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2.昔と今の話

ただの説明回


 教科書に載るくらい昔の話、およそ少年-高井(たかい)裕田(ゆうた)の高祖父ぐらいの代に、この町の高校生が一斉に異世界転生する事件が起きた。

 そして、異世界で数多の困難、苦難を乗り越えてまた日本に戻ってきたのだという。異世界で得た異能と、深い仲となった異世界人を伴って、


 帰ってきた当時は、異世界人の人権をどうするやら、異能者をどう扱うやらで、世界規模で大分揉めたらしいのだが、それも今となってはただの歴史上の物語。

 結局、異能者はちょっと不思議な力が使える人間として、異世界人は世界を巡り、好きなところの国籍を手にすることで落ち着いた。


 ただ、異能者も異世界人も、多くはこの町にとどまり、そのまま一生を暮らした。

 なぜ、彼らが外へ出ていかなかったのか、それは未だに不明のままだが、ある専門家の話では、異能者は無理やり異世界に転移させられた反動から、地元への愛着がより強まった結果なのでは、異世界人はその恋人だったのだから結果的にこの町に留まったのだろうと解説していた。


 やがて、彼らが子供を産むようになると、ある事実が判明した。

 それは、親が異能者/異世界人ならば、子供も異能を扱える/異世界人の特徴を引き継ぐということだった。しかも、父母いずれか片方があてはまれば遺伝するのだった。この町の人口は決し多くはない、それ故に、裕太の代にもなれば、血縁に異能者/異世界人がいることがほとんどになっていた。



 つまり、この町の人々は異能を扱える/異世界人の特徴を持つという、世界的にも珍しい町になっていた。



 それ故に、毎年多くの観光客がこの町を訪れる。名物や名産品ではなく、町の人々を見るために。

 特に、今少年たちがいる神社、帋草神社(かみくさじんじゃ)は通称、猫神神社と呼ばれており、観光の定番コースとなっていた。

 理由はもちろん、今少年の目の前位にいる少女2人、帋草(かみくさ)佳奈(かな)結良(ゆら)の猫耳姉妹が巫女を務めているからだった。

 現に、境内には裕太と佳奈、結良以外にも参拝客が何人かいたが皆、物珍しそうに少年たちを遠巻きに眺めていた。


 そんなある種不躾な視線はいつもの事なので、特に意識することなく、少年たちは近寄っていつものように言葉を交わす。

「しかし、毎朝大変じゃないか?早起きして境内を掃除するのは」

「ぜんぜん大変じゃないよー結良ちゃんも手伝ってくれるし、ゆーくんもこうして迎えに来てくれるんだから」

「大変だと思うなら、ゆうも早起きして手伝えばいい、ほら、これ持って」

「・・・毎度のことながら姉妹で俺に対する温度差が違いすぎやしませんかね」

「「そう(かなー)?」」

「そこで揃うあたりは姉妹な気も」

「「ゆーくん(ゆう)のことは普通にやさしい(変態)って思ってるよ」」

「やっぱ、全然違うな!?」

 少し心に傷を負いながら、渋々、結良から押し付けられたごみ袋を片付ける。

 集積場は境内の片隅にあり、何だかんだ少年が持っていくのが恒例となっていた。

「ありがとうねー、ゆーくん。結良ちゃんも、ほらお礼言って」

「うん、次は床掃除お願い」

「おい佳奈、お前の妹がお礼の概念失ってるぞ」

「またそうやってイジワルいってー、だめだよーゆーくん困らせたら」

「別に意地悪なんて言ってない、寧ろお礼として相応しい」

「おう、どこがどうなったら床掃除がお礼になるのか詳しく聞かせてもらおうか」

「だって、ゆうはM」

「誰がMかっ!」

「ゆーくん、エムってな――」

「聞くな!」

 少年少女たちがそんな他愛もないやり取りをしていると、


 カシャッ


 乾いたシャッター音が境内に響いた。


 3人が会話を止め、音の響いた方に振り替えると、カメラを持った青年が慌てて階段を下っていこうとしていた。

「むーーまた勝手にとってー」

「まぁ、一定数いるよな、こういう輩は」

「死刑」

「判決が極端すぎます、裁判長」

 いくら書類上は、普通の日本人と変わらないといっても、珍しい猫耳の巫女ともなれば、こういう輩は定期的に表れる。

 だから、姉妹二人とも憤慨しつつ、表情には半ば諦めの色が浮かんでいた。

 裕太は苦虫を嚙み潰したような顔を一瞬した後、気分を紛らわせるために、少し明るいトーンと笑顔を張り付けた。

「まぁまぁ、結局、あんな奴らの事気にしててもしょうがないだろ、もうそろそろ時間だし。二人とも着替えてきたらどうだ?親父さんには俺から連絡しておくからさ」

「うーん、ゆーくんがいうなら、わかった。行こ、結良ちゃん」

「了解、佳奈。それとゆう」

「何だ」

「覗きは5秒までセーフだから」

「まず覗く前提の基準設定やめようか、結良さん」

「そうだよー、ゆーくんなら10秒くらいまでならいいんじゃないかなー」

「佳奈さんも俺が覗き魔とお思いで!?」

「えへへ、冗談だよー、それじゃ着替えてくるねー」

「ん、ここで待ってて」

 覗き魔認識(犯罪者扱い)に打ちひしがれている少年を放置して、姉妹社務所に消えていった。

 社務所の扉が完全に閉じていることを確認すると、少年はポケットの端末を取り出し、時刻を確認する。

 時刻は7:50。ここから姉妹が着替えるまでに最低でも10分はかかるだろう。

「うん、間に合うな」

 頭の中で計算し、独り言ちる。

 さっと2度膝についた砂を払うと、少年は――


 一瞬でその場から姿を消した。

早く、早くヒロインの説明をしたい、、

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