69話 来客と……来客?
その後、無事にソルメイさんとは連絡がついた。ソルメイさん曰く植物を育てる際には、育てる場所の環境が結構重要になるらしい。例えば一番オーソドックスな『薬草』でも、ファスやセカド辺りだと問題なく育つが、周りが荒野と火山のシックレイや潮風が吹くセブンメイなどでは発芽や成長しにくく、その上途中で枯れてしまったりもするそうな。なんとか収穫できるまで育っても、品質も低いとの事。逆にシックレイでは少し火属性を帯びる『微炎草』などはよく育つとの事。この辺はリアルと一緒で環境に合ったものが育ちやすいって事だな。ただ、その場所の環境に合わない植物でも、稀に適応?して全く異なる植物に変化する事もあるらしいので、チャレンジで合わない植物を育ててみるのも有りだとか。はー、農業・園芸分野も結構深いなあ。検証班とか絶対大変そうだ。
さて、となるとこのマイルームの庭では、結局何を育てたら良いんだろうか? 環境に沿ったものなら、周囲のフィールドから植物を採取してきて植えるのが一番かな? 確か、掘り出すためのスコップと掘り出した後に入れる袋系アイテムがあれば、植物を根ごと採取できてそのまま植えられるはずだ。ファスで【採取】のスキル講習を受けた時に、そう教わったはず。ただ、適応変化するのも気になるなー。『薬草』も幾つか植えてみるか? 他にも育てやすいのはあるかな?
そう思っていると、ピコンと通知がきた。どうやらソルメイさんからの追加メールみたいだ。何々? 「花や基本的な草系アイテムの種なら幾つか持っているので、実際に植える場所を見て、そこに合いそうな種をお裾分けできます。良ければいかがでしょうか」だって?! おお、それは是非ともお願いしたいな! アトオン内でのガーデニングは初だから、実際に色々聞きながらやれたら万々歳だ! ちょうどマイルームの補修もひと段落して、なんとか人を呼んでも大丈夫になってるしな。あ、という事はソルメイさんが初の招待客になるのか。よし! せっかくだから、できる限りの範囲で お・も・て・な・し しよう!
先ずは、部屋の中で寛いでいるコユキとミントに声を掛けて、今からお客さんが来るので良い子にしてるようにと言っておく。「キュン!」「ニャア!」と元気な返事をしてくれたので、こちらは大丈夫だろう。あとは石の丸テーブルにテーブルクロスよろしく、フリボで購入したチェック柄の布をかけ、お茶請けにこの前メンマさんから貰った一口サイズのジャムサンドを幾つか皿に盛りつけて卓上に置く。更に、以前フィフローの雑貨店?で購入したお洒落なティーポットとティーカップを出して、忍者の千代女さんからお裾分けして貰ったとっておきの紅茶の茶葉をティーポットへ。簡易料理セットでサッとお湯を沸かしたら、ポットに注い……いや、先に花壇を見てもらうから、お湯は水筒に入れてアイテムボックスに入れておこう。こうすれば冷めないしね。
「よし、これで準備完了だ!」
おもてなしの準備が整ったので、早速ソルメイさんに「願ってもないです! 宜しくお願いします。フレンド招待を送りますので、ポータルから転移でお越しください。」と返信。そして、初めて利用するマイルームへのフレンド招待をソルメイさんに送る。さてさて、どんな風にやって来るのかな?
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待つ事少々。ドアの前がキラキラと輝き、次の瞬間シュンッとソルメイさんが転移してきた。へぇ、マイルームへの招待ってこんな感じなんだな。おっかなびっくりしているソルメイさんにニコッと笑って挨拶する。
「お久しぶりです、ソルメイさん。そしてようこそ! マイルームへ!!」
「キュン!」
「ニャーン!」
「え? あ、う? も、もしかしてプラナさん…? ですか??」
あれ? なんでそんな疑問系なんだ? ……あっ! そういえば、ソルメイさんとは転生してから初めて会うんだった。メールとかはよく交わしていたけど、微妙に予定が合わなくて面と向かっては会ってなかったよ。
「はい。すみません、転生してからはお会いできてませんでしたね。少し前にフロストリザードマンに種族転生したんですよ。」
「ふええ、そうだったんですね。僕、プラナさんからのマイルーム招待だけでもびっくりしたんですが、実際来たら知らないアバターの人が居たので、間違って転送されちゃったかと思っちゃいました。ちゃんとプラナさんで安心しました! カッコいいアバターですね、プラナさん! それに、新しい従魔の子ですか? おっきい猫さん可愛いですね!」
ホッとして力を抜いたソルメイさん。説明不足で驚かせてしまってすみません……。
「キュン? キュンキュン!!」
おや? 何やらコユキがソルメイさんの足元に行って訴えてる? どうした?
