第74話:草津湯畑のヤンデレ家族と穏やかな便器
俺、佐藤太一、18歳。
この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度も「もう限界だろ」って叫んでる。
最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の原因になってるのは分かってるけど、やめられねえ。
昨日はSAの女子トイレで騒がしすぎて心が崩れたし、もう騒がしすぎる場所はマジで勘弁って思ってた。
静かで落ち着いた場所に行きてえよ……って願ってたけど、このトイレは毎回予想を温泉にぶち込んでくる。
今日は昼に食った「温泉まんじゅう」が胃の中でモヤモヤしてて、あんこの甘さと皮の重さが腹をギュルギュル鳴らしてる。
草津っぽい気分で食ったのが運の尽きだ。
トイレに駆け込んで、ドアをガチャッと開けた瞬間――。
「うおっ、湯畑!?」
目の前には、草津温泉の湯畑。
湯気が「モワモワ」と立ち上ってて、温泉水が「チャプチャプ」と流れ落ちてる。
観光客が「写真撮ろう!」って穏やかに歩き回り、硫黄の香りが「フワッ」と漂ってる。
で、俺はいつものように便器ごと、その湯畑のど真ん中にポツンと出現。
しかも、すぐ近くに1歳下の幼なじみでヤンデレの佐々木美咲が家族旅行中で、両親と一緒にいる!
「いや、マジかよ……湯畑で美咲の家族旅行中にトイレって、穏やかすぎて怖すぎだろ!」
すぐ横では、美咲が「太一くんがここにいたら…」って不気味に呟いてて、母親が「美咲、写真撮るわよ」と優しく声かけてる。
父親が「温泉気持ちいいなあ」って笑ってる。
距離、美咲まで3メートルくらい。
温泉まんじゅうの甘い匂いが鼻に残ってても、硫黄と湯気の香りに混ざって混乱だ。
この穏やかな場所で座ってるだけで、心臓がバクバクだ。
Tシャツが汗でじっとりして、場違い感がやばい。
「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。
でもこの近さ、美咲の「太一くん、私だけでいいよね…」って呟きや、母親の「こっち向いて!」って声が耳にガンガン入ってくるんだぞ!
湯畑の空気が温かくて静かで、便器が石畳にドカッと浮いてるのが気まずい。
こんな穏やかな場所で用を足すとか、羞恥心が美咲の執着より重い。
穏やかすぎて、心が緊張で締め付けられてる。
腹の中じゃ、温泉まんじゅうのあんこと皮がグチャグチャ暴れてる。
時間がない。
こんな場所でミッションとか、心が静けさと羞恥で爆発しそう。
美咲が「太一くんの分も撮っとくね」ってカメラを構える中、俺は必死に腹に力を入れる。
「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」
その時、美咲が俺のすぐ横まで来て、「太一くんの匂いがする気がする…」って辺りをキョロキョロした。
やばい、見つかる!?
俺は慌てて息を止めて固まる。
でも美咲、俺をスルーして「気のせいかな」って呟いて離れた。
見えてねえよな……よな?
でもその瞬間、湯気が「モワッ!」と便器に直撃して、熱が「ジリッ!」と伝わってきた。
「うっ!」って声が出そうになったけど、汗だくで堪えた。
湯畑の静けさに紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。
美咲が一瞬「ん?太一くんの声?」って顔して首傾げた。
やばい、音でバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。
換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上に現実に戻してくる。
全身汗だくで、温泉まんじゅうの甘い匂いが鼻に残ってる。
心がまだ湯畑の穏やかさと美咲の狂気で震えてる。
息を整えながら、俺は呟いた。
「湯畑の美咲家族旅行って……穏やかな温泉の前でトイレとか、怖すぎて心が茹で上がるだろ……」
考えてみれば、美咲も両親も俺のこと本当に気づいてなかったよな?
「太一くんの声?」は幻聴だろ。
でも、あの穏やかさの中でやった事実は消えねえ。
美咲のヤンデレっぷりが家族旅行でも不気味すぎるし…。
俺のメンタル、もう湯畑の湯気みたいにグツグツしてるよ。
「ったく、次はどこだよ……もう穏やかすぎるとこはマジで勘弁してくれ」
温泉まんじゅうは当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。




