第五十八話
ホワイトデーまであと一週間となり俺は焦っていた。明らかに義理チョコだとわかる物をくれた鈴音と彩乃の友達四人へのお返しはホワイトデーの特設コーナーで買ったので問題ない。
里佳へのお返しも同じコーナーの高めの商品にした。
悩むのは残り四人へのお返しだ。
鈴音からきたのは、
『お礼は期待してなかったけどどうせならなんでもいいからあんたが選んだものちょーだい。』
というメッセージだった。
これがなかなか難しい。
鈴音との付き合いは長いので好みそうな物はある程度わかるとはいえ今までに渡してない物となると限られてくる。
とりあえず特設コーナーでそれなりの物を買ってプラスなにか買うつもりだ。
神崎については
『アタシが渡したいと思ったから渡しただけでお礼なんて気にしないで下さい。』
と言っていたがそんなわけにもいかない。
同じように特設コーナーで一つはお菓子を買ったが財布を貰っているので妥協せずに神崎の気に入ってくれる物を探さないといけない。
彩乃はその料理スキルを生かして凝ったチョコレートをくれたのでなにかホワイトデーの特設コーナーで売っているのとは違った物を返したいと思っている。
彩乃の性格を考えるとどんな物でも喜んでくれるとは思うが出来れば本心から嬉しいと思ってくれる物を渡したい。
そして一番難しいのが村田さんだった。
大学受験の村田さんはちょうどホワイトデー前後が試験のはずだ。
試験前か後かわからないし後なら試験の出来次第で気持ちも違うだろう。
このタイミングで受験のことを聞いてもいいんだろうか。
たしか三月はバイトもほとんど入らない予定だったはずなのでいつ渡すかという問題もある。
四人へのお返しを決めないといけないので午後から講義のない平日に隣町にあるデパートでお返しを探してみることにした。
まずは貴金属の店舗が多くあるフロアに来て軽く見て回ったがまず指輪はないなと思った。
そもそも四人の指のサイズがわからないし友達に渡すのに指輪だと重たい気がする。
ネックレスは指輪ほど重たくはないと思うが渡すハードルが高い。
そこで考えたのがピアスかイヤリングだ。
これなら気軽に渡せるような気がするので候補の一つとして他を見てみることにした。
次に来たのはアパレルショップが多いフロアだが服については個人の好みもあるので俺が選んで買うと間違いなく失敗するだろう。
服なら相手と一緒に来て買うしかないと思いながら歩いていたところで小物コーナーがあることに気付いた。
ヘアバンドや帽子、トートバッグなどあるのでそういう小物ならアリだと思った。
さらに歩き回っていると雑貨などを扱っている店で財布を売っているのが見えた。
神崎から財布を貰っているしそれを返してもいいと思い寄ってみることにした。
財布の他にもキーケースなどもあり見てみると俺のイメージと違いピンクなどのパステルカラーな物もあった。
他にも花や化粧品、美容グッズなどを見て回った。
だいたい候補が決まったので誰になにを買うか考えからまた後日買いに来ることにした。
チョコをくれたほとんどの相手には大学で会ったり出来るのでホワイトデー当日に返せると思っているが村田さんだけは当日会えない可能性が高いのでメッセージを送ることにした。
『村田さん、お疲れ様。入手試験はいつなのかな?試験がホワイトデーの後なら試験が終わってから渡したい物があるんだけど。』
大学入試は共通テストの後は大学によって日程が違うので村田さんの受ける大学がいつ試験かわからない。
ちなみにうちの大学は先日の日曜日に試験があった。
とりあえずこれで返信を待つ。
しばらくするとメッセージが届いた通知音が鳴ったので見てみると村田さんからだった。
『伊庭さん、お疲れ様です。入試は終わりました。まだ結果は出てませんが自信はあります。』
自信はあるということなので一安心だ。
『ホワイトデーは予定あるかな?あれば他の日でもいいから空いてる日を教えてくれないかな?』
『ホワイトデー当日大丈夫ですけど伊庭さんはバイト入ってますか?』
『ホワイトデーは六時からバイトだよ。』
『じゃあバイトの前にお店に行きますよ。貰いに行くみたいで申し訳ないですけど。』
『バレンタインに貰ったののお返しだから気にしないでくれたら嬉しいかな。本当は渡しに行けたらいいんだけど村田さんの家を知らないからね。』
『そうですね。機会があれば家に来てもらいたいと思ってますけど来てもらう理由がないですね。』
『女の子の実家に行くのはハードル高いからよっぽどの理由がないと行けないけどね。』
『やっぱりそうですよね。ホワイトデーは五時半ぐらいにお店に顔を出すようにしますね。』
『じゃあ俺もそれぐらいには店に行くようにするね。大した物じゃないから期待しないでね。』
だいたい買う物は決めたけど実際にはまだ買ってないのだが。
『伊庭さんに貰えるならなんでもいいですよ。』
やっぱり村田さんはいい子だなと思った。
ホワイトデーとは別に高校卒業と大学入学のお祝いも今度準備したほうがいいかな。
『じゃあまたホワイトデーにね。』
『はい。ホワイトデー楽しみにしてますね。おやすみなさい。』
『おやすみ。』
村田さんとのやり取りも終わり誰になにを買うか考える。
だいたい決まったので次の日曜日に買いに行くことにした。
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