そもそものはじまり
セクばんにゃ!
第1話投稿します。
「……ごめんお姉ちゃんもう一回言ってくれる?」
『だから先月離婚したの。親権はコッチが奪い取ったけど』
「マジかー」
大学受験もとい合格発表を終え、後は残り1か月ちょっとの高校生活を惰性で過ごしていたある日のことである。
9年間という長いのか短いのかよくわからない結婚生活を終了させた我が姉からの一報であった。
「え、僕何も聞いてないんだけど」
『親父にもオカンにも言ってないからね。アンタから伝えといてくれる?』
「……え、僕が?」
『そーそー。日曜夕方の大喜利番組みたいに面白おかしく伝えといて』
「悪いけど僕には黄色レベルのボケしかできないよ」
いや木久ちゃんのダジャレ好きなんだけどね。
ちなみに一番は楽さんと歌さんのブラックネタだ。
歌さん本当にお疲れ様でした。
「それで僕にわざわざ連絡してきたのはその報告?」
『ん、それもだけどアンタにお願いあんのよ』
「お願い?」
なんだろうか。
もしや離婚して欲求不満の姉とピーでピーなことをするとか……。
『アンタ、ウチに引っ越しなさい』
ああ、よかった。
そうだよね、現実でそんなアニマルビデオな展開有るわけないよね。
そうそう、お姉ちゃんの家に引っ越すと……。
「……ぱーどん?」
『Pardonよ。アンタよくそれで英語テスト受かったわね』
「ごめん今お姉ちゃんの英語講座聞いている余裕ない。どういうこと?」
『娘の世話があるからって無理やりスケジュール調整したんだけど明日には撮影で京都に行かなきゃいけないのよね』
「マネージャーさん可哀想に‥‥」
お姉ちゃんはこんな性格だが女優をやっている。
しかも端役ではなくメインキャストがほとんどの超人気女優である。
正直最初離婚で驚いたのは1ヶ月も世間はおろかマスコミすらそのことを知らないっていうのもある。
『でも娘はまだ小学生。セキュリティしっかりしたマンションとはいえ一人でいさせるのは心配だから』
「……僕に白羽の矢を立てたと」
『偶然だけどアンタの通う大学と近いじゃない?実家から通うより時間的にも経済的にもいいでしょ。家賃は食費とか光熱費だけでいいし』
「ふむ……」
どっちにしろ実家は出るつもりだったが、一人暮らししたら家賃だけで月数万かかるだろう。
それに比べたら食費・光熱費程度なら大した負担じゃない。
まあ彼女ができたりしたら家に連れ込めないから困りそうだが、そんな皮算用はひとまず置いておく。
「わかった。お姉ちゃんの家に世話になるよ」
『ん、そういうと思った。明日は土曜だし荷物はアンタの私物程度で大丈夫だから来なさい』
「い、いきなり明日!?」
『善は急げ、よ。明日なら娘もいるし色々教えるように言っておくから』
「……はいはい」
それじゃあね、と電話が切れる。
我が姉ながら何とも傍若無人である。
「やれやれ……」
思わずラノベ主人公のようなため息が零れる。
それどころか明日からは姪っ子と同居というラノベどころかR―18同人的展開である。
……というか姪っ子は僕が一緒に暮らすことに同意しているのだろうか。
「ここ……だよね?」
実家からバイクで移動すること2時間弱。
メールで教えられた住所についたのだが。
「……でっか」
市の都市部という好立地で目の前のマンションは群を抜く超高層マンションだった。
階段を登ろうものならオト○帝国ごっこができそうである。
あれマジ神映画。
エントランスのオートロックで部屋番号を押す。
数秒ベルの音が鳴り、声が聞こえた。
『はい、初島です』
幼い、それでいてしっかりとした声だ。
ゴホンと咳ばらいをして。
「は、は、はじゅめまして!?」
……よし死のう。
オートロックに緊張して噛むヤツなんか自動ドアに挟まれて死ねばいいんだ。
『あのぅ……?』
「うんちょっと待ってて。今から入り口の自動ドアに首挟んでくるから」
『なぜです!?』
自動ドアはそういう使い方をするのではないと管理人のおじさんに軽く叱られ、オートロックの機械の前に戻る。
「ごめんなさい、ちょっと取り乱しました」
『……取り乱して自動ドアに首を挟みに行く人初めて見たです』
大丈夫、僕も僕以外見たことないから。
「今日からお世話になる笠原冬葉です。免許証か何か証拠見せようか?」
「いえ、お母さんから話は聞いてますから大丈夫です。入ってください」
すると奥の自動ドアが開いた。
恐らくさっきの彼女が開けてくれたのだろう。
不審そうに僕を見る管理人さんに『どうも』と挨拶しつつエレベーターへ。
最上階の部屋に向かう。
「あ、これダメなヤツだ」
明かり取りであろう窓から最上階の景色を見てわかる。
ぶっちゃけ僕は高いところが嫌いだ。
ジェットコースターやフリーフォールは大丈夫なんだけど吊り橋や歩道橋、そして外の景色といったヤツは大の苦手である。
これは高所恐怖症というやつなのかは医者じゃないからわからないけどとにかくダメなものはダメだ。
なるべく景色が視界に入らない様にインターフォンを押す。
するとすぐにドアが開いた。
そしてそこにいたのは。
「はじめまして、初島沙春です」
――――美幼女だった。
とりあえず書き溜めが続く限りは毎晩20時に投稿します。
では!