第百六話
「古宇利島なんてどうですか?」
「どんなとこなんだ?」
「ここから三十分ぐらいて行けるみたいで橋を渡るんですけど景色も良さそうですよ。」
伊佐の提案を聞いてみんなでスマホで調べてみる。
たしかに近いし観観光するにはちょうどよさそうだ。
「へー、こんなとこがあるのね。あー、ここね。良さそうね。」
「うん。古宇利大橋渡ってみたい。」
全員賛成のようなのでそこに向かうことにした。
ここから海岸線を通れば行けるということで車を走らせる。
「あれも沖縄でよく見ますよねー。」
海の方を見ながら言う伊佐の言葉を聞いて海を見る。
「あー、パラセーリングね。たしかにあれも定番みたいね。あれとスキューバダイビングの二つも候補にはなってたんだけどね。」
「彩乃はスキューバダイビングは怖いかも。」
「アタシは高いところが苦手です。飛行機とかなら大丈夫ですけどあれは怖いです。」
「でしょ?そういう事もあるかと思って今回は止めといたのよね。あんたは平気だろうけど。」
「まあな。ヘリから飛び降りたり海深く潜ったりは昔やってたからな。」
「えっ?優也さん、スカイダイビングやったことあるんですか?」
「スカイダイビングってわけじゃなくて子供の頃に仕事でな。まあ昔の話だけどな。おっ、見えてきたぞ。」
話しているとそれらしい橋が見えてきた。
遠くから見ても絶景だった。
海は鮮やかな青でその上に大きな橋がかかっている。
「きれー。なんなんですかここ、滅茶苦茶綺麗じゃないですかー。」
助手席に座る伊佐が感動の声を上げる。
「ウミカジテラスもそうでしたけどやっぱり沖縄って景色最高ですね。」
「そうだな。」
そのまま車で古宇利大橋をゆっくり渡って古宇利島に入る。
島に入ってすぐのところにあるオーシャンタワーという展望台に登ってみた。
古宇利大橋と綺麗な海が一望出来て圧巻の景色だ。
「予定にはなかったけど凄いわね。」
「だな。」
彩乃と伊佐は他の方向を眺めていて俺の近くには鈴音しか居ない。
「ねえ、今日の夜中にあんたの部屋に行っていい?話したい個とがあるんだけど。」
「いいよ。あの二人が寝た後にか?」
「状況によるけどたぶんね。」
「わかったよ。」
それだけ話して鈴音は俺から離れていった。
入れ替わるように伊佐が近付いてくる。
「四人でも楽しいですけどカップルで来たら最高じゃないですか?」
「だろうな。」
「さっき調べたんですけどこの島は恋島とも言われててハートロックっていう岩が見える砂浜があるらしいんですよ。」
「今からそこに行くのか?」
「いえ、そこはカップルとか夫婦で行くならともかく四人で行くのは微妙じゃないですか?」
「……俺が変な目で見られそうではあるな。」
「女三人と優也さん一人ですからね。だからそこは今回は止めといた方がいいかなと。いつか優也さんと二人で行きたいと思ってます。」
「…………」
「ちょっとぉ嫌そうな顔しないで下さいよー。」
「してないだろ?ちょっとびっくりしただけだ。」
「なんでびっくりするんですか?」
「……いや……なんでもないよ。」
鈴音と彩乃とも話して四人でハートロックを見に行くのは止めておくことにした。
オーシャンタワーから降りた俺たちは近くのビーチに歩いてみた。
多くの人が泳いだり俺たちのように観光している人がいて人気スポットだとわかる。
上から見てわかっていたが近くで見ても凄い透明度の高い海で水着を持ってきておけばよかった。
「ほんと沖縄の海ってなんでこんなに綺麗なのかしらね?」
「ですよねー。都会じゃありえないですもんね。」
「同じ海なのにな。」
古宇利島を堪能した俺たちはスマホで調べて近くに海鮮料理と沖縄料理がある店を見つけたのでその店で晩ご飯を食べることにした。
着いた店は昔からあるらしく古びた建物だが味は旨い地元で評判の店らしい。
観光客よりは地元の人がよく行くような店らしく味は確からしい。
入ってみると調べた通り新鮮な魚介を使った料理とゴーヤや豚足などを使った沖縄料理がメニューに並んでいる。
「俺は海鮮丼にするかな。」
「彩乃もそれにする。」
「私は刺身定食にしようかしら。」
「アタシはウニ丼にしますね。」
「誰も沖縄料理頼まないのか?」
「二つぐらい頼んでみんなで食べない?」
「それいいですねー。そうしましょ。」
出てきた料理を食べたがどれも旨くて満足した俺たちはホテルに帰ることにした。
車を走らせているとちょうど日が沈む時間で空を真っ赤に染めた太陽が水平線の向こうに沈もうとしていた。
思わず車を停めて夕日を眺めることにした。
「これはまた凄いわね。」
「東京じゃこの景色は見れないからな。」
「凄いね。彩乃こんな凄い景色初めて。」
「こんな素敵な旅行も明日で終わりなんですね。」
伊佐の言う通りこの旅行ももうすぐ終わりだ。
俺にとっては友達との旅行なんて初めてだった。
自分の気持ちを確かめるつもりという目的も忘れてしまうほど楽しかった。
なるべく他人と距離を置いてきた俺がこの三人と出会うことで変わったと思う。
俺を変えてくれた三人には感謝しかない。
そう思いながら再び車を走らせてホテルに帰った。




