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第八十一話

アパートに帰って来て伊佐は早速料理を始めた。


「優也さん、けっこう時間かかるんでゆっくりしてて下さいね。」


「りょーかい。ちょっと筋トレしとくわ。」


「はーい。走りに行ったりします?」


「さすがに料理やらせといて外に出るのはダメだろ。」


「このアパートにアタシ一人残ってても大丈夫なら行ってきてもいいですよ。」


「お前を残して行くのは全然いいよ。」


「アタシって信用されてるんですね。じゃあ部屋中を探索しちゃってもいいですか?」


「じゃあってなんだよ。いきなり信用出来ないこと言い出すなよ。」


「冗談ですよ。どうぞ、行ってきて下さい。」


俺はスウェットに着替えて走りに出ることにした。


「じゃあちょっと行ってくるな。」


「お風呂沸かしときましょうか?」


「いや、シャワーでいいわ。」


「わかりました。いってらっしゃい。」


伊佐に見送られ俺は外に出る。

料理が出来るまでには帰ったほうがいいだろうと思い三十分ぐらい走る事にした。

なるべく知り合いに会わないように人気の少ないルートを走る。

アパートには伊佐が飲めるような酒がなかったと思うので途中コンビニに寄りカクテルと酎ハイを数本買っておいた。

今日飲むかはわからないがそのうち飲むこともあるだろう。


「ただいま。」


アパートに帰ってくると部屋からいい匂いがしていた。


「お帰りなさい。もうすぐ出来ますよ。」


「じゃあシャワー浴びてくるわ。一応、酒買ってきたらから冷やしとくな。」


「わあ、ありがとうございます。泊まっていけってことですか?」


「そんなつもりはない。酒飲んでも早い時間なら送るからな。」


「えー?」


「泊めるのが当たり前にはしないからな。」


「はーい。ご飯食べましょ。」


納得してない返事の仕方だったが料理が出来上がったらしくご飯を食べることに。


「優也さん、買ってきてくれたお酒飲んでもいいですか?」


「もちろんいいぞ。」


「ありがとうございます。優也さんはビールでいいですか?」


「ああ。」


伊佐は自分のカクテルと俺のビールを冷蔵庫から持ってきた。

相変わらず伊佐の料理は旨くて酒も進む。

しばらく料理を堪能していると伊佐が話し出した。


「優也さん、今回は旅行に行けませんでしたけど夏休みに行きましょうよ。」


「それはいいけど鈴音も同じこと言ってたぞ。」


三人が繋がってるならいずれわかることだろうから言うことにした。


「やっぱりそうですよね。鈴音さんにはどう答えたんですか?」


「OKしてプランは任せたよ。」


「じゃあアタシも同じでいいですか?」


「ああ、それでいいよ。」


「よし!言質は取りましたからね。今さら行かないとかなしですからね。」


「もともと約束してたし行かないとは言わないよ。」


「わかりました。楽しみにしといて下さいね。」


伊佐は鼻歌でも歌いそうなぐらい楽しそうにしている。

俺と旅行に行くのを楽しみにしているのか言質を取ったと言っていたのでなにか別の企みを楽しみにしているのかわからない。


「海外とかとんでもなく長い旅行はダメだからな。」


「もちろん海外なんて行きませんし夏らしい旅行を考えますよ。」


「そうしてくれ。」


飲んでいたビールが空になり冷蔵庫に次の飲み物を取りに行く。


「俺はハイボール飲むけどお前はなんかいるか?」


「あ、すみません。酎ハイのグレープフルーツもらえますか?」


「はいよ。」


俺は二人の飲み物を取ってきて酎ハイを伊佐に渡す。

ついでに食べ終わった食器をシンクに持っていく。


「あっ、優也さんアタシがやりますよ。」


「いいよ。運ぶぐらいやるよ。」


「ありがとうございます。」


「後で洗い物もやっとくぞ。」


「それはアタシがやりますよ。」


「それやってたら遅くなるだろ?今日は泊めるつもりはないからな。」


「あっ、バレました?遅くなったら泊まっていけって言ってもらえるかと。」


「おい!狙って遅くなろうとするなよ。そんなの狙うなら遅くなっても帰らせるからな。」


「えー?ごめんなさい。わざと遅くなるようにはしません。だから一人で帰れとか言わないで下さい。」


「一人で帰れとは言ってないだろ?遅くなったら何時でも送るぞ。」


「ありがとうございます。」


「俺んちからの帰りでなんかあったら嫌だからな。」


「もしもの話ですけどアタシがどっかから夜中に一人で帰るのが怖いって優也さんに電話したら迎えに来てもらえたりしますか?」


「行くだろうな。ただ間違いなく愚痴るけどな。」


「それでも来てくれるんですね。」


「そりゃあ行くよ。もしそんな状況があったら絶対電話しろよ。何時だろうと遠慮はいらないからな。」


「やっぱり優也さんって他人に興味なさそうな態度なのに優しいですよね。」


「実際、他人には興味ないよ。俺が優しくするのは親しくなった相手だけだからな。」


「大学では隠キャなフリしてますもんね。優也さんと親しくなれてよかったです。」


「そうか。」


「そろそろ帰りますね。優しさに甘えて毎回泊まろうとするのは卑怯ですもんね。あっ、でも洗い物チャチャっと済ませますね。」


「いや、今日はホントに俺がやるからいいよ。」


「大丈夫ですか?出来ますか?」


「一応、お前と知り合う前はやったことあるぞ。」


「やってたんじゃなくてやったことがある、なんですね?」


「数えるほどしかやってないからな。」


「なんで自慢気なんですか?」


「そんなんじゃないけど今日は俺がやるよ。」


「わかりました。じゃあ今日は帰りますね。」


二人でアパートを出て伊佐の家に向かうことにした。


「そういえば優也さんがアタシの家に上がったことないですね。」


「そうだな。」


「今度、家に遊びに来て下さい。」


「機会があれば上がられてもらうよ。」


最初の頃は近くまでしか送ってなかったが最近は家の目の前まで送るようになっていた。

伊佐の住むマンションはセキュリティもしっかりしているマンションのようだった。

女性の一人暮らしだとセキュリティが重要なんだろう。


「じゃあ優也さん、今日はありがとうございました。楽しかったです。おやすみなさい。」


「俺も楽しかったよ。おやすみ。」


伊佐がマンションに入っていくのを見送ってから自分のアパートに引き返した。

読んでいただいた方ありがとうございます。

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