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第五十六話

休みが終わり大学の講義が再開した。

噂は相変わらずだか俺は全く気にせず行動する。

俺の方から話しかけることは少ないが三女神と普通に仲良くしている。

里佳は最近は顔を合わせてもあいさつ程度しかしていない。

遊んだ後より遊ぶ前のほうがよく話していたような気がする。

そんな俺の最近の行動はというと週に二、三日は神崎が俺のアパートに来て料理や掃除をしてくれている。

もちろんクリスマスイブ以来、泊まらせてはいない。

そして週に二日ぐらい彩乃のマンションを訪れて料理と試作スイーツをご馳走になる。

彩乃のスイーツは普通に旨いが俺では旨い以外の言葉が出てこないので試食をする意味がないような気がする。

バイトのない週末は鈴音のマンションで料理と軽く酒を飲んでいる。

鈴音には全く気を使う必要がないので自分のアパートよりもダラけている時もあるぐらいだ。


そんな日々を送っていると誰かとの関係が変わることなく二月のあのイベントが間近に迫っていた。


『あんたは誰かと一緒に過ごしたりするの?』


電話の相手は鈴音だった。

俺がバレンタインにどうするのか聞きたいらしいが特定の相手が居るわけでもないのでいつも通りに過ごす予定だ。

鈴音は毎年くれているので一つも貰えないことはないと思うが……


「特に予定はないよ。つってもバイトがあるから全くの暇人ってことはないけどな。」


『バレンタインにバイト入れなくてもよかったじゃない。何人かからは貰えるでしょ?』


「そこまで傲慢じゃないけど貰えたらうれしくはあるな。」


『私はあげるけどどうしようかしらね?さすがにバレンタインにうちに取りに来てってのはおかしいわよね。』


「そりゃ俺から行くのは抵抗あるぞ。」


『まあ今さらだし大学で渡してもいっか。中を見るのは帰ってからにしてちょうだい。』


「わかった。」


『じゃあまたね。』


「ああ、またな。」


電話を切って考える。

鈴音は高校の頃から手作りチョコをくれている。

貰えることに慣れてしまっていて本命か義理かを考えたこともない。



バレンタイン当日、講義もあるので大学に居ると鈴音が近付いてきた。


「はい。ハッピーバレンタイン。」


可愛くラッピングされた小箱を渡された。


「おお、サンキュ。しかし毎年大変だな。慈愛の女神は配る量も多いんだろ?」


「配らないわよ。今年は優也だけ。義理で市販品を配ってたけど今年は優也以外には渡さないわ。」


「そうなのか?女神的に大丈夫なのか?」


「私の自由でしょ。周りがどう思おうと関係ないわよ。私は優也にしかあげない。そう決めたの。」


「そっか。ありがとな。」


鈴音とのやり取りが終わると鈴音とよく一緒に行動している女の子たちが近付いてきた。

その中の二人が俺にチョコをくれた。

もちろん市販品で鈴音の友達だからと義理でくれたらしい。

そしてもう一人、里佳が俺にチョコを渡してきた。


「優也、これあげるわ。」


「ありがと。」


「いいわよ。他にも配ってるしね。一応、優也にあげてるの他とは違うやつだからね。」


「なんか悪いな。でも手作りじゃないよな?」


「私は料理とかお菓子作りは苦手だから作ったこともないわよ。じゃ、またね。」


「またな。」


それからは何事もなく講義も終わり、アパートに帰ってくると部屋の前に神崎が待っていた。


「あっ、優也さん、おかえりなさい。」


「ただいま。わざわざ待ってたのか。なんか悪いな。」


「悪いと思ってくれるなら合鍵くれてもいいんですよ。」


神崎は悪戯な笑みを浮かべて上目遣いに俺を見てくる。


「渡さねーよ。」


「残念。それはともかくバレンタインチョコです。どうぞ。」


「ありがとな。」


「手作りですから今度感想聞かせて下さいね。じゃあアタシはこれで。優也さん、優也さん以外にはチョコあけてませんからね。ではまた。」


ビシッと敬礼をして神崎はあっという間に帰っていった。

この為だけに来てくれたらしい。

少しぐらいなら中でゆっくりする時間もあったんだけどそれを言うタイミングもなかった。

部屋に入った俺は貰ったチョコをローテーブルに置く。

市販品はともかく手作りのチョコは早めに食べたほうがいいとは思うがまだ開けないでおく。

シャワーを浴びて準備をしてバイトに行くことにした。

バイト先であるリサイクルショップに着いて休憩室に入ると村田さんが居た。


「あれ、村田さん今日はシフト入ってなくない?」


「あっ、伊庭さん、お疲れ様です。休みなんですけどちょっと来ちゃいました。あの……これ……、バレンタインチョコです。貰ってくれますか?」


「わざわざ持ってきてくれたの?ありがとう。」


村田さんから渡されたのは有名な高級チョコレートブランドの袋だった。


「えっ?これって高いやつじゃないの?なんか悪いよ。」


「全然大丈夫ですよ。わたし、自分じゃ作れないからこれにしました。食べて貰えたらうれしいです。」


「ありがとう。帰ったら食べさせてもらうね。」


「はい!それと今日は伊庭さんに報告があって来たんです。」


「報告?」


「大学入学共通テストの結果なんですけど志望校の判定がA判定だったんです!」


「おっ、そうなんだね。」


「まだ頑張らないといけないけど伊庭さんと一緒に初詣に行ってよかったです。」


「いやいや、それは関係ないしまだ合格した訳じゃないからね。」


「そうですね。油断しないで受験勉強頑張ります。それじゃ、今日はこれで失礼します。」


ぺこりと頭を下げて村田さんは帰っていった。

その後のバイトは何事もなく終了し、休憩室に戻った俺はスマホを確認すると彩乃からメッセージがきていた。


『優也くん、渡したい物があるからバイト終わったら連絡して。』


メッセージを読んだ俺はすぐに返信した。


『今終わったよ。』


すると直ぐに電話が掛かってきた。


「もしもし。」


『優也くん、バイトお疲れ様。優也くんが帰ったらアパートに行っていい?』


「もう遅いから出歩かないほうがいいよ。帰りに彩乃のマンションに寄るよ。それでいい?」


『うん、わかった。待ってるね。』


彩乃を待たせるのも悪いのですぐに彩乃のマンションに向かうことにした。

マンションに着くと彩乃がエントランスで待っていた。


「彩乃、寒いんだから部屋に居てよ。」


「大丈夫。来てもらうんだからここで待ちたかったの。」


「風邪引いたらダメだからこんな時は部屋で待っててよ。じゃないと今から行くとか言えなくなるよ。」


「………わかった。次から部屋で待つ。」


「約束ね。」


「うん。それで渡したい物なんだけどバレンタインチョコ作ったから受け取って。」


「ありがとう。彩乃の作ったチョコなら絶対旨いね。」


「どうかな?頑張ったけど優也くんの口に合うかはわからないよ。」


「彩乃のスイーツは旨いからね。チョコも楽しみだよ。」


「ありがと。それとこの二つはハルとトモから。」


「彩乃の友達だね。ありがとってお礼言っといてもらえる?」


「うん。言っとくね。じゃあ優也くんが帰るの遅くなるから部屋に戻るね。」


「そうだね。おやすみ、彩乃。」


「優也くん、おやすみなさい。」


彩乃とあいさつを交わし彩乃がエレベーターに乗るのを見てから俺も帰路についた。

鈴音からしか貰えなかった去年と違って、今年は意外と多くチョコを貰えるバレンタインデーになったのだった。

読んでいただいた方ありがとうございます。

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