第三十三話
シャワーを浴び終わった俺はパンツを履いたのだが部屋着をベッドに置いたままだったことに気付いた。
さすがにパンツだけで出るのはデリカシーに欠ける。
顔だけ出して神崎に部屋着を取ってもらおう。
ガチャ
「おーい、神崎、ベッドに部屋着……」
「ちょっ……なんで服着てないんですか?」
部屋のほうに声を掛けようとして身を乗り出していたのだが神崎は目の前のキッチンに居た。
料理中だから当たり前なのだが。
この角度だと俺の上半身が丸見えだが下半身は見えてないと思うのでセーフだと思う。
神崎は自分の目を手で覆いつつ「部屋着どこにあるんですか?」と聞いているが指の間から目が覗いている。
ベタなことをする奴だな。
「ベッドの上にあると思うって、お前なに人の身体見てんだよ。」
「み、見てないですよ。伊庭さんがいきなり出てくるからアタシは見せられたんです。被害者です。」
「て言うかいつまで見てんだよ。早く部屋着取ってくれ。」
神崎はベッドに向かい俺の部屋着を持って戻ってきた。
顔を真っ赤にして俺から目を反らして部屋着を渡してくる。
「お前照れてないか?男の上半身ぐらい見る機会あるだろ?」
「ありませんよ。男性の裸とか普通見る機会なんてないじゃないですか。」
「海とかプールで見るだろ?テレビでもパンツ一丁の芸人なんていくらでもいるし。」
「そんな不特定多数の人たちの身体とか気にしませんしテレビと現実じゃ違いますよ。」
神崎は多少落ち着いてきたのか料理を再開しながらこの話を続けるようだ。
俺は部屋着を着ながら「そんなもんなのか?」と聞いたのだが、
「そーですよ。て言うか伊庭さん身体バッキバキじゃないですか。細マッチョって言うんでしょうけどその体型は異常ですよ。絶対体脂肪ゼロでしょ?」
さらに身体の話まで出てきた。
俺の上半身を見て照れていたくせに指の間からちゃっかり体型までチェックしていたらしい。
「知らんけど、まあ鍛えるのは好きだからな。」
「しかもめっちゃイケメンじゃないですか。いつもは眼鏡と前髪で隠してるってことはわかってて隠キャに見せてるってことですよね?」
「こんな顔普通だろ?どこにでも居るような顔だよ。」
「いやいや。それでやっぱり中里さんは伊庭さんの素顔知ってるんですよね?」
「まあそりゃな。長い付き合いだからな。大学で俺の見た目の話はするなよ。」
家に入るのを許してる時点で素の俺を見られるのも時間の問題だったのだ。
せめてこの家だけでの話にして大学では触れないようにさせよう。
「わかりました。このことがバレたら伊庭さんが一気に大学カースト上位になってライバルが増えるのも面白くないですからね。」
聞こえなかったふりをして俺はとりあえずキッチンから離れてローテーブルの前に座るとテレビを付ける。
特に見たい番組もなくなんとなくザッピングしていたが動物の動画番組で落ち着いた。
しばらくボーっと見ていたが神崎の「出来ました」という声が聞こえた。
神崎のほうを見るとニコニコしながら皿を運ぼうとしているので「手伝うよ」と言って立ち上がる。
「ありがとうございます。今日は中華です。酢豚と天津飯にしました。」
「すごいな。短時間でしかもこのキッチンでなんでこんなのが作れるんだよ。」
「そのために色々持ってきましたからね。さあ食べましょう。」
俺はテレビの正面、神崎はキッチンに近い俺の左側に座った。
なんとも食欲をそそる堪らない香りだ。
「「いただきます」」
「うまっ、お前マジで料理うまいよな。しかも掃除まで完璧って女子力高すぎたろ。なにが小悪魔だよ。言った奴、神崎に謝れよ。」
「それをアタシに言わないで下さいよー。女神はともかく小悪魔とか意味わかんないんですから。ちょっと男性との距離感が近いせいで勘違いさせたりしますけどおかしなことはしてないんですよー。」
「それだよ。今回、彩乃の噂って流してる奴らが居るにしても男と遊んでるってことだろ?普段のお前って同じような事やってると思われてるから小悪魔ってことだよな?なんでお前は変な噂流れないの?」
「なんでってアタシに聞かれても。まーアレじゃないですか。遊んでそうな芸人さんが浮気してもやっぱりなって感じで終わるじゃないですか?でも誠実そうな女優さんとかが浮気したら世間から叩かれて仕事なくなるみたいな。」
「なんか釈然としないけどなんとなくわかる気はするな。」
「結局周りのイメージ次第ですよ。」
しばらく神崎の料理を堪能していると「あっ」と神崎が顔を上げ話し出した。
「伊庭さんが癒しの女神様とデートして噂になってる理由はわかりましたけどアタシともデートして下さいよ。二人と噂になってのにアタシだけなってないじゃないですか。」
「いや、俺だって噂になりたくはないんだよ。お前まで加わったら俺そのうち刺されそうじゃね?」
「そこまではないでしょ。噂はともかくアタシともデートして下さい。今週末に。」
「土日は学祭だろ?だから今度な。」
「あっ、じゃあ学祭一緒に回りましょうよ。初日は友達と回る約束してるから日曜日に。」
「なんでだよ。俺がどんどん悪者になるじゃねーか。」
「えー、いいじゃないですかぁ。癒しの女神様とは遊んでアタシと遊べないですか?」
「いや、だから今度って言ったろ?遊ぶのはいいんだよ。お前まで噂に巻き込まれるぞ。」
そこで待てよ、と考える。
神崎と学祭を回るのも悪くないかもしれない。
神崎には眼鏡なしの顔を見られているので俺だとバレない格好になって学祭を一緒に回れば神崎は俺じゃない男と仲が良いと思われるかもしれない。
「神崎、一緒に回ってもいいぞ。」
「えっ?いいんですか?」
「ああ、日曜日の十一時に正門前に待ち合わせな。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
俺だとわからないようにしっかりお洒落して行くことにしよう。
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