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短編

献身的な少女は燃えカスになるのを待っている

作者: 夕鈴

「本当は嫌だったんだよ。でも仕方なく、反逆は斬首に連座。決めたのは僕じゃない。それなのに」

「お疲れ様でした。嫌われてませんよ。どうぞ、お休みください」


アナスタシアは膝を抱えて丸くなっている男の肩を労わるように叩く。どうしてこうなったと心の中で思いながらも目の前の大柄な男に何も感じない。すでに燃え尽き症候群で生きる気力もないアナスタシアは時が過ぎ命が尽きるのを待っている。



エメラルド王国王太子妃アナスタシアはルビー皇国に停戦の条約を結ぶために来たはずだった。お互いに武器の持ち込みはしないという約束のもと皇帝と二人での対談が許された。

洋服に何か仕込まれていないか確認のために全裸にされ、体のラインがわかるほど薄い服に着替えさせられ、心を落ち着けて足を踏み入れる。部屋に入るとアナスタシアと同じく薄着の皇帝が椅子から立ち上がり、アナスタシアの手を引いてソファまで導く。対面ではなく隣に座る、距離の近さにアナスタシアは驚きながら笑みを浮かべて取り繕う。

パタンと扉が閉まり二人っきり。


「ルビー皇国の流儀は知ってるんだけど」


モジモジと恥ずかしそうに話す皇帝にアナスタシアは戸惑い笑顔が一瞬固まる。

エメラルド王国とルビー皇国との戦中に隣国のサファイア王国も戦準備をしていると情報が入った。両国とは五分五分だがサファイア王国と戦う余力はない。サファイア王国とエメラルド王国の両王子は仲が悪く、戦に負ければエメラルド王国は火の海に。

そのため、多少不利な条件でもルビー皇国と停戦を結び、エメラルド王国はサファイア王国との戦に集中したい。そして王太子と国王に交渉よろしく!!と送り出されたのはアナスタシアである。ありえない人選でも王族で一番動きやすい立場にいるのはアナスタシアだった。

正直ルビー皇国の兵をたくさん傷つけたのに、ノコノコと現れたアナスタシアを斬らずに皇帝と二人での謁見を許すルビー皇国にも驚いている。逆の立場なら百歩譲って護衛騎士を動員して謁見する。


「僕はお互いを知ってからのほうがいいと思うんだ。世継ぎは急がなくてもいいから、僕はお嫁さんを大事にしたいから。朝一緒に起きて、食事を食べて、できれば、これはまだ先――」


アナスタシアは停戦の申し入れに来た。皇帝とは初対面であるが、冷酷で残虐な皇帝と聞いていた。人違い?と理想のお嫁さんとの結婚生活を語る大柄な男になんと声を掛けようか迷っていた。


「僕、大事にするから、だから嫌いにならないで」


アナスタシアはモジモジと、視線を彷徨わせる男の言葉が止まった瞬間を見逃させず、口を開く。


「恐れながら発言をお許しいただけますか」

「もちろん。ごめんね。僕ばかり話して」

「ありがとうございます。私はエメラルド王国王太子妃アナスタシアと申します。本日は停戦について皇帝陛下とお約束が」

「僕はお嫁さんの母国が逆らわないなら攻め滅ぼしたりしないよ。僕の名前は長いから覚えなくていいからオルトって呼んでほしい。これはまだ早い―」


ルビー皇国で長い名前を持つのはたった一人。アナスタシアは理想の夫婦生活を聞きながら、また間ができたので口を挟む。


「恐れながら皇帝陛下ですか?」

「17代ルビー皇国皇帝は僕のことだよ。父上達は幽閉してある」


サラリと言われた言葉にアナスタシアは驚きを隠して、男の表情を見落とさないようにじっと観察しながら平静を装う。


「僕はお嫁さんには隠し事しないって決めてるんだ。僕の顔を見て怯えないなんて運命かな。こんなに人と話すのは久しぶりだ」


はにかんだ笑みを浮かべる大柄な男の言葉はアナスタシアの予想外のことばかり。間諜を放っても隙のないルビー皇国の情報掴めず苦労していた。皇帝の名前を調べるのが精一杯だった。


