第51話:徳川吉宗の成敗と正義の便器
俺、佐藤太一、18歳。
この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度も「もう限界だろ」って叫んでる。
最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の原因になってるのは分かってるけど、やめられねえ。
昨日は卑弥呼の祭壇で神秘すぎて心が震えたし、もう神秘すぎる場所は勘弁って思ってた。
日常的で落ち着いた場所に行きてえよ……って願ってたけど、このトイレは毎回予想を時代劇にぶち込んでくる。
今日は昼に食った日本の「天ぷら」が胃の中でモヤモヤしてて、エビと野菜の油っぽさが腹をギュルギュル鳴らしてる。
江戸っぽい気分で食ったのが運の尽きだ。トイレに駆け込んで、ドアをガチャッと開けた瞬間――。
「うおっ、徳川吉宗!?」
目の前には、畳敷きの広間。
徳川吉宗が袴姿で「世の顔を見忘れたか!」ってド迫力の声で叫んでる。
正面では悪代官が「ご、ご勘弁を!」って土下座してて、家臣たちが「成敗せよ!」と厳しく見張ってる。
遠くで刀の鞘が「カチャッ」と鳴り、緊張感がビリビリ漂ってる。
で、俺はいつものように便器ごと、その悪代官を成敗してる吉宗の前のど真ん中にポツンと出現。
「いや、マジかよ……吉宗の成敗の場でトイレって、日常どころか劇的すぎだろ!」
すぐ横では、吉宗が「民を苦しめた罪、許すまじ!」って刀を手に持って睨んでて、悪代官が「命だけは!」って泣き叫んでる。
距離、3メートルくらい。天ぷらの油っぽい匂いが鼻に残ってても、広間の木と汗の臭いに混ざって不思議な感じだ。この正義の場面で座ってるだけで、心臓がバクバクだ。Tシャツが汗でじっとりして、場違い感がやばい。
「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。でもこの近さ、吉宗の「この悪を断つ!」って威厳ある声や、家臣の「うむ」って呟きが耳にガンガン入ってくるんだぞ! 広間の空気が重くて緊迫してて、便器が畳にドカッと浮いてるのが気まずい。
こんな劇的な場所で用を足すとか、羞恥心が吉宗の正義よりデカい。緊迫すぎて、心が緊張で締め付けられてる。
腹の中じゃ、天ぷらのエビと野菜がグチャグチャ暴れてる。
時間がない。
こんな場所でミッションとか、心が正義と羞恥で爆発しそう。
吉宗が「お前の最期だ!」って刀を構えてる中、俺は必死に腹に力を入れる。
「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」
その時、家臣の一人が俺のすぐ横まで来て、「将軍様、証拠はこちらに」と書類を差し出した。
やばい、見つかる!? 俺は慌てて息を止めて固まる。
でも家臣、俺をスルーして「これで決まりです」と吉宗に渡して戻った。
見えてねえよな……よな? でもその瞬間、悪代官が「うわぁ!」って最後の叫びを上げて、刀が「スッパン!」って振り下ろされた。
衝撃で便器が「ガタッ」と揺れて、「うっ!」って声が出そうになったけど、汗だくで堪えた。
広間の静寂に紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。
吉宗が一瞬「ん?何だ?」って顔して首傾げた。やばい、音でバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。
換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上に現実に戻してくる。
全身汗だくで、天ぷらの油っぽい匂いが鼻に残ってる。
心がまだ吉宗の正義で震えてる。息を整えながら、俺は呟いた。
「吉宗の成敗の場って……劇的な正義の前でトイレとか、日常どころか重すぎだろ……」
考えてみれば、吉宗や家臣、俺のこと本当に気づいてなかったよな?
「何だ?」は偶然だろ。
でも、あの緊迫した場面でやった事実は消えねえ。俺のメンタル、もう悪代官みたいに成敗されてるよ。
「ったく、次はどこだよ……もう劇的すぎるとこは勘弁してくれ」
天ぷらは当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。




