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第六十七話

村田さんと映画に行った翌日、予定もなく昼前まで寝ていたのだが目が覚めてスマホを見ると朝、里佳からメッセージが届いていた。


『おつかれー。ちょっと話したいことがあるんだけど今日時間ある?大丈夫なら連絡して。』


今日はなにも予定がないので『返事遅くなって悪いな。寝てた。今日は暇してる。』と返信した。


里佳からの返信をじっと待っていても仕方ないと思い久しぶりに本格的に身体を鍛えることにした。

時々スマホを確認しながらトレーニングをしていると里佳から着信が入った。


「……もしもし。」


「優也、久しぶり。今、大丈夫?」


「……大丈夫、話ってなんだ?」


「ちょっと待って。優也、なんか疲れてない?」


「久しぶりに鍛え直してたんだよ。最近あんまり身体動かしてなくて鈍ってたからな。」


「なるほどね。やっぱり鍛えないとあんな筋肉質にはならないわよね。」


「まあな。で?話って?」


「もうすぐ夕方だし居酒屋で話さない?奢るわよ?」


「マジで?奢ってくれんの?」


「軽く飲むぐらいならね。」


「了解。どこにする?」


「後でおみせと時間LINEするわ。」


「ん。じゃあ帰ってシャワー浴びるわ。もうあの格好はしないからな。」


「わかってるって。じゃあまた後でね。」


電話を切った俺はランニングで家に帰るとシャワーを浴びる。

風呂から出ると里佳からメッセージが入っていたので確認すると店と時間、それにマップが添付されていた。


約束の時間にその店に行くと里佳が外で待っていた。


「里佳、お待たせ。」


「優也、来てくれてありがと。入りましょ。」


俺が来たことがない居酒屋だったが比較的良心的な値段の品が多い学生にはありがたい店だった。


「値段も安めでいい店だな。」


「でしょ?味もいいからお勧めの店なのよ。適当に頼むわね。ビールでいい?」


「いいよ。それで話ってなんなんだ?」


「そんな急かさないでよ。ちょっと飲んでからでいいでしょ?」


「……それもそうだな。」


注文の品が届いて飲み始めた。

たしかに味もよくてこれから飲むときの選択肢としてこの店も候補に上がりそうだ。


「ねぇ、優也。昨日、女の子と出掛けてたでしょ?」


「ああ、出掛けてたな。どっかで見たのか?」


「昨日の夕方に駅の近くでね。一緒に居たコが彼女なの?」


「彼女じゃないよ。バイトの後輩なんだよ。前から映画に行く約束してたからな。」


「そのコのこと好きなの?」


「んー、好きか嫌いかで言えば好きだけど恋愛感情ではないかな。可愛い後輩って感じかな。」


「そっか。恋愛感情は今のところないのね。これは私はどうしたらいいんだろうなぁ……」


「どうってなにがだ?……なんとなくお前と村田さんの関係がわかった気がするけど……」


「あのコの名前、早苗っていうんでしょ?優也は私の名字知ってる?」


「知らなかったけどやっぱり村田なんだろ?」


「せいかーい。あのコは私の妹なのよ。初詣とかに行ったのも優也なのよね?」


「……そうだよ。初めて会ったコンパの時に名字聞いてたらもっと早く気付いてたかもな。」


「私も優也がどこでバイトしてるかとか聞いてたらすぐ気付いたんだろうけど知ったの最近だったしね。で?早苗と付き合ったりしないの?」


「ないんじゃないか?村田さんは俺の事が好きと言うより憧れって感じだと思うよ。」


「……そうかなぁ。あのコって今までほとんど異性の友達とか居なかったのに優也と積極的に出掛けてるでしょ?本気じゃないかなぁ。大学も優也が居るからうちの大学受けたんだと思うわよ。」


「俺は今のところ可愛い後輩としてしか見てないからなぁ。」


「だから私も困るのよ。薄々気付いてるとは思うけどはっきり言うと私は優也の事が気になってるのよね。仲良くなりたいと思ってたけど妹が優也を好きなら応援してあげたいとも思うしどうしたもんかしらねぇ?」


心底複雑そうな表情を浮かべる里佳。

俺に聞かれても困る。

里佳も村田さんもはっきりと俺を好きと言ってるわけでもないしどう答えたらいいのかわからない。


「私って恋愛体質なのよね。私的には体から入る恋愛もアリだと思ってるしね。優也はその辺どう?」


「俺はしないけどそこから始まる恋愛もあるってのはわかってるよ。」


「優也とはそういう展開もあるかもって思ってたんだけど妹が好きかもしれない相手とそれはないわね。」


「俺は体が先ってのはないな。好きになってからじゃないとしないよ。」


「意外とロマンチストなのね。」


「それが普通だと思うけどな。」


「とりあえず私はしばらくはこのまま友達として接することにしようかな。本気で優也を好きになれば考えるけど今のところは現状維持で。早苗が本気なら真剣に考えあげてね。」


「正直言って今告白されても受け入れることはないと思うけどな。」


「真剣に考えてくれたらそれでいいわ。私と優也が友達だってこと早苗に言ってもいいかしら?」


「いいよ。早めに言わないと言い出しにくくなりそうだしな。」


「よね。タイミング見て話しとくわ。そういえばもう一つ気になってることがあるんだけど聞いていい?」


「なんだよ?」


「三女神とも仲良いじゃない?特に鈴音とは親友なんでしょ?三人の誰かと付き合ったりしないの?」


「今はないけどこれから先のことはわからないよ。それは里佳にだって言えることだろ?」


「まあね。」


「正直、俺は恋愛ってのがよくわかってないんだよな。」


「えっ?でも彼女居たことあるのよね?」


「あるのはあるけどな。」


「ほんと優也って変わってるわ。あの強さといい普通じゃないのはわかるけどますます興味が湧いちゃうわね。」


頼んでいた食べ物がなくなり追加注文したがそこで恋愛関係の話は終わりにしてそこからは漫画などのたわいもない会話に切り替わった。

やっぱりノリがいい里佳との会話は面白かった。


「今日はありがとな。ホントに奢ってもらっていいのか?」


「私が呼び出したんだしいいわよ。じゃあね。」


「ちょっと待ってくれ。俺はこんな時間に女性一人で帰らせるのは嫌なんだよ。送っていくよ。」


「いいわよ。一人で帰るとかよくあることだし。」


「俺が嫌なんだよ。家までは付いていかないから送らせてくれ。」


「優也って優しすぎるわね。だからモテるのかなぁ。」


「俺はモテないよ。」


「よく言うわね。今日はお言葉に甘えて送ってもらうわ。」


こうして里佳を家の近くまで送って行くことになった。

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