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セブカル島

「おばさんが、女神?」


 奨伍は、目の前にいるヒラヒラしたドレスを着て立っている女にそう言った。


『はい? おば···』


「ここは、どこ? 僕、たっくんにお薬持ってかないと行けないんだけど?」


 奨伍は、背中に背負ったリュックを取ろうとしたが、背中には何も背負っておらず、むしろ自分が着ていた服も違う事に気付いた。


『ここは、セブカル島です。高岡奨伍···』


「返して! 泥棒! たっくんのお薬ないと、たっくん死んじゃうから返して!」


 真っ赤な顔をして、女神に挑みかかる奨伍。


『死にはしません。薬は、既にあちら側にあります』


 女神は、手にしていた大きな本を見ながら、そう奨伍に告げた。


『高岡奨伍、あなたは死んだのです』


「どうして? いつ? 何時何分何秒前?」


『2018年12月10日午後15時26分30秒。あなたは、歩道橋の階段で大好きな仮面ライダーのメダルを取ろうとして運悪く転げ落ちて亡くなったのです!』


 息を荒げズバズバと答えた女神と、


「じゃ、僕のクリプレは?」


 いまいち実感の沸かない奨伍は、自身が貰える筈だったクリスマスプレゼントを心配した。


『クリプレ? なんですか、それは?』


「クリスマスプレゼント! そんなことも知らないの、おばさん」


『貰えなくて当然です。あなたは、死んだのですから! ほら、サッサと行きなさい』


 女神は、ため息を付きながら手で追い払う仕草をしたが···


「どこに? じゃ、僕の服は? なにこの変なの」


 奨伍は、自分が身につけている真っ白なポンチョみたいな服の裾を指で摘んだ。


『それは、この世から旅立った者が着る服·エンゼルです。ほら、あそこをご覧なさい』


 女神が、指差した方向には何人もの同じ服を着た男女がズラッと並んでいた。


「これも、服?」


 奨伍は、自分の頭にふわっと浮かんでる金色の輪っかを指差すと、女神がこくりと頷く。


「で? 僕は、あそこにいって何するの? お家に帰れるの? 僕、お腹空いたんだけど。ねぇ、おばさーんっ!!」


『あのですね? 高岡奨伍? おやめなさい。それを引っ張らないで···』


 奨伍は、慌てふためく女神の服を離そうとしたが、時既に遅く···


 ビリッ···ビィッ···


 あわや女神の着ていた服が、切り裂かれてしまい···



「ここに入ってろ!」


 怖い男によって、牢へ入れられてしまった。


「あだぁっ! 児童虐待だぞ!」


「よりにもよって、あのお方のドレスを破るとは···」


「ねぇ、おじさん」


「なんだ?」


 牢の扉越しに奨伍は、


「おしっこ」


 そう言ったのだ。


「おしっこ? あぁ、ションベンか。それなら、そこの丸い窓のある扉がトイレだ」


「はーい。で、ここは?」


「牢! 欲しいものは、その四角いモニターに向かって喋れば出る。あと、用事があったら、これを押せ」


 それだけ聞くと、奨伍は頷きトイレへと駆け込んだ。


 ジャァーーーッと水栓レバーを押すと普通に水が流れていく。


「着替えたい。これ股がスースーして嫌だ。お腹も空いたし、話したら喉乾いたし」


 奨伍は、先程の男が言ったモニターというテレビみたいなものの前に立った。


「どうやってつけるの、これ!」


 触ろうとすると、真っ暗な画面が真っ青に切り替わり、


『お呼びですか? ご主人様』


 とモニターが答えた。


「ご主人様じゃない。奨伍!」


『では、奨伍さま。ご要件を承ります』


 機械ではあるのに、まるで人間みたいに喋るモニター。


「僕、お着替えしたいんだけど。ズボンとかシャツとかある? あと、お腹も空いたし、喉も乾いた! 出して!」


『畏まりました。少々お待ちくださいませ』


 画面が、パッと切り替わり着せ替えみたいなゲームの画面になった。


「あ、僕の顔だ。これを指で動かしてけばいいのか?」


 試しにシャツを1枚自分の身体に当てはめてみると、不思議な事に奨伍の着ていたエンゼルが、はめ込んだシャツに変わった。


「のはいいけど···」


 下半身すっぽんぽんじゃ、流石に恥ずかしい乙女···いや男心。


 パンツ、ズボン、靴下、靴と一通り当てはめて、


「うん! なんとかいい。あと、お腹だ。モニターのお姉さん! なんか、食べるもの下さい!」


『畏まりました。お住みになられていた国で食べられる物を表示していきます』


 今度は、和食、洋食、中華、お菓子の表示が出され、奨伍は迷わずお菓子の選択をするが、


「モニターのお姉さん! お菓子のボタン動かないよ?」


『奨伍さま? まずは、お食事でございます』


 そう言い、奨伍は渋々洋食のボタンを選び、


「すごーい! 全く同じ味だ!」


 ワクドナルドの照り焼きバーガーにかぶりついた。


「僕、次に死んだらまたここにきたい」


 やはり、実感のないのが子供···


「よぉし! じゃ、次はこれだ!」


「今度は、これも!」


 次から次へと色々な物を出していき···


「おじさーんっ! ちょっと、きてーーーっ!」


 コールボタンを押し、牢番を読んだ奨伍は···

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