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第三十九話

目が覚めると外が明るかった。

頭痛が酷い。

時間を確認すると月曜日の昼過ぎのようだ。

明け方まで飲んでいたのは覚えているがその後はよくわからない。

完全に二日酔いで頭がクラクラする。

なんとかベッドによじ登るとまた寝ようとするがスマホを見て昨日から全く確認してないことを思い出す。

神崎からのLINEが『連絡して下さい』とか『あれからどうなりました?』などと大量に来ていた。

俺は『頭が痛いからまた後で連絡する』とだけ返信した。

次に彩乃は『ありがと』や『優也くんの秘密は守る』などやはり大量にLINEが来ている。

彩乃にも頭が痛いことを伝えておいた。

鈴音はこれからどうするのか決めたら連絡するように言ってきている。

とりあえず頬の腫れが引くまでは大学に行かないと返し二日酔いで頭が痛いからこのまま寝ることも伝えた。

里佳からは『話がしたい』ときている。

非常に嫌な予感がする。

里佳には一瞬とはいえ素顔を見られたし昨日の揉め事を見ていたとしたら俺だと気付いた可能性がある。

友達が多そうな里佳だからバレたら一気に学内に広まるかもしれない。

話がしたいと言っているのでまだ確信はしてないかもしれないのですぐ周りに話したりはしないと思うのでとりあえず『落ち着いたら連絡する』と返信しておいた。

もう一人、村田さんからも『学祭凄いことになってましたね』ときているがこれはこれはどっちだろう。

村田さんがあの揉め事を見ていたのか、もし見ていたら俺だと気付いたのかわからない。

高校生なのでバレても大学で広まることはないと思うけど知られたくはない。

どっちかわからないから『そうみたいだね』とだけ返しておく。

今度バイトのシフトが同じ時に話してみよう。


なんとかこれだけ返すと頭痛が酷くなってきたのでこのまま寝ることにした。


夕方、目が覚めると異常な光景が目に入った。

まだ頭痛が治まっていないがそれ以上にこの状況が頭を混乱させる。

俺は考えていることは


こんなはずじゃなかったんだ…


この一言だった。

目の前で大学の三女神が言い争いをしている。

俺は寝ていて誰かを家に招いた覚えもなければ、もちろん誰にも鍵を渡したりもしていない。

なんでこの三人がここに居るのかも理解出来ない。


「とにかくこいつのことは私に任せてあなたたちは帰りなさいよ。こいつとは高校からの親友で私が面倒みるのが一番いいのよ。」


「なーにワケわかんないこと言ってるんですかー?伊庭さんは後輩であるアタシが面倒みるんで先輩方はお帰りくださいー!」


「二人ともうるさい。あとは任せて帰るといい。」


「ふん。後輩とか先輩とかが居たら優也がリラックスできないでしょ。こいつのことを一番理解している私がいるからあなたたちは帰りなさいよ。それともホントはこいつのことが好きなのかしら?こいつの彼女だっていうのなら友達の私は大人しく帰るわよ?」


「す、好きなわけないじゃないですか。アタシはいつも世話になりっぱなしだからセンパイに恩返ししたいだけです。先輩方こそセンパイのことが好きなんならアタシは身を引きますよ。」


「な、なに言ってるの?好きとかじゃない。あなたこそ男女で親友なんておかしい。」


「わ、私とこいつはずっと親友でいると約束してるのよ。あなたたちとは年季が違いのよ。」


三人の言い争いはずっと平行線で終わりそうにない。

もう一度言う。


こんなはずじゃなかったんだ…


考えても答えが出ないので話に加わることにした。


「お前らどうやって入ってきたんだよ?」


鈴音が答える。「どうってアパートの前まで来てからLINEしようとしたけどとりあえずドアノブ回してみたら開いてたのよ。二日酔いでしょ?ウコン飲料買ってきたから飲みなさいよ。」


「伊庭さんが頭痛いって言ってたからお粥作ろうと思って材料買ってきたんですよ。二日酔いとは思わなくて。ちょうどお二人とアパートの前で会って一緒に入りました。センパイとの学祭デートが中途半端で終わっちゃいましたし。」


「優也くんにお礼をしたかったけど家知らなかったから中里さんに付いてきたの。頭が痛いみたいだからお薬買ってきた。」


それぞれ俺のことを心配して来てくれたらしい。

それはうれしいが寝ている俺の前で言い争いをするのはどうかと思う。


「心配してくれてありがと。でもただの二日酔いで頭が痛いだけだから帰ってくれ。」


「心配して来てあげたのに帰れってなによ。」


「そーですよ。せっかく来たんですから歓迎して下さい。」


「優也くん、帰れはひどい。」


三人で俺を非難してくる。

なぜか一対三の構図になっている気がする。

言葉では勝てる気がしない。


「今日は来てくれてありがとな。もう三人は知ってるから言うけど大学では今日の俺といつもの俺は別人だと思わせたい。神崎は一緒に学祭回ったからいろいろ聞かれると思うけどどうにかしてくれ。また連絡するから今日はもう寝させてくれ。」


「わかってますよー。とりあえず知らないで通しますけど今度これからのことちゃんと話しましょう。」


「ほんとに眠たそうね。仕方ないわ。帰るけどほんとにこれからどうするか決めないといけないわよ。いずれはバレると思うから。」


「優也くん、お礼はまた今度にするね。今日はゆっくり休んでね。今日の優也くんすごく格好よかったけどバレないためならなんでも協力するからね。」


三人が帰るのを見届けた俺はベッドに横になる。

鈴音の言う通りそのうちバレるかもしれないがその時はその時に考えればいいだろう。

静かになった部屋で俺はゆっくり眠りに落ちていった。

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