「お嫁さん?」

「停戦の申し入れに僕達に服従する証に妃を、王家で一番大事にしている妃を」


アナスタシアはありえない話に頭を下げた。上位にいるのはルビー皇国。望まない皇帝に既婚の者を押し付けるなど…。


「王太子妃を下賜って失礼すぎますわ。申しわけありません。お望みでしたら我が国の未婚の令嬢か姫君を」

「頭を上げてよ。エメラルド王国からの申し出だよ。僕は国境沿いの鉱山と水路をうちの国のものと認めてもらえればよかったんだ。でもそれだけだと申し訳ないって服従の証」


服従?鉱山?

アナスタシアはサラリと言われる言葉に戸惑いしかない。

そしてアナスタシアは王太子妃になってまだ二週間であり白い結婚。魔導士兼参謀として戦場を飛び回っているアナスタシアに子供ができたら困るからと王子の配慮で。

王子が大事にしているのはアナスタシアではなく妹姫。突然、早まった婚姻に最後に会った時の宰相の心配そうな顔は・・・。


「皇帝陛下、申し訳ありません。私は人質の価値はありません」

「難しい話は大臣達がするよ。皇帝陛下はやめてよ。オルトがいいな。僕はお嫁さんと―」


アナスタシアは嫌な予感しかしない。

自分の持っている情報と違いすぎる。停戦が叶うならどんなことでも受け入れると言ったのは王の戯言だと思っていた自分の間違いだと気付いた。あれはアナスタシアに対する忠告だ。ちょっと抜けてるけど優しい夫が好きだった。

戦時中だからと二人だけで庭園でひそかに挙げた婚儀はアナスタシアにとっては幸せな記憶。


皇帝の服装を見てアナスタシアはようやく気付いた。着せられてるのは夜着。そして室内には大きなベッド。

母国のための役回りを理解したアナスタシアは覚悟を決めた。

アナスタシアは王太子妃。国のために全てを捧げ、怖くても立ち向かう。騙し合いが得意な幸せな結婚をした友人はアナスタシアの選択を知れば怒るだろう。アナスタシアは友人のようには生きられない。

初陣の日に妹姫が熱を出し、王太子と離れたくないという我儘のために初陣の代役を務め初めて人を殺し戦場を走った時も。妹姫に付きそう王太子の代わりに軍を指揮した時も。どんな時でも震えを隠して立ち上がってきた。国のために兵に命を捧げさせた自分ができないなんて言えない。

アナスタシアは気付きたくない事実に蓋をして笑みを浮かべる。いつか帰ることを夢見て。

人質としての役割を。皇帝の機嫌を取って停戦を結び、数多の命を救うためにと心を殺して礼をする。


「オルト様、よろしくお願いします。道具を貸していただければお茶を淹れますわ」

「本当か!?」

「はい。貴方様のお望み通りに」


アナスタシアは常に笑みを浮かべオルトの要望を聞きながら、できるだけ叶える努力をした。ベッドを共にしてもオルトは決して手を出さない。ただ隣で眠り言葉をかわし挨拶するだけで常に嬉しそうである。

護衛も全て母国に帰させ、アナスタシアは一人ぼっち。食材や着替え、必要なものは全て与えられた部屋に用意されている。アナスタシアは警戒されないように部屋から出ない。オルトを呼ぶための呼び鈴を預けられているが使ったことはない。オルトは公務以外の時間は常にアナスタシアの傍で落ち込んだり、笑ったり忙しそうに過ごしている。そして人質のアナスタシアがオルトを呼ぶことはない。


