第二十二話
「伊庭さん、ストーキングされてますよ。」
日曜日、昼からリサイクルショップのバイトに入っていたのだがそこでバイト仲間で女子高生の村田さんからの一言である。
しばらくは普通に仕事をしていたのだが気付くと柱の影から覗き込むように俺を見ている人物が居て普通に考えたらストーカーに見える。
亜麻色の髪の女性で異常に大きなサングラスを掛けていて怪しさMAXだが間違いなく俺の知っている人物だろう。
俺のバイトは教えてなかったはずだが。
「村田さん、あの人はたぶん俺の友達だから大丈夫だよ。」
「えっ?あんなことする友達とか居ますか?ちゃんと警察に相談したほうがいいですよ。通報しましょうか?」
「いやいや。ホントに友達だからね。ちょっと話してくるね。」
そう言って俺は不審者(?)のほうに近付く。
するとその女性は俺と距離を取るように離れていく。
仕方なく村田さんの近くに戻るとまた柱の影からこっちを見ている。
このままでは店に迷惑が掛かりそうなんである行動を起こすことにした。
「村田さん、ごめんね。ちょっと休憩室に戻るね。」
「えっ?それはいいですけど………」
村田さんは不思議そうにこちらを見ているが俺はそのまま休憩室に入る。
そこで自分のズボンのポケットからスマホを取り出しロックを解除すると神崎とのトークルームを開いた。
『おい、お前はなにをやってるんだ?』
するとすぐに既読が付き返信が来た。
『なんのことですかー?』
どうやらとぼけるつもりらしい。
『そんな変なサングラスで挙動不審なのが居たら営業妨害なんだよ!帰れ!』
『変ってなんですか!?これアタシのお気に入りなんですよ!』
『やっぱりお前じゃないか!なんで俺のバイト先知ってんだよ?』
そこで休憩室に村田さんが入ってきて俺に話しかけてきた。
「伊庭さん、ストーカーさんがスマホで誰かとやり取り始めたんですけどやっぱり伊庭さんとですか?」
「そうだけどストーカーじゃなくて友達だからね。」
「どう見てもストーカーに見えますけど。それよりストーカーさんは伊庭さんの連絡先知ってるのにわたしは教えてもらってませんよ!」
ちょっと不機嫌な表情の村田さん。
「そういえばそうだっけ?後でLINE交換する?」
「はい!後でお願いします!」
コロッと表情を変え笑顔になって休憩室を出ていった。
俺もバイト中なので早く戻らないと。
トークルームに目線戻し神崎からのトークを確認する。
『何人かの二年生に慈愛の女神様に付きまとってる男のバイト先を聞いてみたら知ってる人がいて教えてくれましたよ』
『とにかく挙動不審な態度は止めろ。普通にしてたら多少は話もできるからな。とりあえず仕事に戻る』
送信して休憩室から出る。
仕事に戻ると近くの古本コーナーで上機嫌に本を物色している神崎が居た。
さっきまでのような挙動不審な行動はしてないので俺は気にせず仕事に集中することにした。
しばらくしてお客さんも少なくなったので神崎に話しかける。
「神崎、どうしたんだよ?わざわざ俺のバイト調べてまでここに来るなんて。そもそもさっきの不審者のふりはなんなんだ?」
「不審者のふりなんてしてませんよ。ただ伊庭さんの家教えてもらってないからバイト帰りをつけていって伊庭さんの家を特定しようかと。」
「やっぱりストーカーじゃないか!」
「違いますよー!料理作る約束してるのに伊庭さんがなかなか家を教えてくれないからじゃないですか。教えてくれるまで付きまとってやりますからね。」
「だからストーカーすんな!怖いわ。今日、あと一時間ぐらいでバイト終わるから家まで一緒に帰るか?」
「えっ?いいんですか?じゃあ付いて行きますね。もー、ツンデレなんですからー♪」
急にニコニコしだす神崎に少しだけイラッとした。
「終わったら声掛けるからその辺に居ろよ。」
「はーい。」
その後は仕事に集中してバイト終了の時間になった。
休憩室に入って帰り支度をしていると村田さんが入ってきたので俺はスマホを出しLINEのQRコードを表示する。
「村田さん、お疲れ様。これ俺のLINEだから。」
「あっ、ありがとうございます。」
村田さんは少し頬を赤らめながら嬉しそうにQRコードを読み取る。
連絡先の登録が終わると「じゃあ今度LINEしますね。」と言って村田さんは休憩室を出ていった。
俺も休憩室を出ようとしたら店長が入ってきた。
「伊庭くん、今日もお疲れ様。日曜日にありがとうね。」
「いいえ。今日は友達が店内で変な行動してたみたいですみませんでした。」
「大丈夫だよ。可愛らしい子が伊庭くんをずっと見てたからたぶん伊庭くんのファンなのかなって思ってたからね。それにこういう店って変わったお客様も多いからね。」
「………ファンなんか居ませんから。普通の友達なんでこのまま連れて帰りますね。本当にご迷惑をおかけしました。」
俺は頭を下げてしっかりと謝罪した。
店長は「はははっ、大丈夫だよ。」と言ってくれてあんまり気にしてなさそうだった。
店長にあいさつを済ませた俺は店内を回って神崎を見つけた。
「神崎、終わったから帰るぞ。」
「あ、お疲れ様です。…………あの、勝手にバイト先に押し掛けたの怒ってますか?」
「いや。怒ってないけど不審な行動は止めてくれ。」
「わかりました。伊庭さんが働いてるとき、たまにここに遊びにきてもいいですか?」
「いいぞ。忙しいときは相手出来ないけどな。」
「大丈夫です。働いてる伊庭さん見るのなんか楽しいですから。」
笑顔で言ってくる神崎。
俺を見てなにが楽しいのかわからないがそう言われて悪い気分じゃなかった。
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