「コユキちゃん? えっと…あ! もしかして、ウサ丸を探してるの? マイルームで【コール】って出来るのかな? うーんと、出来るみたいです! プラナさん、ウサ丸を呼んでも良いですか?」
「大丈夫ですよ。なんかコユキがすみません。」
「いえ、ウサ丸も友達が出来て嬉しそうなので大丈夫ですよ! ではいきます【コール】ウサ丸!!」
「キュイ!」
少しクリームがかった柔らかな毛皮のウサ丸が現れる。キョロキョロと辺りを見渡して状況把握をしているウサ丸。そこに飛びついて来たのはコユキだ、よほど待ち遠しかったのだろう。びっくりしているウサ丸の周りをくるくる回りながら「キュンキュン」鳴いていたかと思うと、案内するようにウサ丸をリードして、ミントの前まで連れて来た。すると3匹で
「キュン、キュンキュン!」
「キュイ? キュ!!」
「ニャァ」
と、話し始めた。様子を見るに、コユキが後輩のミントを紹介して、ウサ丸とミントで自己紹介し合っているみたいだな。いや〜可愛いやり取りで癒されるなあ。ソルメイさんの方をみると、彼もニコニコ笑って3匹の方を見ているので、一緒に癒されているみたいだ。
「ハッ?! ウサ丸達に気を取られてました! すみませんプラナさん。えっと、育てやすいお花についてですよね? マイルーム持ちという事は、植木鉢で育てる感じですか? それとも普通にレンタル畑でしょうか?」
「んえっ??! 植木鉢にレンタル畑??」
え、庭じゃなくて植木鉢とか使えるのか? あと、レンタル畑? そういえばテイマースレとかで偶に畑で従魔と一緒にいる写真が投稿されてたけど、畑って購入じゃなくてレンタルなのか。ソルメイさんの発言内容に驚きながら整理していると、自分の反応を見たソルメイさんもびっくりしていた。
「え……違うんですか? じゃあ、どこで??」
「あー、えっと、庭の花壇で育てる予定でした……(^◇^;)」
「お庭?! え、庭付きなんですか、プラナさんのマイルーム??!」
驚愕しているソルメイさんに聞くと、基本的に農業や園芸をする場合は、各町や里でレンタル畑を使うのが一般的だそうな。だから、育てる場所の環境とかの話が出てるんだな。あと、植木鉢というのはフォーレンなどの道具屋で売っているアイテムで、マイルームに設置可能なオブジェクト。小さいがお気軽に植物を育てられる上、マイルーム内は環境影響を受けにくいらしく、どの場所でも『薬草』などの基本的な植物なら問題なく育てられるとの事。はー、なるほど。そんでもって、ソルメイさん曰くマイルームを持っている人は多少存在しているが、庭付きマイルームの話は聞いたことも見たことも無いとの事……。
まあ、自分のはマイルームというよりマイハウス?だしな。そういえば、ここをフリージア様に貰った時に、この家についてお散歩スレに書き込もうとしたが、あの時は他の話題(風・火の精霊様やサンドリザードマン)でざわついてたから、書き込まなかったんだっけ。装備会議の時も他の話で盛り上がったから、結局マイルームを持ってる事は話してないし。うーむ、この事がバレるとまた騒がれるな。とりあえず、ソルメイさんには自分の種族の事やこの一軒家マイルームについては暫く秘密にして貰おう。
ソルメイさんに事情を話し、了解を得た上でみんな揃って庭に出ることにした。ちなみに庭へは、マイルームの裏戸から出られるようになっている。おや? ミントはちゃんとウサ丸と仲良くなれたみたいだな。大きなミントの背中にコユキとウサ丸が乗りながらついて来ている。仲良しで良きかな良きかな! そうして、庭に出るとまたもやソルメイさんがびっくりしながら目をキラキラさせて辺りを見渡す。
「うわぁ〜! 凄いですね、プラナさん! お庭も広いですし、外の風景もキラキラしついてとっても綺麗です!」
うんうん、そうだろうとも! 自分はもう見慣れてしまったが、このフロストリザードマンの里は、広い洞穴の中に石造りの家々が立ち並び、青白く光る苔と光を反射する水晶で幻想的に照らされているのだ。お散歩スレに載せた里の風景の写真もかなり好評で、自慢の里である! まあ、既に廃里だが……。
興奮しながら庭や外の風景をあちこち見回るソルメイさんやウサ丸が落ち着くのを待っていると、ドシドシと聞こえる足音が。おっと、フリージア様がいらっしゃったみたいだ。
「おや? 新しき訪問者かのう? 遠き同胞の血筋では無いようじゃが、プラナの友のようじゃな。訪問者よ歓迎するぞ」
