第7話:宇宙船内の未知なる便意
俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度目かの「これ以上変なとこ行きたくねえ」って願いも虚しく、毎回予想を超えてくる。昨日はバッキンガム宮殿で近衛兵にガン見されながら用を足したし、もう監視される系は勘弁って思ってたけど……。
今日は昼に食ったコンビニのチキンナゲットが胃の中で暴れてて、仕方なくトイレに駆け込んだ。ドアを開けた瞬間――。
「うおっ、宇宙船の中!?」
目の前には、金属製の壁に埋め込まれたカラフルなライトがピカピカ光ってる。浮いてるモニターには地球の映像が映ってて、謎のビープ音が「ピポピポ」って鳴り響いてる。で、俺はいつものように便器ごと、その宇宙船の操縦室っぽい場所のど真ん中にポツン。目の前には、触手みたいな手でボタンを押してる緑色の宇宙人がいる。
「いや、マジかよ……地球偵察中の宇宙船内でトイレって、SFすぎだろ!」
宇宙人はでかい目でモニターをジッと見てて、俺には気づいてない……はず。「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたいけどさ。この距離、触手が届きそうな近さだぞ! しかも周りは無重力っぽくて、俺の便器が微妙に浮いてる気がする。落ちねえよな、これ?
腹の中じゃ、チキンナゲットの油がグチャグチャ暴れてる。時間がない。こんな場所で用を足すとか、羞恥心より先に「捕まったら実験台じゃね?」って恐怖が襲ってくる。あの宇宙人、触手で何かメモってるみたいだし、俺のこと記録されたらどうすんだよ!
「おっ、おっ、おっ……落ち着け、俺! 早く終わらせて帰るんだ!」
その時、宇宙人が「グルグルジジ?」って変な声出して、触手を俺の方に伸ばしてきた。やばい、見つかった!? 俺は慌てて息を止めて固まる。でも触手、俺の頭上スレスレで止まって、何か浮いてるゴミを掴んで戻った。見えてねえよな……よな?
無重力の中、ビープ音に紛れて俺の腹が「ぐぅう」って鳴った。宇宙人が一瞬モニターから目を離して首(あるのか?)を傾げた。やばい、音でバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。換気扇のブーンって音と便器の重力が、いつも以上に安心する。汗だくで息を整えながら、俺は呟いた。
「宇宙船内って……地球偵察中の宇宙人に囲まれながらトイレとか、緊張感が宇宙規模だろ……」
考えてみれば、あの宇宙人、俺のこと本当に気づいてなかったよな? 触手がゴミ拾っただけだし。でも、あのSF空間でやった事実は消えねえ。俺のメンタル、もう地球外だよ。
「ったく、次はどこだよ……もう宇宙とか未知の領域は勘弁してくれ」
チキンナゲットは当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。