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第九十一話

洗い物が終わった鈴音が俺のビールと自分のカクテルを持ってリビングにやってきた。


「おまたせ。」


「お疲れさん。いつも旨い料理ありがとな。」


「いいわよ。やりたくてやってるだけだしね。そういえば明日の一コマ目の講義、休講って知ってる?」


「え?そうだっけ?」


「金曜日に掲示板に出てたわよ。たまには掲示板見なさいよね。テストの事とかも掲示されてるのよ。」


「あー、あんまりあっちのほうに行くことないからな。まあなんか重要な事があったら教えてくれよ。」


「まったく、たまには自分で見なさいよね。私が受けてない講義の事だとあんまり覚えてないわよ。まあ、あんたが受けてる講義はわかってるから一応見といてあげるけど。」


鈴音は呆れながらも了承してくれた。

しかし俺が受けてる講義を把握してある鈴音には若干恐怖を感じなくもないが。


「朝、大学行かなくていいし今日はゆっくり飲むわよ。たまにはいいでしょ?」


「それはいいけど里佳たちの事はだいたい話したからな。他に報告することはないぞ。」


「うん。それはもう聞いたから大丈夫よ。て言うかあんたと私の仲なんだからとことん飲むのに理由なんかいらないでしょ?」


「そりゃそうだな。」


「最近のあんたの周りは騒がしいから飲みに行ったりもしてないしね。」


「週末にここに来るだけになってるからな。」


「もっと付き合いなさいよね。私だって話したい事もあるのよ。」


「ん?なんか話したい事があるのか?」


鈴音の表情を見るとなにか言いたい事があるように見える。

付き合いが長いと微妙な表情の違いにも気付くようになっている。


「話したいって言うか相談なのかなぁ。」


鈴音にしては歯切れの悪い態度だ。

内心はともかく、いつも自分が正しいと思ってるような自信満々なのが鈴音らしいと俺は思っている。


「お前が相談とか珍しいな。」


「相談って言っていいのかわかんないけど旅行の事なの。」


「あー、旅行か。お前ら三人で話してるんだろ?それぞれで決めてんのか?同じ場所に旅行とか嫌だぞ。」


「それなんだけど……」


「お前らしくないな。はっきり言えよ。」


「そうよね。あのさ、………四人で一緒に旅行ってどう思う?」


「四人ってマジか?」


夏休みに三回も旅行に行くよりは現実的だがまさかホントに里佳の予想が当たるとは思ってなかった。


「彩乃と伊佐もそうしようって言ってんのか?」


「ええ、日にちと場所が被らないように別々に予定を立てるのも大変なのよ。それにあんたの都合も考えたらなかなか決まりそうになくてさ。」


「それはそうだろうな。でもお前らはそれでいいのか?」


「あの二人と連絡先交換して色々話したんだけどさ、けっこう仲良くなって一緒に旅行するのもいいかもって話になったのよ。」


「三人でって事だろ?俺は関係なくないか?」


「旅行なんてそんなしょっちゅう行かないでしょ?」


「そりゃそうだろ。」


「それならあんたとの旅行を一緒にどうかって話になったのよ。もちろんあんたが嫌ならダメだけどさ。」


「うーん、嫌ってことはないけどなぁ………」


「それではっきりしときたいんだけどあんたは四人で旅行ってアリ?ナシ?あんたがナシなら止めとくわ。」


「実は昨日、里佳がそうなるんじゃないかって予想してたんだよ。」


「え?そうなの?里佳も鋭いわね。」


「言われて俺もありえると思ったんだよ。夏休みに三回旅行に行くよりは現実的だしな。」


「じゃあアリって事でいい?いいならその方向で話進めたいんだけど。」


「……ああ、いいよ。」


俺は迷ったが一応OKにした。

旅行中はそうとう大変そうだがそれぞれと旅行に行って後から色々聞かれるより一緒に行くほうが楽な気もする。

しかし三人は女神と言われるほどに整った容姿をしている。

その三人と今の俺みたいな隠キャの男一人が旅行をするのはトラブルの元になりかねない。

対策を考えたほうがよさそうだ。


「日にちはどう?行けない日とかある?」


「……いや、この夏休みはあんまりバイト入れないつもりだから早めに決めてくれたらいつでもいいよ。」


「わかったわ。何泊かしても大丈夫?」


「いいけど一週間とかは長すぎるぞ。」


「そこまで長くはしないわよ。本格的に三人で相談してみるわね。」


「一応言っとくけど海外は止めてくれよ。」


「それは考えもないわよ。前にあんたの言ってた要望も満たせるようにするから任せて。なんか楽しくなってきたわ。さあ飲むわよ。」


鈴音はさっきまでと違ってすっきりした表情になっている。

急にテンションも上がったみたいで飲む気満々のようだ。



それからは鈴音とたわいもない話をしながら飲んでると夜中の二時半になっていた。


「お、もうこんな時間だな。そろそろ帰らないとな。」


「泊まっていけばいいじゃない?」


「そんなわけにはいかないだろ?」


「なんでよ?前も泊まったんだしいいじゃん。」


「そんな泊まるのが当たり前みたいに言うなよ。とにかく今日は帰るからな。」


「わかったわ。気を付けて帰りなさいよ。」


「おう、じゃあな。旅行の事、また連絡してくれ。」


「ええ、彩乃さんと伊佐ちゃんからも連絡あるかもしれないからね。」


「了解。じゃあおやすみ。」


「おやすみ。またね。」


手をふる鈴音に見送られながらエレベーターに乗り込む。

四人での旅行、俺の心の中ではどんなことが起こるのか不安な気持ちと、親しくなった女の子たちとの旅行はどれほど楽しいのかという二つの気持ちが渦巻いていた。

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