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第四十話

再び目が覚めた俺がスマホを見ると火曜日の朝だった。

月曜日はほとんど寝ていたことになる。

普段から酒に飲まれるようなことがないようにしていたのだがこれだけ飲んでこれだけ寝てしまったのは初めてだった。

昨日にしても起きたら人が居るなんて事は今までの俺ならなら考えられない事だ。

勢いに任せて飲み過ぎたのだがこれからは気を付けよう。

枕元に置いてあるスマホを見ると鈴音から『今日は講義出るの?』とメッセージが入っていた。

俺は洗面所に向かい鏡で自分の顔を確認したがまだ少し頬が腫れていた。

『今日は止めとく。明日は大丈夫と思うから出るよ』と返信して再びベッドで横になる。


夕方、バイトがあるので準備をする。

大学には少し行かなくてもなんとかなるがバイトをサボるわけにはいかない。

今日は村田さんはシフトに入っているんだろうか。

学祭の日のメッセージでは学祭が凄いことになってたと書いてあったがあの騒ぎを直接見たのかわからないし見たとしたら騒ぎの中心に居たのが俺だって気付いたのかも気になるがそもそも見てないかもしれない。

とりあえず村田さんに会ったときの態度で判断すればいいだろう。


いざバイトに来てみると村田さんはシフトに入っていなかったのでバイトに集中する。

しばらく集中してバイトをして残り一時間ぐらいになった時に目の端に店長を見掛けた。

珍しく誰かと談笑しているのでバイトの誰かかと思ったらバイトではなく最近俺と仲良くなった人物だった。


「おい、なんでお前がここで店長と話してんだよ?」


「伊庭くん、彼女さんにそんな言い方をしてはいけないよ。」


「そーですよ!アタシは彼女でありお客様でもあるんですから優しくして下さい。」


「彼女じゃねーだろ!」


神崎だった。

前も来てたし、ここに居るのはそれほど不思議なことではない。

しかしなぜか店長と仲良くなってるし彼女を名乗っている。


「店長、こいつは彼女じゃありません。というよりストーカーなんで出禁にして下さい。」


「ちょっ、センパイなんでアタシがストーカーなんですか?」


「だって最初の時は後をつけようとしてたし昨日は勝手に家に入ってたじゃねえかよ。」


「うーん。付き合ってはないみたいだけど仲は良さそうだね。伊庭くん、今日は暇だしもう上がっていいよ。せっかく友達が来てくれてるんだから一緒に帰っていいよ。」


「いや。そういうわけには…」


「店長さん、やさしー。ありがとうございます。センパイ帰りましょ。」


「ダメだろ。っておい、センパイって呼ぶな。マジで呼ぶな。」


「あっ、すみません。なんかしっくりきちゃって。」


「ほんと気を付けてくれよ。後一時間待っててくれ。」


「伊庭さん、本当に上がっても大丈夫だよ。」


「いえ、仕事は仕事としてちゃんとしたいんで。」


「わかったよ。じゃああと少しよろしくね。」


店長は神崎のほうに行くとなにかを話してから離れて行っき、俺は仕事に戻った。


バイトが終わった俺は神崎と合流した。


「で?どうしたんだ今日は?」


「伊庭さんが大学に来る前に話しといたほうがいいと思ったんで来ました。今日はご飯作る準備してないですからファミレスでも寄りませんか?奢りますよ。」


「マジか?じゃあ行くか。」


二人でチェーン店のファミレスに入り、俺はミックスグリル定食、神崎はチキン南蛮定食を頼んだ。


「だいぶ頬の腫れも引いたみたいですね。」


「ああ、明日から大学に行こうと思ってるよ。」


「そうですか。伊庭さんはもうあの格好をしないんですか?」


「しない。というかその話は家でやろう。誰がに聞かれたくない。」


「そうですね。食べ終わったらお邪魔していいですか?」


「遅くなるから少しだけならな。」


「ありがとうございます。じゃあ早く食べましょ。」


食事を終えアパートに帰って来た俺と神崎は早速話をする。


「伊庭さん、アタシは大学でも仲良くしたいと思ってるんで積極的に話に行きたいんですけどいいですか?迷惑ですか?」


「それは大丈夫だ。今さらお前と距離を置くようなことはしたくない。ただ学祭のときのが俺だとバレるのだけは避けたいんだよな。」


「アタシも考えたんですけどあの人はナンパされただけでどこの誰かは知らないってことでなんとかなると思います。」


「まあ俺がもうあの格好しなければそれまでの話ではあるよな。俺が三女神全員を狙ってるって噂は広がりそうだけどな。」


「実際それに近い状況な気もしますけどね。伊庭さん、イケメンであの度胸と強さは反則ですよ。正直、あの格好で大学に行くようにしたら間違いなく人気No.1ですよ。」


「俺程度の見た目なんてどこにでもに居るだろ?まあ荒事が得意なのは確かだけどな。」


「伊庭さんレベルが居るわけないじゃないですか。ナイフ持った相手に平然と立ち向かって倒すとか異常ですからね。どんな育ち方したんですか?」


「ガキの頃に色々あったんだよ。いつか機会があれば話してやるよ。」


「今、話してくれないんですか?もっと伊庭さんのこと知りたいんですけど。」


「……だからってなんでも話すのも違うだろ。誰だって人に話したくないことの一つや二つあるだろ?」


「……そうですね。なんでも話せる相手なんていませんね。でも伊庭さんとはそんな関係になれたらなって思います。」


「先の事はわからないけどなれたらいいな。もう一時じゃないか。そろそろ帰らないとまずいぞ。送ってくよ。」


「もうこんな時間なんですね。一人で帰れますよ。」


「バカ言うな。こんな時間に女の子一人で帰らせられるか。」


「それはそうかもしれませんが今から送ってもらうのは申し訳ないですよ。」


「俺が勝手に送るだけだから気にするなよ。」


「でも……」


神崎はなにかを考え込んでいるがこればっかりは譲れない。

こんな時間に一人で帰らせるのは俺の矜持が許さない。


「………伊庭さん、今日泊まらせてもらえないですか?」


神崎がとんでもない爆弾を投下してきたのだった。

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