第87話:妹の魔法使いごっこ とリラックスな便器
俺、佐藤太一、18歳。
この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度も「もう限界だろ」って叫んでる。
最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の原因になってるのは分かってるけど、やめられねえ。
昨日は彩花のカラオケで緊張しすぎて心が熱くなったし、もう緊張しすぎる場所はマジで勘弁って思ってた。
リラックスできる場所に行きてえよ……って願ってたけど、このトイレは毎回予想を妹にぶち込んでくる。
今日は昼に食った「魔法使いっぽいチョコケーキ」が胃の中でモヤモヤしてて、チョコの甘さとスポンジの重さが腹をギュルギュル鳴らしてる。
アニメ気分で食ったのが運の尽きだ。
トイレに駆け込んで、ドアをガチャッと開けた瞬間――。
「うおっ、美月の部屋!?」
目の前には、実家の妹・佐藤美月の部屋。
美月が「アブラカタブラ!」ってアニメの魔法使いになりきって呪文を唱えてて、満足そうに「ニコッ」と笑ってる。
ステッキが「ピカッ」と光るおもちゃで、部屋のスピーカーから「♪~」とアニメBGMが流れてる。
遠くで窓が「カタカタ」と揺れ、ぬいぐるみが「ポフッ」とベッドに置かれてる。
で、俺はいつものように便器ごと、その魔法使いごっこのど真ん中にポツンと出現。
「いや、マジかよ……美月が魔法使いやってる中でトイレって、リラックスすぎて気まずいだろ!」
すぐ横では、美月が「闇の力を解き放て!」ってステッキ振ってて、「これで世界を救った!」って自己満足してる。
距離、美月まで2メートルくらい。
チョコケーキの甘い匂いが鼻に残ってても、部屋の柔軟剤と紙の臭いに混ざって混乱だ。
この穏やかな場所で座ってるだけで、心臓がバクバクだ。
Tシャツが汗でじっとりして、場違い感がやばい。
「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。
でもこの近さ、美月の「ハリーポッターッ!」って叫びや、ステッキの「ピピッ!」って効果音が耳にガンガン入ってくるんだぞ!
部屋の空気が温かくて静かで、便器がカーペットにドカッと浮いてるのが気まずい。
こんなリラックスした場面で用を足すとか、羞恥心が美月の魔法より強い。
リラックスすぎて、心が緊張で締め付けられてる。
腹の中じゃ、チョコケーキのチョコと生地がグチャグチャ暴れてる。
時間がない。
こんな場所でミッションとか、心が穏やかさと羞恥で爆発しそう。
美月が「次は回復魔法だ!」ってステッキを振り回す中、俺は必死に腹に力を入れる。
「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」
その時、美月が俺のすぐ横まで来て、「魔法の気配がする!」ってステッキを構えた。
やばい、見つかる!?
俺は慌てて息を止めて固まる。
でも美月、俺をスルーして「敵はあっちかな?」って反対に走って離れた。
見えてねえよな……よな?
でもその瞬間、ぬいぐるみが「ドサッ!」と床に落ちて、衝撃で便器が「ガタッ」と揺れた。
「うっ!」って声が出そうになったけど、汗だくで堪えた。
部屋の静けさに紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。
美月が一瞬「ん?魔法の音?」って顔して首傾げた。
やばい、音でバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。
換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上に現実に戻してくる。
全身汗だくで、チョコケーキの甘い匂いが鼻に残ってる。
心がまだ美月の楽しさで震えてる。
息を整えながら、俺は呟いた。
「美月の魔法使いごっこって……リラックスな部屋の前でトイレとか、気まずすぎて心が崩れるだろ……」
考えてみれば、美月も俺のこと本当に気づいてなかったよな?
「魔法の音?」は遊びの延長だろ。
でも、あの無邪気さの中でやった事実は消えねえ。
俺のメンタル、もう美月のステッキみたいにグチャグチャだよ。
「ったく、次はどこだよ……もう気まずすぎるとこはマジで勘弁してくれ」
チョコケーキは当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。