ルビー皇国の兵は引き、停戦したとしても誰にも暗殺されないことを不思議に思いながらアナスタシアは過ごしている。

一人になると考えたくないことが頭をよぎる。そしてアナスタシアの予想は当たる。

アナスタシアがルビー皇国を訪問し一月経つと、エメラルド王国が攻めてきた。人の命を奪えない優しい王太子は軍の指揮を取れないので捕まっても驚かない。ずっと戦場を駆け巡ったのはアナスタシア。常に苦手を補い寄り添い、一緒に帝王学の授業を受けてきたのも。

オルトからエメラルド王国から攻めてきたと言われた時はアナスタシアはすぐに自分が殺されると思ったが殺されなかった。

捕らえた王族の皇帝への謁見に同席したいと願うと快く許され拍子抜けした。


そして謁見の間、目の前の惨状にずっと堪えていたものが溢れ出した。

アナスタシアの知らない冷酷な顔で玉座に座るオルトなんて気にならない。捕らえられたらアナスタシアの妹のお腹は大きい。そして相手、手を繋いでいるのは…。

アナスタシアは縄で縛られ立っている二人の横に立ち、膝を降り床に額をつけて懇願する。


「皇帝陛下、民への慈悲を。私の首はもちろん落としてください。どうか民だけはお許しください」

「お姉様!!助けてください!!」


アナスタシアは大事な妹の裏切りよりもバカで愚かすぎる行動に呆れる。頭を下げずに、甘えた声を出す立場のわかっていない愚妹に額を床に付けたまま冷たく言う。


「お黙りなさい。停戦を結んだのに攻めたのは道理に反します。敗戦国にできるのは慈悲を願うことだけ。どうしてバカなことを。皇帝陛下、どうか民達に」

「アニー、君なら」


同じく甘えた声の王太子に震える拳を握る。呆れすぎて傷ついた心も泣きたくなるのを我慢して、冷たく言い捨てる。


「バカをおっしゃらないで。どれだけ無駄な血が流れたと思ってますの」

「君は私を愛していただろう?」


アナスタシアの心がどんどん砕けていく。それでも王太子妃としての立場だけがアナスタシアの感情を心を落ちつかせる。


「国民を愛しておりましたわ。ご自分の、いえもういいですわ。貴方にできるのは頭を床につけて慈悲を乞うこと。最後の務めを果たしてくださいませ。王族として」

「いつだって君はどんなことだって」


アナスタシアはこれ以上、王家が生き恥をさらし、ルビー皇国の怒りを買うのは避けたい。覚悟を決めて、頭を上げて愛した人に手をかざすとシュっという音と息の呑む音に目の前に首が落ちる。

オルトが玉座から立ち上がり、王太子とアナスタシアの妹の首を落としていた。首が落ちた瞬間に二人の姿が平民に変わり、アナスタシアは真っ青な顔になり絶望する。王家として誇りもなく身代わりを使って逃げた二人を。

王太子の得意な身代わりと妹姫の得意な魂を乗せて人を操る魔法。

アナスタシアは再び額を床につけて、自分も首を落とされるのを待つとオルトに担ぎ上げられ、離宮に運ばれる。


「皇帝陛下、申しわけありません。どうか御慈悲を」

「僕はこんなことしたくないのに。君はあの男を…。アニーってなに?君も僕を嫌うんだ」


冷血な皇帝の本性は弱虫な男。アナスタシアの首よりも民の安全である。落ち込んでいるオルトにアナスタシアはいつも通り言葉を掛ける。


「嫌いになったりしませんから。私が首を落とすつもりでしたので」

「君は僕に首を落とせって」

「敵国の女で、しかも王太子妃です。それに私はこの国の兵を殺しました」

「君は僕のお嫁さんなのに。僕は皆に嫌われて」

「皇帝陛下」

「名前も呼びたくないなんて」

「オルト様、落ち着いてくださいませ。嫌われておりませんよ」


アナスタシアはオルトを二重人格と思っている。そしてオルトの話を聞くとルビー皇国の全ての者に皇帝は怖がられている。ルビー皇国の法は厳しく、盗みでさえも死刑。オルトはすぐに法に従う行動をとる。疑いだけで自ら首を落とすのにそこに心がついていかない。そして物騒なことをサラリと言う癖も中々周囲を怯えさせるだろうと予想している。いつも通りオルトを優しく慰め、泣きそうな顔でなくなったので、いつも通りの言葉をかける。


