第五十二話
ずっと頭を撫でていたがいつの間にか神崎は泣き止んでいた。
「えへへ、優也さんに撫でられると落ち着きますね。」
「そうか?勝手に撫でたからセクハラ案件じゃないか不安だったんだけどな。」
「そんなことないですよ。優也さんにならいつでも撫でられたいです。」
「普段はやらないからな。」
神崎は不満そうな顔で「えーっ」と言っているが彼女でもない女性の頭を触るのは抵抗がある。
「それで、話なんですけど優也さんに話してよかったです。ずっと誰にも話さなかったんですけど聞いてもらえて少し楽になりました。」
「そっか。」
「続きですけどアタシって小悪魔な女神とか言われてるじゃないですか?容姿が整ってるのは自分でもわかってます。両親ことがあってから誰かにきつく当たったり逆に優しくしたりするのが怖いんです。だから言い寄ってくる男性に愛想よくしちゃうんです。でも必要以上に仲良くするつもりもなくて。たぶんそんなアタシだから小悪魔って言われるようになったんだと思います。」
「なるほどな。邪険に出来ないから誰にでも愛想がよくて、でもいざ親しくなるとそれ以上は仲良くなれないからそう呼ばれるようになったのか。で、実際その呼び名ってどうなんだ?」
「最初は抵抗ありましたけど今ではあんまり気になりませんね。慣れたってことですかね。それにもう呼ばれなくなりそうですし。」
「そうなのか?」
「はい。だって最近は学祭の時にイケメンと一緒に居たのを除いたら大学では男性だと優也さんとしか接してませんし例の噂がありますからね。アタシたち、三女神は三股されてるらしいですから。」
「どうでもいいけど休み明けもその噂続きそうだな。」
「そうですね。アタシはもう周りにどう思われてもいいです。優也さん以外と仲良くする気もありませんしこれから大学でも積極的に行くんでよろしくお願いします。」
これはほとんど告白しているのに近いような気がする。
はっきり言われたわけではないので返事はしないが。
「とにかく今日は話を聞いてくれてありがとうございました。色々吹っ切れたような気がします。」
もういい時間になっていたのでそろそろ寝ることにした。
電気を消して俺は床、神崎はベッドで横になる。
しばらく静かにしていたが俺はなかなか寝付けなかった。
神崎も何度も寝返りをうっているし寝息も聞こえないので起きているんだろう。
俺は神崎の事を考える。
中学生の時に両親が失くなりその原因が本人は自分にあると思っていた。
色々な偶然か重なっただけで決して神崎のせいではない。
それを他人が言ったところで本人は納得しないだろうし結局は自分の中の考えを変えるしかないのだがさっき神崎は吹っ切れたと言っていたので多少は俺に話した意味があったんだろう。
「…優也さん、起きてますか?」
「………ああ、神崎も寝れないのか?」
「寝れないって言うか寝てない、ですかね。今日は本当にありがとうございました。優也さんに話してよかったです。」
「それならよかったよ。」
「……優也さん、……優也さんもご両親はもう失くなってるんですよね?」
「……そうだな。」
「アタシもっと優也さんの事知りたいです。」
「もっと仲良くなって俺が話したいと思うようになったら話すよ。」
「……まだアタシには話せませんか?」
「…まだってことはないよ。お前の事は信用してるし全然話してもいいとは思ってるよ。ただタイミングもあるしな。話したいと思った時に話すよ。」
「……そうですよね。今日はアタシの話を聞いてもらいましたしそれで満足しておきます。いつか優也さんのご家族のこと教えて下さいね。」
「そうだな。いつか話すよ。約束だ。」
「約束してもらいました。ありがとうございます。」
「そろそろ寝るぞ。俺はバイトがあるしお前もクリパがあるって言ってただろ?」
「アタシの予定は夜ですけどね。優也さんはバイトなんですね。じゃあもう寝ないとですね。」
「だな。おやすみ。」
「…………優也さん、………お願いがあります、………一緒に寝てもらえませんか?……今日だけでいいんです。明日からはいつものアタシに戻りますから……」
「…………」
「……やっぱりダメですよね……」
俺は起き上がり神崎の隣で横になる。
「今日だけだからな。」
俺は神崎に背を向けて横になる。
流石に神崎のほうを向いて寝るわけにはいかない。
理性を保つのが大変だしなにかの間違いがあれば洒落にならない。
「……優也さん、ありがとうございます。アタシ、今日何回お礼言ったんですかね?」
「わからんけどそいとう言ってるな。俺にお礼なんて言わなくていいぞ。」
「自然に出るんですよ。それだけ感謝してるってことです。」
そう言って神崎は俺の背中に手を置いた。
抱き付いてきたりすれば引き離すがこれぐらいなら許容範囲だろう。
「優也さん、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
しばらくじっとしていると神崎の寝息が聞こえ始めた。
振り返って神崎の顔を見てみると穏やかな寝顔だった。
顔を戻してから神崎が初めて泊まった日にうなされていたのを思い出す。
今日はそんなことがなければいいなと思いながら俺も意識を手放していった。
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