表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/110

第七十七話

四月末、もうすぐ大型連休を迎える直前に電話が掛かってきた。


『もしもし、優也。今、話せる?』


「里佳か?大丈夫だけどどうかしたのか?」


『早苗から優也と一緒に遊ぼうって誘われたんだけどどういう事なの?』


「それは俺のセリフだよ。次は三人でって言われたけどどうすればいいんだよ?」


『どうすればって……、やっぱり早苗が言い出したのよね?』


「ああ、お前らが一緒に俺と遊ぶのはどうなんだ?」


『あのコが優也に憧れてるのは間違いないんだけど私が一緒に行く意味がわかんないのよね。私と優也が()()()()()だからってことかしら?』


「でもこの前は俺と里佳が付き合ってないのか聞かれたぞ。」


『そう思ってるのに一緒に遊ぶの?』


「俺に聞くなよ。里佳は友達だとは言ったけどな。」


『なんとなく私が優也を意識してたのわかってるから聞いたんだと思うけどならなんで一緒に遊び事になるのかしら?』


「だから俺に聞くなって。直接早苗ちゃんに聞いてみろよ?」


『聞きにくいわよ。って早苗ちゃんって呼んでんの?』


「お前を里佳って呼んでるって知って自分も名前で呼んでくれって言われたからな。」


『ふーん。優也は私たち二人と遊ぶのは大丈夫なの?』


「俺はいいけどお前ら次第だな。」


『わかったわ。もしその時はよろしくね。じゃね。』


「ああ、じゃあな。」


電話を切って考える。

早苗ちゃんは本気で三人で遊ぶつもりらしい。

嫌ではないが半端なく気を使わないといけないだろうと思った。



週末、鈴音のマンションでご飯を食べてゆっくりしていると鈴音が爆弾を投下してきた。


「ねえ、五月の連休に二人で旅行に行かない?」


俺は思わずコーヒーを吹き出しそうになったがなんとか堪えた。


「二人で旅行?」


「そう。あんた連休予定あるの?」


「バイトぐらいしかないけど……」


「じゃあ行かない?温泉旅行でゆっくりなんてどう?」


今まで泊まりで遊びに行ったことはない。

そもそもお互いの家に泊まったこともないのだ。

俺たちは親友としてずっとやってきている。

一般的に異性の家に泊まるという事がどういう事かは二人ともわかってる。

なのに泊まりの旅行に誘ってきている。

俺はどうするべきだろうか。

もちろん鈴音との旅行なら楽しいのは確定だ。

だからこそ鈴音と旅行に行ってなにもないなんて事があるんだろうか。

俺が理性を保てないかもしれないし鈴音は一線を越えることを望んでいるような気もする。

そんな鈴音との旅行となると躊躇してしまう。


「嫌ならいいわよ。」


「……嫌じゃねーよ。」


「ならいいじゃない。あんたと旅行とか行ったことないでしょ?親友ならおかしなことじゃなくない?」


たしかに親友なんだから旅行に行くのはおかしなことではない。

去年までなら躊躇うことなく行けたと思うが今の鈴音と行っていいんだろうか。

鈴音だけではなく俺も鈴音を異性として多少は意識していると思う。

でもここで断るのは鈴音を意識していると認めることになるし鈴音との関係に影響があるかもしれない。


「そうだね。親友だし行ってもいいかもな。」


「じゃあいろいろ調べてみるわね。決まったらまた連絡するわね。」


「ああ、わかった。」


俺が一番気の許せる相手なのは間違いない。

多少の不安はあるけどやっぱり鈴音と旅行となると楽しみだった。



翌日、伊佐から電話が掛かってきた。


『優也さん、連休に旅行に行きましょー!』


「なんでだよ?」


『なんでってなんですか?連休に旅行に行くのに理由なんかいりますか?』


「いや、だからなんでお前と俺が旅行に行くんだよ?」


『せっかくの連休なんですからいいじゃないですかー。優也さんは帰省しないんですよね?アタシはそもそも帰省するとこもないですし。どうせ優也さをんはアパートでゴロゴロしてて暇なんですから付き合って下さいよー。』


「暇って決めつけるなよ。俺にだって予定はあるからな。」


『急にそんな見栄を張らなくても大丈夫ですよー。あっ!バイトですか?』


「いや、バイトはほとんど入れてないよ。休日のバイトのメンバーが増えたからな。」


新学期になりリサイクルショップはバイトの人数が増えたので俺は平日以外はほとんど入らなくなっていた。

金銭面で困ってるわけでもないので続ける理由も時になかったりする。


『じゃあ旅行行きましょうよー。優也さんちに泊めてもらったんですから泊まりの旅行に行ってもよくないですか?』


たしかに伊佐は俺の家に何度か泊まっている。

泊めることに抵抗が少なくなっているのは確かだった。

しかし旅行となるとただ家に泊めるのとは違って俺が我慢できなくなるかもしれない。

それに鈴音からも旅行に誘われているが日程がまだわからない。

先に誘ってくれたのは鈴音だからその日程が決まらないと伊佐との予定を組むことは出来ない。


『なるほど。先に鈴音さんから誘われてるんですね?だから決められないと?それにアタシと旅行に行っていいものか考えていると?』


「おい!人の心を正確に読み取るんじゃねーよ!エスパーかよ!」


『優也さんがわかりやすいんですよ。バイト以外の予定で一番可能性が高いのは鈴音さんでしょうし、優也さんが恋人でもない異性と旅行で考えそうなこともだいだいわかりますからね。』


「わかりやすくて悪かったな。」


『悪いなんて言ってないですよー。もし鈴音さんとかぶらないように予定組めたら行きましょうよ。ダメですか?』


伊佐は旅行に行ってどうするつもりなんだろう。

何度か泊まっているが俺はなにもしていない。

旅行のテンションで今より先に進もうとしているのか、逆に泊まってもなにもしてないからこそ気楽に旅行を楽しめると思っているのか。

行ってみないと伊佐の考えはわからない。

まあ考えてもわからないなら行ってみればいいのかもしれない。

伊佐と旅行をしてつまらないってことはないだろう。


「先約との予定ががかぶらなければ行ってもいいぞ。」


『じゃあちょっと調べてみますね。先約って鈴音さんですよね?』


「…………」


『予定がかぶらないようにしないといけないじゃないですか?』


「……そうだな。」


『わかりました。じゃあ優也さん、さよーなら。』


速攻で電話を切られた。

鈴音と伊佐がどんな会話をするのかわからないがとても不安になる俺だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