「オルト様、お仕事に戻りましょう」

「生きて待ってる?」

「はい。今日も起きてお待ちしてます」

「行ってくる。食事を」

「かしこまりました。ご用意してお待ちしてます」

「料理上手なお嫁さんの」


嬉しそうに笑って理想の生活を呟きながら出ていく悪い皇帝ではないオルトをアナスタシアは笑顔で見送る。

決して自分を曲げずに妥協せずに進む。そして躊躇いなく自分の手を汚すところは夫とは正反対。

もともとルビー皇国に手を出したのはエメラルド王国。

オルトは逆らわない者には手を出さない。ただし厳つい顔と断罪が目に焼き付くので印象は悪い。

オルトに怯えて妃もいないらしい。ある意味王族らしくない融通の利かない男。

アナスタシアはオルトの慈悲で生かされている。皇帝としては優秀なのに色々と問題ある男を見ながら今日も時を過ごす。エメラルド王国の国民のために。

しばらくして母国はルビー王国の属国になり王族は行方不明。

民さえ無事ならそれでいい。アナスタシアはオルトの部屋でただ無為に時を過ごしながら情けない皇帝を慰める。


「僕は、嫌だったのに。皆が――」

「お疲れ様でした」


オルトはアナスタシアをお嫁さんと言うが皇后が見つかるまでの遊びと思っている。自分勝手に逃げ回っている夫に恋心をズタボロにされたアナスタシアは元王太子からの密書を開けずに炎で燃やす。オルトを暗殺するつもりはなく、世捨て人として死が迎えにくるのを待ち続ける。

ルビー皇国に吸収されてもエメラルド王国民は奴隷にされることなく暮らしている。それがわかれば十分である。自分を人質にして妹を王太子妃にした実家と貴族達にはなにも思わない。

王太子のため、王家のため、民のため全てを耐えてきたアナスタシアの心はすでに折れていた。アナスタシアだって婚約者の背中に守られ大事にされる普通の令嬢に憧れていた。それは王太子の婚約者には叶わないものだった。友人のように頼りになる婚約者もいない。


「これを」


渡された花を受け取り視線を合わせて微笑むとオルトは嬉しそうに笑う。アナスタシアはオルトの過去も今も知らない。ただ求められるものを差し出す。相手の望むものを差し出すのは得意だった。昔から王族のためにしてきたこと。

おバカでも民のためにと一生懸命だった大好きな婚約者であり夫になった人はもういない。民を捨て、最期の責任も果たさなかった王族へは失望しかない。アナスタシアを妹姫の代わりに人質に送っても最期まで国のためにあり続けた夫のためなら耐えられた。生きて帰れなくても魂が肉体から離れた時に還れればと。

アナスタシアの心は何も感じたくない。嘘でも与えられた優しさが、抱き合った温もりは愛しいものだった。それはまやかしと気づいてしまった。

全てを終わらせ楽になりたい気持ちを持ちながら、可哀想な皇帝に付き合いぼんやりと時を過ごす。

自分が死ねば一人ぼっちで膝を抱える大男が泣くのかと思うと躊躇われた。労わるように肩に手を置き落ち込む男に声を掛ける。民を思う優しさや抱える弱さもいずれわかってくれる人が現れるまでは付き合ってもいいかとぼんやりしながら。


