第十五話
その後も彩乃に振り回される時間が続いた。
服屋の前で彩乃が「あの服可愛い。ちょっと見ていきましょう。」と言うので寄ることにした。
二着ほど気になる服があったらしく鏡の前で合わせてながら俺に聞いてくる。
「優也くんはどっちが似合うと思いますか?」
「うーん、左のほうは彩乃の可愛さが際立つし、右のはちょっとボーイッシュで意外性があって面白いと思うけどやっぱり彩乃は左のほうかな。」
彩乃は「ちょっと試着してきます。」と顔を赤めながら試着室に入っていった。
可愛いほうの服を着た彩乃が試着室のカーテンを開け俺を呼ぶ。
「優也くん、どうかな?」
「似合ってるよ。」
「ありがとうございます。でも…」と彩乃が俺を試着室に引っ張る。
「優也くんはもっと色気のある服のほうがいいですか?」
とさっき見せたような表情で聞いてきた。
妖艶で俺を挑発するような誘うような表情に俺は返す言葉が見当たらない。
「ふふっ、やっぱり優也くんは可愛いですね。」
彩乃は元の表情に戻ると「着替えますね。」と俺を解放し、着替えた彩乃は試着していた服をレジに持っていき購入した。
彩乃に圧倒されながら夕方までモール内の店を見て回った。
「そろそろ予約の時間だから行きましょう。」
「どんな店を予約したの?」
「個室のレストランです。メニューも豊富だから好きなの頼んで。」
「えっ、そういう店はは高いんじゃない?安い店でいいのに。」
「今日はお礼だから。」
ショッピングモールを後にして彩乃の予約した店に到着した。
「いらっしゃいませ。ご予約ですか?」
「二名で予約した京條です。」
「お席にご案内致します。こちらへどうぞ。」
案内された個室は二人で食事をするにはちょうどいい広さだった。
「こんな高級なお店緊張するよ。彩乃はよく来るの?」
「初めてだよ。お礼だからいい所探した。なんでも好きなの頼んでね。」
「ありがとう。」
俺は高過ぎず安過ぎずの肉料理にして彩乃は魚料理を頼んだ。
「優也くんはお肉が好きなの?」
「特に好き嫌いはないけど外では肉が食べたくなるんだよね。」
「優也くんは一人暮らし?料理はしないの?」
「うん。料理は出来ないから弁当とかで適当に済ませちゃうんだよね。」
「ダメだよ。ちゃんと栄養とか考えないと。」
そんな会話をしていると料理が運ばれてきた。
どちらが頼んだ料理もとても美味しそうだ。
「「いただきます。」」
しばらくお互いの料理を堪能していると「ところで…」と彩乃が話し出した。
「優也くんは中里さんと付き合ってるの?」
「いや、鈴音は友達だよ。彩乃は鈴音を知ってるの?」
「知り合いじゃないけど中里さんは有名だから。」
「あー、慈愛の女神だっけ。あいつが女神って俺には違和感しかないけどね。」
「そんなことが言えるぐらい仲が良いんですね。」
「まぁ鈴音は親友って感じだからね。」
「彩乃も優也くんの友達になりたい。」
「もうこうやって出掛けてるし友達だよね。」
「うれしいな。じゃあ連絡先交換して。」
「そういえばしてなかったね。じゃあ…」
お互いにスマホを出して連絡先を交換した。
「優也くん、これからよろしくね。用がなくても連絡していい?」
「いいよ。」
「ありがと。大学でも友達として話したりしたいんだけどいいかな?」
「いいけど大学ではほどほどにしてほしいかな。あんまり目立ちたくないから。」
「なんで目立ちたくないの?そういえば大学では猫背で大人しそうにしてるみたいだけど。」
「ただでさえ鈴音の彼氏と思われたりするからね。隠キャと思われたほうが噂もされないし楽だからね。」
「ふふっ、でも彩乃とも仲が良いと思われたら目立っちゃいますね。」
そのセリフが気になり彩乃を見るとまた怪しい笑みを浮かべていた。
「大学で優也くんの慌てた顔を見るのも愉しそうですね。」
「勘弁してくれ。」と思うがこの表情になった彩乃には勝てる気がしない。
これからの大学生活が平穏無事にはいかないだろうことは確かだった。
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