第八十八話
次のアトラクションに乗るときから里佳はさっき話したとおり早苗ちゃんをサポートするような行動をし始めた。
二人で乗るアトラクションでは俺と早苗ちゃんを二人で座らせ自分は後ろに座る。
三人並んで遊べるアトラクションのときは俺の左右に座るが必要以上に俺に引っ付いてくることはなかった。
鈴音と話したときに二人とも付き合うつもりはないとはっきりさせると話したが里佳はこれで友達だとはっきりさせたことになるだろう。
「優也さん、どうしたんですか?考え事?」
「いや、なんでもないよ。」
「あっ、あそこにゲームコーナーがありますね。せっかくだし三人でプリクラ撮りませんか?」
「いいよ。」
「二人で撮ったら?私はいいわよ。」
「えっ、お姉ちゃんどうしたの?」
「どうもしないけど二人で撮ったらどうかと思っただけよ。」
俺は思わず里佳の手を取って早苗ちゃんから離れて小声で話す。
「おい、いくらなんでもそこまで露骨に二人にさせようとするなよ。不自然すぎる。」
「でもサポートするって決めたから。」
「あんまり露骨だと早苗ちゃんもいぶかしむぞ。普通ししとけよ。」
「……それもそうね。」
早苗ちゃんが近付いてくる。
「どうしたんですか?」
「いや、なんでもないよ。早くプリクラのとこに行こう。」
再び歩きだしゲームコーナーに向かう。
ゲームコーナーにあるゲームはどこにでもあるゲーセンとほとんど変わらないのでプリクラを撮るだけだ。
「これでいい?」
「俺はよくわからないからいいよ。」
「わたしもあんまり撮ったことなくてわかんないからお姉ちゃんに任せるよ。」
いくつか機種があるみたいだが里佳の選んだ機種の中に入る。
俺は操作も分からないので撮るまでじっとしていた。
「撮影始まるわよ。何回か撮るから気を抜かないでね。」
里佳の言う通り撮影しながら機種からのアナウンスがあっていろんなポーズを指定される。
恋人ではないから指定されたポーズはほとんどやらなかったが。
撮影が終わり姉妹二人でなにやら操作しているが俺にはわからないので任せることにした。
操作が終わりしばらく待っていると出来上がったシールが出てきた。
出来たシールを見てみるとびっくりするぐらいに加工された三人の顔が写っていた。
「いや、誰だよ。加工しすぎだろ、これ。」
「今時のプリってこんなもんよ。」
「前に撮ったときはそうでもなかったような気がするんだけどな。」
「加工が少ないほうが滅多にないわよ。」
「そうだったんだな。」
「でも加工してるほうが面白いですよ。普通の写真はスマホで撮れるからプリクラは加工するんじゃないですかね。まあお姉ちゃんとわたしがほとんど同じ顔になってて髪型と服装でしか判別出来ないですけど。」
「あー、たしかに写真はスマホでいつでも撮れるからそうかもしれないね。」
プリクラを撮り終わりまたアトラクションで遊んでいると夕方になっていた。
この遊園地はパレードとかがあるわけでもなく閉園時間も早いのでもうあんまり時間もなくなっていた。
「もうすぐ閉園だけどどうする?」
「わたし最後に観覧車に乗りたいです。」
「私は下で待ってるから二人で乗ってきなさいよ。」
「またそんなこと言うのか?」
「違うわよ。さっき早苗と話してそうすることにしたのよ。やっぱり観覧車は二人で乗るもんでしょ。」
いつの間にか二人でそんな話をしていたらしい。
俺としても早苗ちゃんとは話さないといけないと思っていたのでちょうどいいと言えばちょうどよかった。
「じゃあ早苗ちゃん二人で乗ろうか?」
「はい。お願いします。」
「私はそこのベンチに座っとくわね。」
里佳が近くのベンチに向かっていき俺と早苗ちゃんは観覧車待ちの列に並ぶ。
ほどなく順番が回ってきて二人で観覧車に乗り込む。
最初は無言だったがある程度の高さまで登ったところで早苗ちゃんが口を開いた。
「優也さん、今日はありがとうございました。お姉ちゃんと一緒に遊ぶっていう我が儘を聞いてもらって。」
「いや、俺も楽しかったし大丈夫だよ。なんで三人でなのかって疑問はあるけど。」
「確かめたかったんです。お姉ちゃんも優也さんが好きなのかどうかを。」
「……早苗ちゃん……」
「それを知りたくて三人で遊びたかったんです。」
「…それでなにかわかったの?」
「わたしが優也さんに言っていいのかわからないですけど優也さんのことを意識してるのは間違いないと思いました。たださっきお姉ちゃんに言われたんです。好きなら誰かに遠慮なんかするなって。お姉ちゃんは姉妹で奪い合いなんてしたくないから優也さんのことは友達とさしてしか見ないって言ってました。」
「俺もさっき里佳と話したよ。これからも友達だってね。」
「そうだったんですね。優也さん、改めて聞いてもらえますか?」
「うん。」
早苗ちゃんは緊張した表情で下を向いている。
俺は黙って早苗ちゃんの言葉を待つ。
しばらくして顔を上げた早苗ちゃんが話し出した。
「優也さん、バイトで助けてもらったりして最初は頼りになる先輩だと思ってました。でも仲良くしてもらってるうちに憧れから違う気持ちに変わっていきました。」
「…………」
一旦言葉を切った早苗ちゃんだが俺は黙って次の言葉を待つ。
「優也さん、大好きです。もしよかったらわたしと付き合って下さい!」
早苗ちゃんは顔を下げて目を瞑り俺の前に右手を差し伸べた。
知り合った頃の早苗ちゃんは内気ではっきり自分の意見を言うのは苦手な女の子だったと思う。
そんな女の子が勇気を振り絞って告白してくれている。
だからこそ俺も真剣に考えて答えを出さないといけない。
「ごめん。早苗ちゃんとは付き合えない。俺なんかを好きになってくれたのは嬉しいけど俺にとって早苗ちゃんは後輩であり妹みたいで恋愛対象としては見れてなかった。」
俺の言葉を聞いて顔を上げた早苗ちゃんは悲しそうにしながらもどこか清々しい表情に見えた。
「やっぱりそうですよね。異性として見てもらえてないのはなんとなくわかってました。」
「ごめん。」
「謝らないで下さい。こうなることは予想してましたけど言わずにはいられませんでした。はっきり答えてもらえてありがとうございました。」
「…………」
「優也さん、なんで優也さんがそんなに落ち込んでるんですか?わたしなら大丈夫ですから。」
いつの間にか観覧車が一周していたらしく係員がドアを開けて降りるように促してきた。
ゴンドラを降りて出口に向かい近くのベンチに居た里佳と合流した。
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