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お味噌汁の思い出

作者: みりほい

 味噌汁から立ち上る湯気が鼻をくすぐる。

 

 いい匂いだ。お袋が死んでから何度かお袋の味を思い出しながら味噌汁を作ることがある。

 今日はそんな気分になったので作っている。

 

 でも、残念ながらまだ1度もお袋の味を再現できたことが無い。お袋は普通の主婦だったし、特別な事をしているとは思えないんだけど。

 今日は出汁に使うかつお節の産地を変えてみた。

 

 ……


 ぐつぐつと煮えたお湯に削りたてのかつお節を入れる。

 そしてそこからから出汁が染み出すのをじっくりと待つ。

 かつお節を掬い出し、ワカメと豆腐を入れて火を止める。

 

 味噌は実家で使っていたものと同じものを取り寄せている。

 そして味噌を溶き入れ、一度火を入れて煮立つ直前に止めた。

 

 今日の朝食はワカメと豆腐の味噌汁、それから熱々のご飯と焼き鮭に卵焼きだ。そこにひじき煮も添えてある。

 これをパジャマのままの彼女が座って待つ食卓に届ける。

 

「すごい。旅館の朝食みたい。美味しそう。」と彼女は大げさに喜んでくれた。

 

 俺はそんなことは無いと否定した。

 

「あ、美味しい、このお味噌汁。お出汁かしら?お味噌かしら?」

 

 俺は今日のポイントは出汁かなと答えた。

 

 俺も味噌汁は美味しいと思うのだが、これはお袋の味ではない。俺には何が違うのか、近いのか遠いのかもよく分からない。

 ただ今日もお袋の味に再会する事はできなかった。

 

 ……

 

 食事を終え、俺は食器を洗っている。

 

 後ろを振り向くと美味しそうに食後のお茶を飲んでいる彼女がいる。

 目が合うとにっこりとほほ笑んでくれた。


 なんかお袋の気持ちは分かった気がする。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お味噌汁をつくる過程の描写がシンプルだけど、絶対美味しいのができると感じました。 旅館で出るような朝ごはんを作ってくれる彼がいる彼女がうらやましいです。
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