「ありがとうございます、フリージア様。自分のフレンドのソルメイさんと従魔のウサ丸です。少しの間、滞在してもらっています。」
庭を覗き込むようにして現れたフリージア様は、ソルメイさん達を見て歓迎の言葉を言ってくれたよ。良かった! ソルメイさん達にもフリージア様を紹介しようかと振り向くと……
「◯%#&$△!⭐︎?!」
「キュ、キュィイ??!」
今までの比ではないほどに驚いて、慌てふためいている二人(一人と一匹)が。あー、今日は驚かせっぱなしになってしまったな。すみません、ソルメイさん。
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あのあと、なんとか落ち着いたソルメイさんやフリージア様と一緒に花壇に何を植えるか話し合った結果、洞窟の外の近くに咲いているという『アイスエーデルワイス』や『氷雪ヒマワリ』を後ほど採取して植えることに。『アイスエーデルワイス』は前に採取した事があるが、雪山にヒマワリなんてあったのか??! え、今まで見たことない。聞いたところ、ヒマワリだけど結構背丈は低いみたいなので見落としていたらしい……。それから適応変化狙いでソルメイさんから貰った『薬草』の種と『ピュアチューリップ』の球根を植えることにしたよ。
植えるものが決まった所でフリージア様が里の見回りに行ったので、自分達は部屋の内に戻ってジャムサンドと紅茶をつまみながら雑談タイムに入った。(ちゃんとコユキ達にもそれぞれオヤツを出しているぞ!)植物を育てるにあたり、スキル無しでもまあまあ育つらしいが、スキルがあった方が育てやすいとの事なので後で【農業】スキルは取得しようかな。【園芸】もスキル講習チケットの入手方法を教えて貰ったので取る予定。生産スキルもどんどん充実してくるな!
あとは、秋イベについて。ソルメイさんは、闘技大会をミルミルキーさんと組んで従魔達と一緒にパーティ部門に出るらしい。芸術コンテストも【園芸】スキルで育てた秋の花の花冠を既にエントリー済みとの事。頑張れ、ソルメイさん達!! また、ソルメイさんはセカドでレンタル畑を持っており、そこで【園芸】スキルレベル上げ用に色んな花を育てたり、【調薬】の材料として様々な薬草類を育てているらしい。しかも、従魔のハナ子が持つ木属性のスキルに植物の成長を助ける効果のあるものが有るらしく、結構高品質なものが育てられているらしいよ? 凄いなあ。あと、こちらの庭で育てる予定の『薬草』と『ピュアチューリップ』について、もし変化が起こったら結果を教えてほしいと言われたので快諾した。色々教えてもらったから、もちろん情報は共有するとも!
そんなこんなで心ゆくまで話し合った後、楽しいお家訪問会は終わり、ソルメイさんは帰って行った。本当は里内も案内してみたかったんだが、マイルーム招待だと、その里に一度も来た事が無い人はマイルームから出られないから仕方ない。さてと、自分も今日のレベル上げに行きますか。そう思って、コユキとミントに声をかけてマイルームを出る。里の入り口に向かって歩いて行くと、おや? なんだが声がする。フリージア様にしては、ちょっと高い声な気が……。それに、よく聞くともう一つ低い声も聞こえる……??
「うっわぁああ! きれーい! 凄い凄いよモブ田さん!! スレの写真で見た通りだよ! すっごいファンタジー!」
「そうですね、素晴らしい景色です。ああ、そういえばこの里内は外よりは寒くないようです。寒さ対策のアクセサリーだけで充分な様ですので、こちらの上着は脱いでも大丈夫なようですよ、スカーレットさん。」
「え?! それ、本当? って、もう脱いでるし! モブ田さんはいつも行動早いね?! よっし、それじゃあ私もこの毛皮コートは脱いでっと。うーん、久々の開放感!! さてと、ここは「フロストリザードマンの里」って言うんだね。ここに、憧れの山の人はいらっしゃるかなぁ? ねえねえ、どう思うモブ田さん!」
「ふむ。どうかと言われたら、もういらっしゃいますね。あちらにいる方がそうでは?」
「えっ??!」
こちらを向いて驚愕している、ピンク髪に赤色を基調としたまるでアイドルかアニメの魔法少女のみたいな格好をした女性アバターの人と、落ち着いた様子の黒いスーツにぴっちりした七三分けの黒髪と四角い眼鏡のサ、サラリーマン??みたいな感じの男性アバターの人が入り口に居た。え、あれってプレイヤーか? マジで?! リトル・ポータルの設置って秋イベ後だよな? まさか、あの長い長い距離をやって来たのか?
