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第四十三話

「優也くん、もう頬は治ったんだね。」


「うん。元々それほど痛くもなかったしちょっと腫れてただけだからね。友達はいいの?」


「うん。友達だけど聞かれると困ったことになるかもだから。」


学祭のときか噂のことのどっちかの話のようだ。

講義の始まる時間になったので周りに人影はほとんどなくなった。


「彩乃は講義はないの?」


「うん。今は空き時間。優也くんは?」


俺は本当は里佳と同じ講義があったが「俺もないよ。」と嘘をついた。

嘘をついたりするのは嫌だが周りの目を避けてゆっくり話すには講義中のほうが都合がいい。


「お礼をさせてほしい。あの時優也くんが居なかったら彩乃なにされてたかわからない。」


「大したことしてないけどお礼を受けないと彩乃はずっと気にしてそうだね。」


「うん。気にする。なにか彩乃にしてほしいことない?言ってくれたらなんでもするよ。」


「女の子が簡単になんでもするとか言ったらダメだよ。」


「?」


彩乃はよくわかってないらしく不思議そうな顔をしている。


「優也くんならなんでもいいよ。」


わかってて言ってるのかな?

男なら当然頭に浮かぶことは隅に追いやり考えると彩乃にしてほしいことで思い付くのはやっぱり料理だった。


「じゃあまた料理作ってほしいかな。」


「わかった。じゃあ明日作る。」


「ごめん、明日はバイトがあるんだよね。」


「なら金曜日。いっぱい話したいから早く来てほしい。」


「じゃあ金曜日の六時に行っていい?」


「うん、楽しみに待ってる。優也くんどんな料理が食べたい?」


「やっぱり肉料理かな。」


「わかった。とびきりの肉料理を作るね。」


「凝った料理じゃなくて簡単なのでいいからね。ってごめん、簡単な料理なんてないよね。」


「あるよ。簡単なのなら覚えたら優也くんでも作れるよ。」


「俺は料理は諦めてるからやらないよ。」


「よくそれで一人暮らし出来るね。」


「……………まあね。」


「ごめん。余計なこと言った?」


「いや、そんなことないよ。」


「……優也くん、彩乃はもっと優也くんのこと知りたいし仲良くしたいから優也くんのこと教えてほしい。」


「そうだね。まだお互いのことあんまり知らないし金曜日話そうね。」


「うん。じゃあまた金曜日に。」


彩乃は友達のほうに戻っていって「ごめん。優也くんと二人で話したかったから。」と言っているが友達二人は気にしてなさそうで楽しそうに話している。

三人が離れた後、講義に出ようかとも思ったが今さらなので止めておいた。



金曜日の夜、約束通り彩乃のマンションに来ている。

彩乃は料理をしていてもうすぐ出来るらしく俺はソファで待っている。


「出来たよ。食べよ。」


彩乃の声で俺はダイニングテーブルに移動する。

出来た料理を見てみると照り焼きチキンにスパイシーチキン、油淋鶏と鶏肉を使った三種類の料理が並んでいた。


「優也くんに食べ比べてもらってどれが一番好きかお教えて。」


「わざわざ三種類も作ったの?」


「うん。料理が出来るのもわかってもらえて優也くんがどんな料理が好きかもわかるから。」


「ありがとう。料理が得意なのはもう知ってるけどね。いただきます。」


それぞれを食べてみたがどれが好きと聞かれると困るぐらいにどれもうまい。


「全部うまいよ。どれもうまくて一番は決められないけど、このスパイシーチキンの辛さは俺にちょうどいいかも。」


「気に入ってもらえてよかった。ちょっと辛めにしたから彩乃には辛すぎた。彩乃の分も食べて。はい、どうぞ。」


彩乃は自分のスパイシーチキンを切り分けて俺の口元に差し出してくる。

何度か見た挑発するような妖艶な表情をしているのかと彩乃を見ると俯き気味で顔が赤い。

よく見ると耳まで赤くしている。

明らかに照れていた。

前までの彩乃の態度と違っていて俺は逆に困惑する。

なにか彩乃の心境に変化があったってことだろうけど今は気付かないフリをしておこう。


「大したことしてないのにこんなにうまい料理作ってもらったら俺がなにか返さないと釣り合いが取れないよ。」


「そんなことない。彩乃のほうが助けてもらってばっかり。……でも優也くんがそう言ってくれるなら一つお願いがある。」


「俺に出来ることならやるよ。」


「……優也くん、彩乃に気を使って喋ってる。中里さんたちと喋るときと口調が違う。」


「あー、そうかな?…そうかも。彩乃は年上だしどっかお嬢様な雰囲気があるからちょっと丁寧になってるかも。」


「それを止めてほしい。彩乃にも素な喋り方してほしい。」


「先輩なのにいいのかな?キツい口調に聞こえるかもだよ。」


「いいよ。」


「わかった。こんな感じになるけどいいのか?けっこう荒い口調だぞ。」


なぜか少し頬を桃色に染めて下を向き「いいよ。」と言う彩乃。

俺としては楽ではあるがなぜかちょっと悪いことをしているような気持ちになる。

本人が望んでいるのでそうするが。


「ご馳走様。ホントにうまかったよ。」


「喜んでもらえて良かった。」


食事を終えた俺は片付けを手伝うと言ったのだか断られた。

ソファに座っている俺に片付けを終えた彩乃から声がかかる。


「なに飲む?コーヒーか紅茶、お茶もあるけどなにがいい?」


「コーヒー、ブラックでもらえる?」


「わかった。彩乃は紅茶にしよ。」


二人分の飲み物を持って来た彩乃が隣に座る。


「優也くん、改めてありがと。優也くんがあの時助けてくれてほんとに嬉しかった。優也くんは彩乃にとってのヒーローだよ。」

読んでいただいた方ありがとうございます。

もし面白いと思っていただけたら拡散してもらえたらうれしいです。

なるべく多くの方に読んでいただきたいです。

これからもよろしくお願いします。

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