第72話:魔王と勇者の最終戦と騒がしき便器
俺、佐藤太一、18歳。
この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度も「もう限界だろ」って叫んでる。
最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の原因になってるのは分かってるけど、やめられねえ。
昨日はきさらぎ駅のトイレで静かすぎて心が消えかけたし、もう静かすぎる場所はマジで勘弁って思ってた。
騒がしくて活気ある場所に行きてえよ……って願ってたけど、このトイレは毎回予想を異世界にぶち込んでくる。
今日は昼に食った「ローストビーフ」が胃の中でモヤモヤしてて、肉の旨味とソースの重さが腹をギュルギュル鳴らしてる。
RPGっぽい気分でガッツリ食ったのが運の尽きだ。
トイレに駆け込んで、ドアをガチャッと開けた瞬間――。
「うおっ、異世界!?」
目の前には、魔王と勇者の最終戦の戦場。
魔王が「この世界は我が物だ!」って咆哮を上げてて、巨大な剣が「ガキーン!」と勇者の盾にぶつかってる。
魔法が「ドカーン!」と爆発し、地面が「ズズン!」と揺れてる。
遠くで魔物の軍勢が「ギャオオ!」と吠え、勇者の仲間が「負けるな!」って叫んでる。
で、俺はいつものように便器ごと、その戦場のど真ん中にポツンと出現。
「いや、マジかよ……魔王と勇者の最終戦でトイレって、騒がしすぎて死ぬだろ!」
すぐ横では、勇者が「光よ!」って剣を振り上げてて、魔王が「無駄だ!」って闇の魔法をぶっ放してる。
距離、5メートルくらい。
ローストビーフの肉臭が鼻に残ってても、焦げた土と血の匂いに完全に負けてる。
この激しい場所で座ってるだけで、心臓がバクバクだ。
Tシャツが汗でビショビショで、場違い感がやばい。
「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。
でもこの近さ、魔王の「滅べ!」って咆哮や、勇者の「仲間を信じる!」って叫びが耳にガンガン入ってくるんだぞ!
戦場の空気が熱くて騒がしくて、便器が焦土に「ズブッ」と半分埋もれてる。
こんな壮大な場所で用を足すとか、羞恥心が魔王の魔力よりデカい。
騒がしすぎて、心が興奮で締め付けられてる。
腹の中じゃ、ローストビーフの肉とソースがグチャグチャ暴れてる。
時間がない。
こんな場所でミッションとか、心が騒音と羞恥で爆発しそう。
勇者が「これで終わりだ!」って光の剣を振り下ろす中、俺は必死に腹に力を入れる。
「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」
その時、魔王が俺のすぐ横まで飛んできて、「貴様ら全員!」って闇の波動を放った。
やばい、見つかる!?
俺は慌てて息を止めて固まる。
でも波動、俺をスルーして「ドゴーン!」と地面を抉っただけだった。
見えてねえよな……よな?
でもその瞬間、衝撃で便器が「ガタッ」と揺れて、「うっ!」って声が出そうになったけど、汗だくで堪えた。
戦場の喧騒に紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。
勇者が一瞬「ん?魔物の唸りか?」って顔して首傾げた。
やばい、音でバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。
換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上に現実に戻してくる。
全身汗だくで、ローストビーフの肉臭が鼻に残ってる。
心がまだ異世界の戦場で震えてる。
息を整えながら、俺は呟いた。
「魔王と勇者の最終戦って……騒がしい戦場の前でトイレとか、活気ありすぎて心が崩れるだろ……」
考えてみれば、魔王も勇者も俺のこと本当に気づいてなかったよな?
「魔物の唸りか?」は偶然だろ。
でも、あの激戦の中でやった事実は消えねえ。
俺のメンタル、もう魔王の城みたいにボロボロだよ。
「ったく、次はどこだよ……もう騒がしすぎるとこはマジで勘弁してくれ」
ローストビーフは当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。




