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第三十七話

「センパイはお笑いライブとか見たいと思います?」


「いや、全く。あんまりお笑い見ないし今日来てるのの名前も聞いたことないからなぁ。」


「じゃあ行かなくていいですね。グラウンドのほうになにか食べに行きましょ。」


グラウンドのほうの店は比較的食事に近い物を売ってる店が多い。

ちなみに正門近くの店はスイーツやデザートの店が多く、彩乃たちの店もそちらにある。

グラウンドには多くのテーブルとイスが準備されているので食事をしている人も居ればただ休憩している人も居る。

たこ焼きや焼きそばなど学祭の定番メニューを確保した俺と神崎は空いてるテーブルに着くと食事を始める。

やっぱり周りから注目させているが気にしない。


「やっぱり味はこんなもんだよなぁ。」


「センパイ、なにに期待してるんですか?アタシはこの大学の学祭は初めてですけど学祭の屋台なんてこんなもんでしょ。」


「だよなぁ。お前みたいに料理うまいやつも居るから期待しすぎたかもな。」


神崎は「きゅ、急に誉めないで下さいよ」と照れている。


「お前は料理得意って自分で言ってただろ。ホントに旨かったからな。」


「誉めてもなんにも出ませんよー。まあ言ってくれればいつでも作りに行きますけど。」


そんな話をしながら買った食べ物を完食してまた歩くことにした。


「センパイ、スイーツ食べに行きましょー。」


「俺はいらないけど神崎が食べたいなら行くか。」


彩乃たちの屋台もある正門近くの屋台コーナーに来たのだがなにか騒ぎになっている。

人だかりが出来ているので近付いてみるとちょうど彩乃の屋台の前だった。

人を掻き分けて進むと大学生っぽい四人の男が騒ぎを起こしていて相手は彩乃とその友達(たしか彩乃がハルとトモと呼んでた気がする)のようだ。

彩乃はトラブル体質なんだろうか。

いや、あの日本ではほとんど見掛けない銀髪に大学生とは思えない童顔が目立つせいでこういう連中に絡まれるんだろう。


「だから君らのせいで服が汚れたんだからお詫びにちょっと付き合ってよ。」


「私たちのせいじゃないです。わざと落としたでしょ!」


彩乃の友達が反論しているが男たちはへらへら笑っている。

かなり良くない雰囲気だ。

おそらく酒も入っているんだろう、周りの目も気にしていない。

「いいから来いよ」と彩乃の手を掴もうとしたのが見えた瞬間、俺は神崎に「ごめん。遊ぶのはここまでだ」と言って走りだし男と彩乃の間に割り込む。


「なんだ、てめえは。俺たちはこの子らと遊ぶんだから邪魔すんじゃねーよ!」


「嫌がってるのがわからないのか?」


「うるせえよ。カッコつけてんじゃねーよ!」


男が殴りかかってきた。

避けるのは簡単だかわざと食らうことにした。


ドゴッ!


顔面を殴られたが頬で受ければこんな腰の入ってないパンチは大して痛くない。

先に殴らせることで正当防衛が成立したと判断して反撃する。

男の顎を軽く拳で撃ち抜くとあっさり気絶して倒れた。

急所さえ理解していれば相手を気絶させるのは簡単だ。

人は顎を打たれると脳震盪を起こす。

ぼーっとしていた他の男が俺に向かってきた。

男の拳を手で払い体勢を崩すと後ろの首筋に手刀を食らわし気絶させる。

これも脳震盪を起こす定番の手段だ。

次の男は右手に警棒のような物を振りかぶって迫ってきたが振り下ろす前に左手で手首を掴み動きを止める。

体が密着するぐらいに近いので打撃は難しい。

俺は右手で男の首を掴む。

人を気絶させるのに首を絞める必要はない。

人体構造を理解していれば首のどの辺りに頸動脈があるかわかるのでそこを指で数秒押さえるだけで人は簡単に酸欠になり気絶させることが出来る。

数秒押さえるだけならすぐ目覚めるし後遺症なども起こらない。

三人目をそれで気絶させる。

最後の一人を見るとナイフのようなものを手にしている。


「なんなんだよ!てめーは!」


刃物を持った手を前にして突っ込んでくる。

全くもって素人だ。

ああやって刃物を見せればビビると思っているんだろうが俺はその程度ではなんとも思わない。

近付いてから切り付けるならわかるが刃物を付き出して突っ込んで来るとは。

刃物を前蹴りで蹴り飛ばそうかと思ったが飛んだ刃物が周りに居る人に当たる可能性があるので止めた。

相手が同レベルの強さならともかくこの程度のチンピラなら刃物を持って接近されても余裕だろう。

相手の刃物が俺に届く寸前で横に避け手首に上から手刀を叩きつけ刃物を下に落とさせる。

すぐに相手の奥襟を掴み足を払って俯せに引き倒す。


「がっ、いだっ!」


よくわからない声を上げる男の背中にすかさず座り込み体重をかけて動けなくすると素早く腕を取り相手の背中側にひねり関節を決める。

この状態から抜け出すことはまず出来ないだろう。


「てめぇ、話しやがれ!こんなことしてタダですむと思うなよ!」


俺は「黙れ」と言いながら男に殺気を飛ばす。

荒事に慣れると殺気という曖昧なものを操れるようになる。

周りにはわからないように男だけに向けていると顔色が青ざめてきた。

小声で話す。


「こんなとこで暴れるな。暴れたいなら他所に行け。お前の顔は覚えたからな。この大学や俺の知り合いに二度と手を出すな。」


ここでさらに殺気を強めて声のボリュームを下げて男にしか聞こえない声で脅す。


「俺の友達にちょっかいをかけてみろ、お前をこ……」


青ざめていた男の顔が蒼白になり身体から力が抜けた。

もう抵抗してこないだろう。

最後の言葉は周りの人に聞かれていると下手したら俺のほうが脅迫罪で訴えられかねない発言だった。

周りを見ると神崎や彩乃たちはぼーっと呆けたようにこっちを見ている。

急な出来事に状況が飲み込めてないのだろう。

すると野次馬を掻き分けて鈴音が教授数人を連れて駆けつけてきた。

さすが鈴音、どこから見ていたのかはわからないが俺とチンピラの騒ぎを見て冷静に教授を呼びに行ったんだろう。

教授が来てしばらくすると警察が到着した。

誰かが通報したんだろう。

神崎には悪いが今年の俺の学祭はここで終わりのようだ。

読んでいただいた方ありがとうございます。

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