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第二十六話

土曜日、今日は彩乃とのデートの日だ。

自分で誘っておきながらあまりお洒落な格好はしない。

グレーのトレーナーに青いジーンズと大学では同じような格好をした男がそこかしこに居る。

彩乃には悪いが隠キャムーブな俺とデートをしてもらう。

今回のデートだが彩乃と遊びに行けるのが普通に楽しみではあるのだがそれ以上に彩乃の嫌な噂をなくしたいという気持ちが強い。

俺自身は大学では地味で隠キャだと思われているだろうが慈愛の女神と言われている鈴音の近くにいつも居る金魚のふんのような男としてある意味有名でもある。

そんな俺が癒しの女神である彩乃と遊んでいればそうとう目立つだろう。

今回はその姿をなるべく多くの同じ大学の学生に見られるようにする。

俺が彩乃を連れ回すように遊んでいれば噂の矛先は俺のほうに向く。

鈴音と仲が良いくせに彩乃にもちょっかいをかける最低な男だと思われるだろう。

彩乃は俺に付き纏われている状態なので他のイケメンたちと遊んだりしているとは思われなくなるはずだ。

噂通りイケメンと遊んでいたら俺のことを相談もせずに放置するはずがない。

そう思わせられれば作戦成功だ。

ちょっと気掛かりはあるのだが…………


待ち合わせは十時だが俺は三十分前に駅で待っている。

彩乃には九時半までは来ないように伝えていた。

銀髪碧眼の幼顔で人形のような彩乃が駅で一人でいたら嫌でも目立つ。

間違いなくナンパ男たちの標的にされるので俺が先に着いておくことにしていた。

そこに彩乃が薄いピンクのニットセーターに白のマキシスカートというお洒落なコーデで現れた。


「お待たせしました。」


「全然待ってないよ。そもそも遅く来てもらったのは俺だからね。今日の服も似合ってて可愛いよ。」


「ありがと。そう言ってもらえて嬉しい。」


「俺はいたってカジュアルでごめんね。」


「いえ。カッコいいよ。」


「ありがと。行こっか。」


駅からすぐの所にある商店街に向かう。

この辺りはいくつか大学があり駅を利用する学生が多いので商店街も洒落たお店が多く土日はけっこう賑わっている。

二人でゆっくりお店を見て回っていたのだがさすが彩乃、同年代の男女からかなり注目されている。

やっぱり彩乃の容姿はそうとう目立つ。

隣を歩くのが眼鏡を掛けた地味で猫背な男なのでそのせいもあるだろう。

気になったアパレルショップに寄ったりしながら歩いていたが昼前になり人気のカフェに入ることにした。


「ここはスイーツが美味しいってハルに聞いたことがおる。」


「あー、彩乃の友達だっけ?」


「ハルとトモは大学でだいたい一緒に居る友達。」


「あの時の二人だね。休みに遊んだりはしないの?」


「大学帰りに遊ぶことはあるけど休みの日は滅多に遊ばない。」


「そうなんだね。」


店内に入り席に案内される。

彩乃はシンプルな苺のショートケーキとカフェラテ、俺はサンドイッチとアメリカンを注文した。


「彩乃はこの後、行きたいとことかある?」


「優也くんと遊べるならどこでも。あっ、一つあった。ゲームセンター行きたい。」


「行ったことないの?」


「トモとハルとはあるけど優也くんとプリクラが撮りたい。」


「いいよ。じゃ行こうか。」


そこに注文品が提供された。

しばらくお互い自分が頼んだ物を食べる。


「ケーキ美味しい。」


「こっちもうまいよ。さすが人気の店だね。」


「優也くん、一口食べてみますか?」


俺は自分の料理から目線を彩乃に向けたのだが彩乃の表情があの挑発的で妖艶なものに変わっていた。


「ふふ、どうぞ。あーん。」


彩乃はケーキを一切フォークに刺し俺の口元に差し出す。

俺が気掛かりに思っていたことだった。

俺に振り回され、連れ回される彩乃で居てほしかった。

それで俺なんかにも強く言えない大人しい女性だと思わせることでイケメンと遊んでる噂をなくし、隠キャのくせに女神二人と仲良くなろうとしてる最低な男という噂を広める。

そうすることで大学内の噂は俺ばっかりになり彩乃の噂ほなくなるという筋書きだった。

しかし彩乃のこの態度を他人に見られると噂通りの女性だと思われる可能性がある。


「食べてくれないんですか?」


とりあえずデートをすることしか考えてなかったがこうなることも予想できたのだ。

そこで違う方法を思い付いた。

この際だから乗っかろう。

彩乃の挑発的な態度に合わせて動き、バカップルのように振る舞う。

本当に付き合ってると思わせれば彩乃の噂はやっぱりなくなるだろう。

俺の噂は[狙ってる]ではなく[二股をしている]になるかもしれないがこの際そこはいいだろう。

鈴音には彩乃と出掛けることを伝えてその後の噂をうまく誘導する手伝いをお願いしてある。

ちょっと方向性が変わったとしてもうまくやってくれるだろう。

他になにか問題がないか考えたが俺の大学でと立ち位置以外に特に問題はなさそうだなと思い差し出されたフォークを口にした。


「うん。美味しいね。」


彩乃は満足そうな表情で俺を見つめている。

これから積極的に仲良しアピールをしようと思ったがその瞬間、一人の女の子の顔が頭に浮かんだ。

このことを神崎はどう思うだろうか。

神崎は本気じゃないとはいえ付き合ってと言おうとしていた。

俺に彼女が居ないと思ってるはずだが今日の事をどこかで聞いたり明日から流れるであろう噂を耳にすればいい気はしないだろう。

夜にでも神崎に連絡して事情を説明するべきだな。

そう心に決めて彩乃とのデートに集中することにした。

読んでいただいた方ありがとうございます。

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なるべく多くの方に読んでいただきたいです。

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