靴擦れ
草木も眠る丑三つ時。
静かに流れる川の音。刹那に瞬き漂う萌黄色。
土をジャリッと踏みしめる音、石のコロコロ転がる音。
さやさや揺れる草の音。
空を見ればまあるい月が優しく微笑みかけている。
風の吹くまま彷徨いながら、川の流れに逆らいながら。
痛む足を引きずりながら、遠くを目指し続けながら。
夢と希望と理想を抱いて、心の休まる楽園を描いて。
時には岩に腰をかけ、時には木を背もたれにして。
ちょっとずつでも、休みながらでも、希望を目指して歩くのです。
雨に打たれながらでも、雪に足をとられながらも。
踏みしめてきた足跡は決して消えたりしないのです。
だから前へと進めます。
誰にも見られていなくたって、誰からも認めてもらえなくたって、あなただけは見ています。
あなたの積み重ねてきた道を。
あなたの足のその痛みも皮の硬さも。
その傷も苦しみさえも。
あなただけのものなのです。
誰にも理解しきれません。
他の誰のものでもありません。
あなただけが知っています。
あなただけが持っています。
あなただけの大切な。あなただけの特別な。
輝くような心の源。
埋もれて比べられて見失いがちな。
あなただけの心の音色。
あなたらしく輝いて、あなたらしく彩られる。
歩いてきた道がモノクロでも、これから鮮やかに飾ればいいのさ。
景色は移り変われども、月は変わらず見守っているよ。