「僕の瞳が怖くないの?」

「人の心以上に怖いものはありません。真っ赤な赤い瞳。強さの証。きっといずれわかってもらえます」


エメラルド王国民のことしか関心のない生きる気力のないアナスタシアは現実を知らない。変化も気付かない。肩に置いた手の上に重ねられるようになった手も。

自分に向けられる顔が変わっていることも。

冷酷な皇帝に執着されていることも陰で皇后と囁かれていることも。

情けない皇帝を慰めながら花びらを数える抜け殻のような少女。

愛した男に裏切られ、母国に捨てられたと思っている少女は本当は愛されていた。

姿を消したアナスタシアは民達は浚われたと、王太子も停戦の交渉に行き帰ってこないので捕えられていると。

兄を愛する妹姫にとって兄の愛するアナスタシアが邪魔だった。自分を溺愛する両親に泣きながら頼み、宰相の提案する人質役を代わってもらえるように仕組み、王家の名前で密書を送り取引をした。

そして兄の愛を奪ったアナスタシアへの復讐を始めた。

王子とアナスタシアの妹の身代わりを用意させルビー皇国に捕えさせる。アナスタシアは最愛の王子と妹の関係を誤解する。いつも冷静な顔をするアナスタシアの動揺を見た妹姫は自室で高笑いを繰り広げていた。


「アニー、絶対に助けるから」

「お兄様!!」

「ここも駄目か。大丈夫だよ。国はいずれ取り戻す。たとえアイツに頭を下げても」

「義姉様は」

「生きてさえいてくれればいい。そしたら私が…。怖い思いをしていないといいけどアニーなら。手紙が届けられるから生きているはずだ」

「お兄様、怖い」


強がりなアナスタシアしか知らない王子は気付かない。全ては手遅れ。

迎えに行くという言葉は目に入らずに燃やされる。アナスタシアは王太子妃であり自分も民も捨てて逃げた王族に向けられる心はなかった。

妹姫は最愛の兄に甘えながら逃亡生活を始める。そして援助と引き換えに自分が娶られる現実が待っているとは気づかない。

一番現実を見えているのはオルトだった。


「皇帝陛下、よろしいのですか?」

「侵入者は斬れ。誰であろうとも」

「かしこましました。そういえば」

「好きにしろ。うまくやれ」

「皇后陛下の憂いは晴らしましょう。その代わりお世継」

「先の話だ。今は」

「女神がいないエメラルドもサファイアを打ち破るのは容易い。そして皇后陛下の存在はアメジストの悪魔の抑止力にも」

「戦場に出すつもりはない」

「申しわけありません」


皇帝が傍に置く美しい少女。

エメラルド王国出身のエメラルドグリーンの髪を持つ杖を片手に戦場を駆け巡った少女。

彼女の師はアメジスト王国の悪魔と言われる魔導士。

優秀な魔法の腕を持ち、宰相顔負けの策を練る。

魔法の発展が遅れているルビー皇国には喉から手が出るほど欲しい逸材。未婚の令嬢や美しいだけの姫よりよほど魅力的だった。敵としては脅威だが味方に引き入れれば勝利の女神。

エメラルド王国よりも他国の方が少女の価値を理解していた。

劣勢の中、誰よりも幼い少女が心の折れた兵達を鼓舞して立ち上がらせ、決して国境を破らせなかった。戦いの後は敵味方関係なく鎮魂の儀を執り行い、両兵の死に涙を流し、冥福を祈る姿は多くの者を魅了した。この美しい人のために命を捧げたいと思わせるほど。敵であっても。

厳つい皇帝に動じない度胸も、情けない姿に引かずに優しく労る姿は皇帝の心を射止めた。計算高い大人達は根は善良な少女が放っておけない甘さを利用する。

抜け殻になった少女が立ち上がるかは誰にもわからない。それでも、宰相は人間不信の皇帝に策を授ける。少女が立ち直り国のために歩んでくれるためには心を掴まなければいけなかった。勝利の女神の加護があればさらなる発展が見込まれた。皇帝は世話をやかれるフリをして少女に生きるための栄養を与える。

アナスタシアの努力は評価されている。ただしそれが本人にとって幸せかどうかはわからない。

燃え尽き症候群のアナスタシアは燃えカスが飛んでいくのを待っている。その燃えカスを利用しようとしている存在に気づかずに。

読んでいただきありがとうございます。


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