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第二十八話

「「いらっしゃいませー!」」


店員数人の大きな声で迎えられた。

やっぱり俺はお洒落で格式高い店よりこういった雑多な感じの店のほうが似合ってると思う。


「何名さまですかー?」


「二人で予約した伊庭です。」


「ご予約の伊庭様ですね。席にご案内致します。こちらへどうぞ。」


店員に案内された席は二人用の小さめの席だった。

土曜日の夜ということで満席に近いぐらいに席が埋まっている。

予約しといてよかった。

さすがにデートで空席待ちはまずいだろう。


「晩ご飯を食べるつもりで来たからアルコール飲まなくてもいいよ。俺がどんな店によく行くのか知ってもらうために来たようなもんだから。」


「優也くんこういうお店によく来るんだね。教えてくれてありがと。強くはないけど少しは飲めるからお酒飲も。」


彩乃はメニュー表を見て考えている。

俺はビールだし食べ物もだいたい覚えているので最初はメニュー表を見なくていい。


「カシスオレンジにする。」


彩乃の言葉を聞いてすぐ店員を呼び飲み物を注文した。


「彩乃はなにか食べたい物あるかな?特別美味しいってことはないけど値段の割に美味しいと思うよ。」


学生にとってコスパというのは重要なのだ。

安くても不味い店には行かないし高い店にはそうそう行けるものでもない。

この店はそのバランスが素晴らしく大学生に人気がある。

実際、周りを見ると大学生っぽい客が多いのがわかる。


「おすすめはなに?彩乃は好き嫌いないから優也くんが選んのでいいよ。」


「じゃあ最初はテキトーに頼むね。俺だと主に肉になるから他に食べたいの見つけたら言ってね。」


そう言って俺は店員を呼び自分の食べたい物と彩乃が好きそうな物を頼んだ。

アルコールを飲みながら出てくる料理を少しずつつまむ。


「たしかに美味しいですね。全体的に味が濃いめだけど。」


「居酒屋だからね。アルコールが進むように濃い味のものが多いんだよ。」


「なるほど。飲み物頼む?」


俺のビールが空近くなったのを見て彩乃が聞いてくる。

俺は「またビールにするよ。」と言って店員に注文した。

彩乃のグラスはまだ半分ぐらい残っているのでおかわりはもうちょっと後だろう。


「優也くん、聞いていい?」


「なに?」


「………あの、中里さんとは付き合ってないの?」


彩乃は緊張した表情で聞いてきた。

そういえばそういう話はしてなかったような気がする。


「付き合ってないよ。鈴音とは親友だからね。正直、そう聞かれることが多過ぎて大学では接しにくいんだけど。一年の頃に俺に彼女がいたことがあるんだけどその時も鈴音とは普通に友達として付き合ってたよ。まあそれが他人から見たら異常なのかもしれないし良いか悪いかはと言われたらよくわからないけどお互いに親友だと思ってる事実は変わらないからね。」


「考え方は人それぞれだけどそんな友達が居るのはいいことだと思う。それに付き合ってないなら安心かな。」


そう言って彩乃は俺を見つめてくる。

雰囲気がさっきまでの彩乃ではなかった。


「優也くん、今は彼女いないんだよね?」顔を寄せてくる彩乃。


「いないよ。あんまり出会いを求めるようなことしてこなかったしね。」


「ふふ、じゃあ彩乃にもチャンスがあるんだね。」


ジッと見つめてくる彩乃。

今回のデートは俺と彩乃が仲が良いとこを周りに見せるためだったからこのままいい雰囲気になってもいいのかもしれない。

しかし付き合ってないのだからダメな気もする。

周りの席にいる客に同じ大学の学生もいるだろうからどうするか悩んでいると、


「優也くん、彩乃はこれからもっと優也くんと仲良くなりたい。」


いつもの彩乃の表情に戻っていた。

いつの間にか彩乃のグラスは空になっていた。

メニュー表を見つめる彩乃は幼顔でお酒が飲める年齢には見えない。

どうやったらここまで雰囲気を変えることが出来るんだろう。

あまりのギャップに俺はなかなか落ち着きを取り戻せなかった。


「梅酒サワーを頼むけど優也くんは何にする?」


「……えっと、…ビールで。」


注文を済ませた彩乃は楽しそうにニコニコしている。

その後は追加で少し料理を頼みいろんな話をした。


「そろそろ帰ろっか。」


「うん。今日はありがと。優也くんとお出掛け出来て嬉しかったし楽しかった。」


「俺も楽しかったよ。また遊ぼうね。」


「うん。」


席を立とうとしたときにレジのほうを見ると五人ぐらいの女性グループが会計を済ませて出ていくところだった。

その中の一人、()()()()()()()()を見て俺は固まった。

俺の知っている女の子と髪の長さも同じぐらいだ。

この後、連絡するつもりの女の子の顔が頭に浮かぶ。

背中を嫌な汗が流れるのを感じる。

もしそうなら見られたかもしれない。


「どうしたの?」


彩乃の言葉で我に返る。

今、考えてどうなるものでもない。

この事は後で考えることにしよう。


「…なんでもないよ。レジ空いたし出よう。」


俺は伝票を持ってレジに向かう。


「彩乃払うよ。」


「今日は俺が誘ったんだしカッコつけさせてよ。」


こう言えば払うとは言ってこないだろうと思っての発言だ。


「次回出掛けた時は彩乃が払うね。」


次回は彩乃に払ってもらうようになりそうだった。

会計も終わり外に出た。

ここから彩乃のマンションまではそれほど距離もないので歩いて帰る。

マンションの前に到着して彩乃がマンションに入るのを見守る。


「優也くん今日はありがと。また遊びたいしうちにご飯食べに来てくれる?」


「もちろんだよ。これからもよろしくね。」


「うん。じゃあおやすみなさい。」


「おやすみ。」


彩乃は何度もこっちを振り返りながらエレベーターに乗り込んだ。

ドアが閉まるのを確認した俺はアパートに向けて歩き出す。

アパートに着いた俺は神崎に連絡するつもりだったのだがさっきの女性が神崎かもしれないと思うと考えが纏まらず結局連絡することが出来なかった。

読んでいただいた方ありがとうございます。

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なるべく多くの方に読んでいただきたいです。

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