第九十八話
先にプールに来た俺は空いていたデッキチェアに座って三人を待つことにした。
三人ともこの旅行のために新しい水着を買ったらしくどんな水着なのか楽しみだ。
想像してしまうと表情が緩んでしまいそうなので考えないようにする。
すると知らない女性二人組が話しかけてきた。
「すみません。一人ですか?よかったら一緒に泳ぎませんか?」
まさかの逆ナン?だった。
「いや、ごめんね。ツレを待ってるから。」
「じゃあお兄さんの友達も一緒でいいから遊ぼうよ。いいでしょ?沖縄の思い出作り手伝ってよー。」
「お兄さんって芸能人とかですか?絶対そうですよね?」
二人組は俺たちと同じ大学生っぽく見えて二人で話しかけてくるので圧が凄い。
明らかに逆ナン慣れしていて面倒だ。
「違うよ。一般人だから。」
「えー?じゃあモデルとかやってません?」
「友達来るまででもいいから遊ぼうよ。あっ、連絡先交換して後からでもいいんだけどどうかな?」
これだけ押しが強いと気の弱い男なら断れないのかもしれない。
「悪いけど…」
「優也お待たせ。遅くなってごめんね。」
近付いてきた鈴音はそのまま俺と女性の間に割り込むように体を滑り込ませてきた。
どうやら状況は理解しているようだ。
すぐに彩乃と伊佐も俺の隣にやってきた。
「優也くん、どうかしたの?」
「優也さん、女の子にふらふら付いていったらダメですよー。」
「付いていってないだろーが。ちょっと話してただけだ。」
逆ナンしてきた二人組を見ると三女神の登場で離れて行くかと思ったがまだ目の前にいてぼーっとしている。
「ごめん。ツレが来たからもう行くね。」
二人組は、はっ!と我に返って慌てている。
「あの、やっぱり芸能人じゃないんですか?お兄さんもだけどお連れさんの三人も美人すぎです。」
「美男美女で一対三、ドラマじゃないとありえない状況。」
「ホントに友達と旅行してるだけだから。じゃあ失礼するね。」
これ以上話すこともないだろうし二人組から離れることにした。
少し歩いて二人組と離れたことを確認すると改めて三人に目を向ける。
鈴音は真っ赤なビキニでこれでもかと自分のプロポーションの良さを見せつけている。
布面積が少ないわけではないのでそれほど選ろさは感じないが男の視線を釘付けにするのは間違いない。
goodjob!
彩乃は白と水色を基調にしたセパレートタイプの水着で上には黄色いラッシュガードを羽織り下にはパレオを付けている。
銀髪で白い肌というのもあって露出は少ないが男の目を引くのは当然だろう。
goodjob!!
伊佐は黒いフロントクロスの水着で背中が大きく空いていて布面積も少なめだ。
大胆な水着だがその体型とテンションで色気よりも健康美を見せつけている。
goodjob!!!
こんな三人と泳ぐとなると周りの男どもの嫉妬の視線が降り注ぐことは間違いないだろう。
だからといって離れていたらそこらの男が声をかけてきそうなのでなるべく四人で行動したほうがよさそうだ。
しばらく四人で遊んでいたが旅行初日で移動時間も長かったので早めに上がって食事をすることにした。
当たり前の話なのだがプールの入口近くに更衣室があったのでそもそも部屋で着替える必要もなかった。
そこに脱水機があったので水着は脱水して部屋に干すことにした。
1度部屋に戻った俺たちはどのレストランにするか相談する。
「どれにする?」
「あんたは焼肉が食べたい?」
「いや、腹は減ったけど初日から焼肉はいいかな。」
「アタシは焼肉か中華がいいです。パスタじゃ物足りないです。」
「彩乃も中華かな。イタリアンは家で作れるけど本格的な中華はなかなか作れないから食べてみたい。」
「お前はどうなんだ?イタリアンか?」
鈴音に聞いてみるとゆっくり首を横に振る。
「どれでもよかったんだけどみんなの意見を考えると中華でしょ。一応、沖縄らしく少しは沖縄料理もあるみたいだしね。」
「でも沖縄料理は明日からの食事で行くんじゃないか?」
「それもそうね。じゃあ行きましょ。」
部屋にあったパンフレットを見ると中華とイタリアンのレストランは地下にあり、焼肉は敷地内の別館にあるらしい。
四人で部屋を出てエレベーターに乗り地下に向かう。
中華の店の前に来たがそれほど混雑はしていない。
先にプールで遊んだので晩ご飯には少し遅い時間になったからだろう。
中に入るとすぐに四人用のテーブル席に案内された。
さっそくメニューを見てみると高級食材を使った高額な料理から庶民的でリーズナブルな料理まで多種多様な品揃えだった。
俺の舌に高級料理は合わないと思うのでリーズナブルな普段からよく見る料理を注文した。
三人も同じように定番な料理を頼んだが折角だから普段頼まないような料理を一つ頼んでみることにした。
「北京ダックなんてどうだ?」
「私はフカヒレが食べてみたいかな。北京ダックって食べるの皮の部分だけなんでしょ?微妙じゃない?」
「彩乃はツバメの巣を食べたことないけどあるのかな?」
「メニューを見る限りなさそうですね。アタシはスッポンが気になったけどやっぱり食べたいとは思いませんね。フカヒレに一票入れます。」
「彩乃もフカヒレかな。」
「三人もとフカヒレなんだな。じゃあ頼んでみるか。」
「なんなら北京ダックも頼んでいいわよ。」
「いや、高級料理は一つで十分だろ。フカヒレの姿煮にしようぜ。」
ウエイターさんを呼んで注文した。
先に頼んでた料理を食べたがどれも旨かった。
上品な味付けで個人的には町中華のコテコテで味の濃いほうが好きだが女性陣には好評だった。
後半にフカヒレが出てきたが初めて食べたので他の店の味と比べることは出来ない。
独特な食感で正直なところ旨いとも不味いとも言えない味だったが女性陣には好調だった。
食事が終わり部屋に戻ると女性陣はすぐに風呂に行くとの事だった。
同時に風呂に行っても俺が先に出てしまうので三人を見送ってから軽く筋トレで時間を使ってから入りに行くことにした。