お互い驚いて固まっていたが、女性アバターの人がいち早く硬直から回復したらしい。ダッシュで駆け寄ってくると、キラキラした目で話しかけてきた。
「あ、あの! 山の人さんでしょうか?!私、お散歩スレ民の「マジカル⭐︎スカーレット」って言います! 山の人が投稿された写真に憧れてやって来ました! ファンです!!」
「え、えっと、写真を褒めていただきありがとうございます。はい、スレでは山の人と呼ばれています。宜しくお願いします……」
「わぁあ! うわぁ! 本当に山の人だぁ!! 凄い凄い!」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら感激している「マジカル⭐︎スカーレット」?さん。自分のファン? えぇ? しかも、憧れだけであの距離を渡って来たのか。リトル・ポータルが無い現状では、気軽に町と行き来出来なかったろうに、凄いなこの人。驚いていると、静かに近づいて来た男性アバターの人からも声をかけられた。
「連れが騒がしくしてしまい、申し訳ございません。私は「モブ田モブ男」と申します。宜しくお願い致します。」
そう言って差し出して来たのは……名刺?! このファンタジー世界でマジでサラリーマンロールしてるぅ??! しかもよく見たら、背中にデカい盾を背負ってる? え、この人見た目は細身の文系リーマンみたいなのにタンクしてるのか? 一緒にいる人は魔法少女だし、ギャップがすごいな。とりあえず、名刺を受け取り自己紹介し会うことに。うーん、自分も社会人だから名刺交換は慣れてるけど、このファンタジー世界でやると、凄い違和感だwww。
プレイヤー同士の自己紹介後は、自分の後ろで恐々見守っていたコユキとミントも紹介したし、途中でやって来たフリージア様とも面会した。フリージア様については掲示板に書き込んでいなかったからか、ソルメイさんと同じく二人ともかなりびっくりしていたぞ! ちなみに、その際にモブ田さんの従魔のデカい馬「豪天号」と濃いピンク色の何故かボンキュッボンな体形?のマンドレイク「プリティナイスバディ」ちゃんとも会ったんだが、モブ田さんの名前センスェ……。
とりあえず、自分の事やフリージア様の事は、まだ掲示板などで大っぴらに書かないで欲しいことを二人にお願いすると、サクッと了承してもらえた。見た目はギャグっぽいけど、二人とも誠実な人柄で良かったよ。あ、なし崩しだけどフレンド登録もしてあるぞ! その後、大興奮のスカーレットさんと、クールに見えて結構ワクワクしてそうなモブ田さん達は、フリージア様と一緒に里内の探索に行ったので、自分達は予定通り外にレベル上げに行く事にした。
まさか、もうこの里に自力でプレイヤーが来るなんてなぁ。今日はソルメイさんを出迎えたり、里に新たにやってきた二人と遭遇したり。色々驚く事が会ったな。秋イベまでもう少しだし、これからもまだまだ何かありそうだ。うん、楽しみにしていよう! さあ、それじゃあ闘技大会に向けて頑張っていこうか! いくぞ、コユキ、ミント!!
・マジカル⭐︎スカーレット
お散歩スレ民で、種族はエルフ。魔法少女好きで、アバターを魔法少女みたいな感じにしている。いろんなものに憧れ安く、夏イベ後くらいに山の人に憧れて、山を目指して町を飛び出した! 51話の掲示板回の有名人を語るスレ8の379が言っていたフレがこの人。複数の魔法スキルを持つ魔法使い系プレイヤー。しかし、魔法職のソロでの山への道のりは、かなり厳しかった。遮蔽物のあるジャングルはともかく、周りに何も無い荒れ地フィールドが鬼門だった。散々な目に合っていた所でモブ田モブ男に出会い、一緒に山を目指すことに。
・モブ田モブ男
お散歩スレ民で、種族はヒューマン。見た目は、黒髪黒目で眼鏡にビジネススーツのザ・サラリーマンみたいな男性アバター。一応大盾使い。荒れ地フィールドで、苦戦していたスカーレット⭐︎ハートさんを見て、面白そうだからと一緒に旅する事に。実は【演奏】スキル持ち。従魔は馬 (ハイパワーワイルドホース)の豪天号とマンドレイク(魔ビーツドレイク)のプリティナイスバディちゃん。ちなみにプレイヤー名を決める時「モブ山モブ男」と「モブ田モブ男」のどちらにするか30分ほど悩んだ。




