Prologue
さあ、話を始めよう。
この世界の創世の物語を、運命に翻弄されそれでも信じ続けた者たちの軌跡を。
この世界は三度誕生の朝を迎え、二度の長き夜に眠りについた。
__一度目は創世。原初の神、名はアルケゾス。その神は混沌の中から生まれこの世界を作り上げた。果てしなく広がる天空を、営みを支える大地を、すべてを包み込む母なる海を、そして輝き続ける生命を。
神は願った。作り上げたこの世界が壊れぬことを。
神は祈った。どうかこの愛おしき生命の輝きが潰えぬことを。
神は紡いだ。来る世界の深淵にあらがうために。
その神意は虚しく散り、世界は1度目の夜に包まれた。
蒼天は崩落し、大地は闇を開き血を飲み込み、海は反旗を翻す。
人々はなすすべもなくその輝きを失っていった。
しかし、夜明けは必ず来る。
神は自身の運命を彼らに託した。
彼らは運命を紡ぎ、創造の力を宿し民衆を率いた。
長く凍える夜は明け、世界は再び太陽のきらめきを瞳に映す。
__2度目は再生。彼らは民衆の希望であり、信仰となった。彼らは人々とともに再び世界を織り、安息を与えた。星々は集い新たな蒼穹が世界を覆い、大地はふたたび生命の息吹をともし、海は運命を見守る。
民衆は世界の再編に喝采をあげ、彼らを称え奉った。
後世にもその名を刻む彼らは「創造主」。
創造主は人々によって造られた神であり、創世の神意を継承し、運命を創造する者たち。
彼らは継いだ。創世神が愛したこの世界を。
彼らは感じた。生命の営みを、民衆の祈りを、世界の美しさを。
そして創造主たちは再来する深淵に抗った。
世界は2度目の夜に溺れる。
星運は途絶え天蓋は陥落し、大地はひび割れ、海は深淵の眷属となり下がった。
深淵は留まることを知らず、人々の運命をも飲み込む。
創造主たちは民を守り、深淵の理を崩落することで勝利を手に入れた。
数百年にも及ぶ戦争は甚大な被害と創造主たちを代償としてその幕を下ろす。
そして三度目の朝は______
「エピュフォニア前事録」序説より
ほら、話はここまでだ。
……続きは、だって?
それは自分の目で確かめればいいよ。ほら、世界は君の凱旋を待ち望んでいる。
__暗転