第六十六話
今日は村田さんと映画に行く約束の日だ。
先週のお礼詣りのように待ち合わせをしてから映画館に向かう。
今日見に行く映画は大ヒットした長寿漫画が映画化されたものでもう何度も映画化されてはヒットしている作品だ。
元々あんまり漫画に興味はなかったがリサイクルショップで働いたことと、村田さんと仲良くなりその漫画を布教されたことで俺も好きになっていた。
今ではいろんな漫画を読むようになっている。
映画は漫画の本編とは別の話とのことでどんな内容か知らないので楽しみだ。
「伊庭さん、今日はアニメですけどよかったですか?もっと大人っぽい映画のほうがいいですか?」
「そんなことないよ。もともとあの漫画のアニメ映画を見に行く約束だしね。」
「よかった。映画見た後、どっかで喋りたいんですけどダメですか?」
「カフェかなんかに寄ろうよ。どうせなら感想を言い合いたいしね。」
「やった。ありがとうございます。楽しみです。」
映画館に着いて俺はチケットを買いに行こうとしたが村田さんに止められた。
「伊庭さん、チケットならもうネットで買ってますよ。スマホの画面見せたら入れますから飲み物とか買うだけで大丈夫です。」
「えー?映画代ぐらい出すつもりだったんだけど……」
「わたしが誘ったんですし出しますよ。」
「うーん、いいのかなぁ………」
ちょっと悩むがここで金を出しても受け取ってもらえないだろう。
「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな。ただしここの飲食含めて今日のこれからの代金は全部俺が出すからね。じゃないとここでどっちが払うか押し問答が始まるよ。」
「……わかりました。…この後はお願いします。」
俺は村田さんに飲みたいジュースを聞いてから二人分のジュースと一緒に食べる大きめのポップコーンを買って中に入った。
公開が始まってまだ少ししかたってなくて超人気漫画の映画なのでかなり大きめのスクリーンでの上映のようだ。
村田さんのスマホで自分たちの席を確認して座ったがまだ上映開始まで時間があるので雑談して過ごす。
「ほとんど席が埋まってるね。村田さんが予約してくれてなかったらこの時間は入れなかったかもだね。ありがとう。」
「いえ、楽しみすぎてネットで見てたら予約の画面があったんでやってみただけですから。ネタバレしないように内容は全く調べてないんですけど伊庭さんはどんな内容か見ました?」
「俺も前情報は全然見てないから知らないんだよね。その方が映画を楽しめるしね。」
「ですよね。」
そんな話をしていると場内の空席もほとんどなくなってきて照明が落とされ暗くなり公開前の映画の宣伝が始まった。
冒険物や恋愛物などの宣伝をしているがまだ映画が始まったわけではないので会話を続ける。
「村田さんはアニメ以外に映画見たりする?」
「ほとんど見たことないですけどさっきの恋愛映画とかなら見てみたいかもです。大学が舞台でしたし面白そうかなって。」
「春から大学生だもんね。村田さんは大学へは実家から通うの?」
「そうですね。そうなると思います。お姉ちゃんも通ってますから。」
「そういえばお姉さんが居るんだったね。俺が知ってる人だったりするのかな?」
「どうですかね?あんまりお姉ちゃんとそんな話……あっ!始まりますね。」
そこで映画が始まりそうになり会話を止めた。
上映中は映画に集中してほとんど会話はしなかった。
映画が終わり二人で近くの喫茶店に来て約束通り映画について語り合う。
「面白かったですね。最後は予想外でした。」
「そうだね。ホント意外な展開だったね。でも今回の映画って本編にけっこう関係ありそうじゃなかった?」
「やっぱりそうですよね。映画見てるのと見てないのとでは本編のイメージも変わりそうですよね。」
「それに今回出てきたキャラって本編に出てこないと辻褄が合わないぐらい重要なキャラじゃない?」
「伊庭さんもそう思いますか?出ないとおかしい感じですよね。」
「うん。今、漫画読み直したらさらに面白く読めそうかな。」
「わたしもそう思います。というか帰ったら絶対読みます。」
こうして映画と原作漫画の話で盛り上がっているといい時間になったので喫茶店を出て帰ることにした。
待ち合わせた場所まで戻って村田さんと別れる事になった。
「伊庭さん、今日はありがとうございました。」
「こちらこそありがとね。そういえば入学祝いなにがいいか考えてくれた?」
「今日、付き合ってもらえたので十分だと思ってたんですけど一ついいですか?」
「なにかな?」
「入学したらご飯食べに行きたいです。」
「あんまりお祝いで行くような高級な店は知らないんだけどいいかな?」
「伊庭さんがよく行く居酒屋とかに行ってみたいです。」
「いいけど村田さんは飲めないよ。」
「それはもちろんです。ただ伊庭さんがよく行くお店で食事してみたいんです。」
「じゃあ村田さんが入学したら行こうね。」
「はい!よろしくお願いします。」
「約束だね。じゃあそろそろ帰ろうか。バイバイ。」
「伊庭さん、さようなら。またよろしくお願いします。」
村田さんと別れて帰路につく。
この時に遠目からアッシュブルーの髪色をした気が強そうな女性が複雑そうな表情でこっちを見ていることに俺は気付いていなかった。
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