第四十九話
クリスマスイブの朝、神崎に起こされることになるかと思っていたが意外と早く目が覚めた。
だからといって特にすることがあるわけでもないのだが。
これから女性が来るのだから普通なら掃除でもするべきなのかもしれないがいつも神崎にしてもらっていて今日も掃除をする気にならなかった。
自分でも甘えすぎだとは思っているが笑顔で掃除してくれる神崎には頭が上がらない。
そんなことを考えていると神崎から『起きてますか?もうすぐ着くから起きてたら鍵開けといて下さい。』とメッセージが来た。
俺はメッセージに従って玄関の鍵を開けた。
カチャ
「あれ?開いてる?…って優也さん起きてるじゃないですか?」
玄関にインターフォンも鳴らさずに入ってきてびっくり顔になっている神崎が居た。
「お前が開けとけって言ったんだろ。あとインターフォンぐらい鳴らせ。」
「鳴らそうとしてボタンは押しましたよ。鳴らなかったですけど。」
「マジか?電池切れかな?まあいいか。今度からノックしてくれ。」
「電池変えないんですか?」
「なくても困らないからな。まあそれはいいとして、いらっしゃい。」
「あ、はい。お邪魔しまーす。返信なかったしまだ寝てるかと思ってました。」
「既読は付いてただろ?で、どうする?すぐ買い物行くか?」
「まだ早いから先に持ってきたもの整理しますね。」
神崎は前にも持ってきた大きいバッグの中身の整理を始めた。
調理器具などが出てきたが前に持ってきたものとなにが違うのか俺にはわからない。
「それって前のやつと違うのか?」
「全然違いますよ。今日はクリパ用のスペシャルメニューなんで色々持ってきました。」
得意気な表情をしながら冷蔵庫の中身を確認する神崎だった。
「あんまり無理すんなよ。」
「時間はたっぷりあるから大丈夫です。」
神崎は冷蔵庫の確認をしながらスマホを取り出しなにかをメモっている。
おそらく買ってくる物のリストを作っているんだろう。
しばらく見ているとスマホをしまった神崎が俺の前に来て笑顔を見せる。
「優也さん、だいたい買わないといけない物は決まったんでいつでも買い物行けますよ。どうしましょうか?」
「今からだと昼どうするかだな。どっか外で食うか?」
「うーん…、昼も使ってもいいんですけど昼食べてからだと遅くなっちゃいますよね?」
「じゃあ今から買い物行くか。夜、ご馳走になるし昼はなんか奢ってやるよ。」
「えー!?いいんですか?優也さん、そんなお金ないんじゃ?」
「金がないなんで言ったことねーだろ。」
「でも優也さんって食費抑えてるし、このアパートも家賃安いですよね?お金ないんじゃないんですか?」
「そんなんじゃないぞ。食べもんは特にこだわりがないだけだし住むとこなんて屋根があって寝れればどこでもいいからな。」
「でもバイトしてるし仕送り少ないんじゃないんですか?」
「そんなことないぞ。そもそも仕送り貰ってるわけじゃなくてな。まとまった額の貯金があるからそれで生活してるんだよ。」
「えっ?優也さんってお金持ちなんですか?」
「親が残した金があるだけだよ。」
「優也さんにもなんか事情があるんですね。」
「まあな。人に話すようなことじゃないけどな。」
「……あの、もしかして、…中里さんって優也さんの事情知ってるですか?」
「……ああ、知ってるよ。長い付き合いだしな。」
「アタシもいつか聞きたいです。もっと仲良くなったら話してくれますか?」
「そうだな。お前にならいつか話したいと思うようになるかもな。」
「わかりました。今はそれで納得しときます。ほんとに昼奢ってもらっていいんですか?」
「ああ、いいぞ。」
「ではまずは買い物に行きましょう。」
まずは二人で近くのスーパーに来た。
俺は神崎の後に続いて買い物かごを持つだけだ。
なにを買うかもわかってないし食材の良し悪しも俺にはわからないので荷物を持つぐらいしか出来ない。
神崎は食材の一つ一つを楽しそうに選んでいる。
「いいですね。こうやって誰かと一緒に買い物するのも。なんか新婚夫婦みたいで。」
「なんでだよ。俺はただの荷物持ちだ。」
「えー?優也さんノリ悪いですねー。」
言葉のわりにはニコニコしているのでよっぽど楽しいんだろう。
「だいたい買うものは揃いました。買ったあとどうします?一回アパートに帰ります?」
「いや、このまま昼食べてから帰ろうぜ。」
「保冷バッグもあるから大丈夫だと思いますけど氷袋多めに入れないといけないから重たくなりますね。」
「俺が持つからいいよ。あと金は俺が出すからな。」
「いいですよ。アタシが出すから大丈夫です。昼奢ってもらいますし。」
「でもいつも食材買ってきてるんだろ?しかも作ってもらってるんだから俺が出すべきだろ。」
「アタシが好きでやってるだけですし、家で一人分作るのも優也さんのアパートで二人分作るのも量が少し増えるだけであんまり変わらないんですよね。しかも優也さんのアパートで作るほうが楽しいし二人で食べたほうがおいしく感じるから食材費のことは気にしないで下さい。」
「……でもなぁ。」
「お金を出されても受けとりませんし無理矢理渡されてもアパートに置いて帰りますからね。とりあえず会計するで氷取ってきて下さい。」
「……わかった。」
夜が豪勢な食事になりそうなので昼は軽く子供にも人気のファーストフード店に来て俺は照り焼きバーガーのセット、神崎はチーズバーガーとジュースを頼んだ。
「ハンバーガーとか食べたの久しぶりだ。」
「そうなんですか?学生が立ち寄る定番だと思うんですけど。」
「俺は今までほとんど外で食べたりしなかったからな。」
「優也さんって大学では隠キャなのに実際はストイックな生活してますよね。」
「そんなつもりはないけどな。」
食べ終わり店を出た俺たちはケーキ屋に向かった。
二人なのでショートケーキを二つ買おうとしたが神崎がクリスマスなんだからホールケーキがいいと言い出したので二人で食べきれそうな小さめのホールケーキを買って帰った。
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