第4話:石油タンカーの荒波ミッション
俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活が続く中、最近じゃ駅とか平安時代とか、色んな場所でメンタルを削られてる。もう何が来ても驚かねえ……とか強がってたけど、やっぱり毎回心臓に悪いんだよ。
今日は朝から腹が怪しくてさ。昨日の親戚の集まりで出された怪しい海鮮丼が原因っぽい。仕方なくトイレに駆け込んだら――。
「うおっ、大海原!?」
目の前には、果てしない青い海。波がザッパーンって音を立ててて、頭上にはカモメがギャーギャー鳴いてる。そして俺は、巨大な石油タンカーの甲板に便器ごと出現。デカいパイプやらタンクやらが並ぶ無機質な鉄の景色の中で、俺だけが異物感バリバリだ。
「いや、マジかよ! 航行中のタンカーの上でトイレって!」
風がビュービュー吹いてきて、Tシャツがバタバタ煽られる。遠くで船員らしきオレンジの作業着の奴らが何か叫び合ってるけど、波の音でよく聞こえねえ。まあ、「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルールだから、気づかれねえはずだ。はずなんだけどさ、この開放感が逆に怖いんだよ!
腹の中じゃ、海鮮丼の怨霊が暴れまくってる。時間がない。こんな場所で用を足すとか、羞恥心より先に「落ちたらどうすんだよ」って恐怖が襲ってくる。便器ごと海に流されたら終わりだろ!
「おっ、おっ、おっ……落ち着け、俺! 集中だ!」
波がタンカーにぶつかって、甲板がグラッと揺れる。やばい、バランス崩しそう! 俺は慌てて便器の縁を掴んで耐える。そしたら 갑자기、デカいスピーカーから「異常なし、航行続行!」って声が響いてきた。異常ねえわけねえだろ、俺がここにいる時点で異常だよ!
風と波と腹痛の三重苦の中、俺は必死に力を込める。
ぽちゃん。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。換気扇のブーンって音と、便器の安定感がやけにありがたく感じる。全身汗だくで、俺は呟いた。
「石油タンカーの甲板って……海のど真ん中でトイレとか、開放感ありすぎて逆にキツいだろ……」
考えてみれば、あの船員たち、俺のこと本当に見えてなかったよな? 風に煽られて声出さなくて良かった。あの状況で「助けてー!」とか叫んでたら、余計にパニックだったわ。
「ったく、次はどこだよ……もう海関係は勘弁してくれ」
海鮮丼は二度と食わねえと心に誓いつつ、俺はトイレのドアをそっと閉めた。でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。