手から伝わるクラレンスの手のひらの感触。体温。魔力。そのすべてがソニアを安心へと導く。

 緊張で激しくなっていた鼓動が、少しずつ落ち着いていった。


「ソニア……」


 自分を呼ぶ声に顔を上げると、そっと額にキスをされた。

 そのせいで落ち着きかけた鼓動が、またせわしなく動き出す。

 握られた手が離された。手が離れる感触に心細さを感じたが、それは一瞬。

 クラレンスの手は、ソニアの膝下と背中に回り、いともたやすく抱き上げられてしまった。


「だ、旦那様!?」

「レン」

「えっ?」

「私の愛称だ。…ソニアも、そう呼んでほしい」

「~~~~っ!」


 抱き上げられ、ずっと顔と顔の距離が近くなる。

 そのせいで、耳元でクラレンスの低く通る声が響き、頭が酔ったようにくらくらした。


「レン、と呼んでくれないか?」

「あぅ……はぅ……」


(み、耳元で囁かれるのは、ダメぇ…!)


 緊張と興奮で、顔がどんどん熱くなる。

 それはそれでいいかもしれない…と思ったけれど、これ以上は自分の心臓がもたないとソニアは直感した。

 恥ずかしくて、クラレンスの顔が見れない。ソニアはうつむいたまま、なけなしの勇気を振り絞った。


「…………レン、様」

「様はいらないな」

「え、えぇ?それは、さすがに、その……」


 呼び捨てだなんておこがましい。

 そう思ったのに、クラレンスは許してくれそうになかった。


「レン、だ。さぁ?」

「うぅ……れ、レン!」


 もはややけくそになったソニアは、叫ぶように言った。

 それにクラレンスは満足し、満面の笑みを浮かべている。


「よくできた。なら、褒美を与えないといけないな」

「えっ?」


 ソニアを抱き上げたままクラレンスは歩き始めた。

 その行き先がベッドだと気付いたソニアは、ついにその時が来たと身を固くする。

 それに気付いたクラレンスは、またソニアの額にキスをする。


「大丈夫だ」


 そう言ってベッドに上ると、そっと真ん中にソニアを下ろした。

 その隣に自分も寝転がり、二人はベッドに並んで寝る形になった。


「優しくする」


 そう言ってクラレンスの腕がソニアの体を抱き締める。

 これまでもたまに抱き締められていたけれど、いずれもしっかりと服を着こんだ状態だ。

 それが今や、お互いに夜着1枚同士。

 より相手の肌の感触を実感しやすく、ソニアは固く引き締まったクラレンスの筋肉の感触に、さらに興奮を高めていた。


(うわっ、うわっ…旦那様…じゃなくて、レンって、本当に筋肉がすごい)


 ソニアとて、恥ずかしいとかはしたないと思う気持ちはあれど、興味がないわけではない。

 その証拠に、彼女の手は勝手にクラレンスのガウンから見えていた鎖骨部分に伸びていた。

 それにクラレンスは気付いていたが、指摘せずに好きにさせている。


(興味があるみたいだな。……好きな女性に興味を持ってもらえることが、こんなにもうれしいとは…な)


 クラレンスにとって、女性が寄ってくるのは嫌悪以外の何物でもなかった。

 濃い化粧、鼻が曲がりそうな香水、品定めするような視線。そのどれもが煩わしい。

 しかしソニアは違う。彼女になら、自分のどこにでも興味をもってもらいたい。そう思った。

 さわさわとソニアの指が動く。それがくすぐったい。クラレンスよりもずっと細く、柔らかく、繊細なソニアの指。

 そんな指に撫でられた肌がしびれたように快感を伝える。


(…このままでは、私のほうがまずいな)


 もう少しソニアの好きにしてやりたかったが、その前にクラレンスが爆発しそうだ。

 クラレンスは抱きしめていた腕をほどき、ソニアの顎に手をかけた。

 そして持ち上げると、自分の唇とソニアの唇を触れ合わせる。


「ん……」

「!!!」


 いきなりのキスにソニアの目が見開かれる。

 それを気にせず、何度もクラレンスは愛しい人の唇をついばんだ。

 1回、2回と回数を積み重ねるごとに、ソニアの体から力が抜けていく。

 クラレンスの体を這いまわっていた指はとうに力なく、しなだれかかっているだけになってしまった。

 それに気を良くしたクラレンスは、自分の内なる獣との共闘作戦を開始したのであった……



 翌朝。


「ん………」


 ゆっくりとソニアは覚醒した。


(……なんだか、すごく温かくて、気持ちいい……)


 薄く目を開けるも、部屋が明るくなっているから朝になっていることは分かった。しかし、それ以外は焦点が定まらず、今の自分の状態がよく分からない。

 わからないけど、とにかく気持ちいい。

 布団とは違う、もっとしっかりした何かに包まれている感覚。ちょっと硬いけど、抱きしめられてるような。

 その気持ちよさに、ソニアの意識は再び沈んでいく。


 …という瞬間、額に何かが触れる感触にソニアはつい目を開けてしまった。


「ふえ……?」

「おはよう、ソニア」


 すぐ目の前にあるのはクラレンスの顔。

 拳一つ分も無い距離に顔があり、しかも朝日が逆光になってなんだか神々しい。


(あれ、なんでこんな朝から旦那様が近くに?なん……で………あ)


 だんだんと頭が目覚め始めたソニアは、今がどんな状況なのかを思いだし始めた。

 それはつまり、自分とクラレンスが昨晩何をし、そして今お互いがどんな状況なのかも思いだしたことを意味する。

 当然、ソニアは顔は一気に赤く染まり、布団に潜り込んで顔を隠そうとした。

 だが、潜り込んだ先の光景を直に見てしまい、結局また顔を出すことに。


(だ、だ、旦那様のお腹、腹筋すご……いや、それだけじゃなくて、アレ…が)


 薄暗くてはっきりとは見えなかったが、昨晩散々自分を弄んだアレを見てしまった。

 進むも引くもできないソニアに、クラレンスはこみ上げる笑いを抑えることはできない。

 くっくっくと頭上から降る笑い声に、ソニアは眉尻を下げた情けない顔を上げるしかなかった。


「わ、笑わないでください…」

「いやすまない。つい、かわいくてな」


 そう言われて、今度は照れが顔の赤みを深めていく。

 先に起きていたクラレンスは、穏やかな寝顔のソニアをじっと眺めていた。

 しばらくして、ゆっくりとソニアの瞼が持ち上がっていく。しかし、半分も開かないうちにまた閉じられてしまう。

 それについ悪戯心が刺激されてしまい、額にキスをした。

 それに気付いたソニアは、また目を開けてくれる。挨拶をすると寝ぼけまなこが見開かれ、まるで小動物のように右往左往し始めたのだ。

 それがかわいくて、おかしくて、愛らしくてたまらない。


「ソニア」


 名を呼び、じっとその顔を見つめる。


「旦那様……」

「レン」

「えっ?」

「言ったはずだ、愛称で呼んでくれと」

「………レン」

「ああ」


 恥ずかしそうに呼んでくれる、それがクラレンスにはたまらなくうれしかった。

 ソニアも、愛しい人を愛称で呼べる喜びを感じている。

 身も心も、すべてがこの人のためにあると。

 そう思っていいことが、ソニアを満たしていく。


「レン……」

「なんだい?」

「愛して、ます」

「っ!ああ、君はもう…私もだ、ソニア」


 生まれたままの姿で互いを抱き締め合う二人。

 それは、ソニアのお腹が空腹を訴えて真っ赤になる時まで続いた。


 ~終~

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