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第二十三話

神崎と歩いて帰ることになった。

さすがに女性が居るのにランニングで帰るわけにはいかないだろう。

神崎はニコニコと嬉しそうに隣を歩いている。


「いやー、こうして普通に伊庭さんのお家に行けるとは思ってもみませんでした。」


「ホントに家までつけてくるつもりだったのか?」


「そうですよ。それぐらいしないと伊庭さん家教えてくれないと思ったんで。」


「そんなつもりはなかったけどな。それで今日はうちに来てどうするつもりなんだ?」


「とりあえず家を知っときたくて来たんですけど伊庭さんはこの後予定とかあるんですか?」


「なんもないよ。」


「じゃあ早速晩ご飯作っていいですか?」


「いいのか?」


「もちろんですよ。アタシが言い出した事ですし。アタシが料理得意だって事わからせてやりますからね。」


「出来ないとは思ってないけどな。じゃあどうする?途中でスーパーにでも寄って食材とか買って帰るか?」


「まずは伊庭さんちに行きましょう。そもそも料理器具とか調味料ってあるんですか?」


「器具は一応あると思うけど調味料はよくわからん。塩とかはあるけど料理にどんなものが要るのかも知らないからな。」


神崎はため息をつきながら「自信満々に言うことじゃないですけどね」と言ってくる。


「伊庭さんちでどんなものがあるのか確認してから買い物に行って作る料理考えますね。お米ってあります?」


「炊飯器はあったと思うけど米はないな。」


「潔いぐらいに料理する気がありませんね。それで一人暮らしとか信じられません。」


再びため息をつかれた。

自分でもわかっている。

一人暮らしをするなら自炊するのが普通だしやろうと思ったことはある。

しかし如何せん面倒なのだ。

買ってきた食材の消費期限とか使いきるためのメニュー選びとか考えないといけないという話を聞いたときに諦めた。

結局思っただけでやったことがないのだ。

そんな話をしていると俺のアパートに到着した。


「そこのアパートの一番奥が俺の部屋だ。」


「へー。かなり古いアパートですね。」


「まあな。住むとこなんて寝るスペースさえあればなんでもいいからな。」


鍵を開けて中に入り、神崎を招き入れる。


「お邪魔しまーす。ふーん、思ったほど汚なくはないですね。いきなり掃除しないといけないかと思ってたんですけど掃除は次回にしますね。」


「次回って、また来るのかよ。」


「たまに来てアタシの女子力をアピールしようかと。ちょっとキッチンと冷蔵庫確認しますね。」


「ああ。」


神崎はキッチン下などを一通り確認して今度は冷蔵庫を開ける。


「調理器具はある程度あるけど冷蔵庫はビールとソースやタレしかないですね。だいたいわかったので買い物行ってきますね。」


「荷物持ちはいいのか?」


「アタシと一種に買い物とかしてたら大学で噂になりますよ。いいんなら一緒に行きますけど?」


「待ってるわ。」


「いきなり買い物とかだと噂が大きくなりそうだから止めときますけど大学で話したりして普通に仲が良いと認識されたら買い物とかも一緒に行きましょうね。じゃ、行ってきまーす。」


神崎は元気に出ていった。

静かになった部屋で考える。

神崎はなんで俺の世話を焼こうとするんだろう。

小悪魔なんて言われてるらしいが男を翻弄するようなタイプじゃなくむしろ健気な女の子のように見える。

これからも付き合いが続くなら神崎の考えてることもわかってくるだろう。


「ただいま帰りました。今日はパスタにしますね。必要な調味料しか買ってませんから。」


「俺は食えればなんでもいいよ。」


「じゃあチャチャっと作りますから寛いどいて下さい。」


「いいのか?」


「はい。ここのキッチン狭いですし邪魔になりますから。」


そう言って料理を始めたがその手際の良さにびっくりした。

料理上手だと初めてのキッチンでも問題ないらしい。


「出来ました。」


神崎が出来たパスタを炬燵に運んできた。

ワンルームなのでダイニングはなくまだ炬燵布団を出していないのでローテーブル状態である。


「じゃーん、きのことツナの塩昆布クリームパスタです。」


「なんでここのキッチンでそんな洒落たパスタが出来るんだよ。」


「材料揃えたら意外と簡単に出来ますよ。食べましょう。ビールも飲みましょう。」


「お前まだ二十歳になってないだろ?ダメだ。」


「えー、真面目ですね。家飲みなら良くないですか?」


「ダメだ。俺の居ない所で飲むのはお前の自由だが俺の前では飲ませないからな。」


「はーい、わかりました。伊庭さんだけでも飲みますか?」


「相手が飲めないのに飲んだりしないよ。じゃあ食べようぜ。」


「「いただきます。」」


「うまい!お前マジで料理うまいんだな。」


俺の言葉にうれしそうに微笑む。


「料理出来るの証明出来て良かったです。」


「ご馳走さま。マジでうまかった。」


「えへへ、また作りに来ていいですか?」


「ああ、こっちからお願いしたいぐらいだ。」


「あっ、一つお願いがあるんですけどお米買っといて下さいよ。アタシが買ってもいいんですけど重たいですし。」


「わかった。片付けは俺がやるよ。」


「いえ、片付けまでが料理ですから。食器を運ぶだけ運んでくれたらいいですよ。」


神崎はそう言って片付けを始める。

至れり尽くせりで申し訳なくなってくる。

今、神崎にわがままを言われたらなんでも聞いてやりたくなる。


「終わりました。伊庭さん漫画好きなんですね。」


部屋にある本棚を見ているが実際ほとんど漫画で埋まっている。


「あそこでバイト始めてからけっこう読むようになって集めてるんだよ。」


「今度、読んでもいいですか?」


「ああ、料理作ってもらったし好きに読んでいいよ。」


「ありがとうございます。今日はそろそろ帰るんで今度読ませてもらいます。」


「そっか。送っていくよ。」


「いえいえ。まだ明るいですし今日は一人で帰ります。暗くなってから帰るときは送ってくれますか?」


「もちろんだ。」


「今日はお邪魔しました。失礼します。」


ペコッと頭を下げてアパートから出ていく。


「ホントありがとな。気を付けて帰れよ。」


神崎が見えなくなるまで見送ってからアパートの中に戻った。

なんであんなに良い女の子が小悪魔なんだろう。



■ ■ ■


伊庭さんのアパートからの帰り道。

アタシは考える。

やっぱり伊庭さんは優しくて隣にいると落ち着く。

下心なく接してくれて安心出来る。

正直、家にまで行ったら下心が見えてくるかもと思っていたんだけど全くそんなことはなく紳士的だった。

アタシは容姿が優れていることを自覚しているし下心を持ってよって来る男が多くてどうにかあしらったりしていたら結果、小悪魔と言われるようになった。

しかし伊庭さんはそんな男たちとは全然違っていた。

もっと伊庭さんを知りたいと思った。

明日から大学で伊庭さんを見つけたら積極的に話しかけて仲良くなると心に決めた。

読んでいただいた方ありがとうございます。

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