第48話:ビッグバン前と無の便器
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俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度も「もう限界だろ」って叫んでる。
最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の原因になってるのは分かってるけど、やめられねえ。
昨日はパラボラアンテナの下で桜と古びた感じにやられたし、もう古びた感じと風情が混ざるとこは勘弁って思ってた。
未来的でピカピカな場所に行きてえよ……って願ってたけど、このトイレは毎回予想を宇宙規模でぶち壊してくる。
今日は昼に食った日本の「味噌汁」が胃の中でモヤモヤしてて、味噌の塩気と豆腐の優しさが腹をギュルギュル鳴らしてる。
落ち着く味を求めたのに、結局トイレに駆け込む羽目になった。
ドアをガチャッと開けた瞬間――。
「うおっ、何!?」
目の前には、何もない。
真っ暗でもなく真っ白でもなく、ただの「無」。空間も時間も存在しない、ビッグバン前の虚無が広がってる。
音も光もなくて、「シーン」とした感覚だけが漂ってる。
で、俺はいつものように便器ごと、そのビッグバン前の無のど真ん中にポツンと浮いてる。
「いや、マジかよ……ビッグバン前でトイレって、未来的すぎて逆に何もねえだろ!」
すぐ横には、何もない。
距離とか方向とか意味がないから、5メートルとか言っても分からねえ。
味噌汁の出汁の匂いが鼻に残ってても、嗅ぐ空間すらなくて感覚がバグってる。
この無の中で座ってるだけで、心臓がバクバクだ。
Tシャツが汗でじっとりしてるけど、汗が落ちる地面すらねえ。
虚無すぎて、頭が混乱してる。
「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。
でも見るも聞くも何もねえから、ルール自体意味あんのか分からねえ。「何もねえ!」って叫んでも声が出てるのかすら分からねえんだぞ! 無の空気――いや、空気すらねえ――が俺を包んでて、便器が「フワフワ」浮いてるだけだ。
こんな場所で用を足すとか、羞恥心が宇宙の始まりより先に爆発しちまう。
未来的すぎて、心が無に飲み込まれてる。
腹の中じゃ、味噌汁の豆腐とわかめがグチャグチャ暴れてる。
時間がない――いや、時間すらねえのか? こんな場所でミッションとか、心が虚無と緊張で爆発しそう。
何もない中、俺は必死に腹に力を入れる。
「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」
その時、何か「ビクッ」とした感覚がした。
やばい、ビッグバン始まるのか!? 俺は慌てて息を止めて固まる。
でも何も起こらず、「無」がそのまま続いてるだけだった。
見えてねえよな……よな? でもその瞬間、俺の頭の中で「ドカーン!」って想像の爆発音が響いた気がした。
虚無すぎて、脳が勝手に補完しちまう。
無の静寂に紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。
音が響く空間すらねえのに、俺の耳にだけやけにデカく聞こえた。
やばい、ビッグバンにバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。
換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上に現実に戻してくる。
全身汗だくで、味噌汁の出汁の匂いが鼻に残ってる。
心がまだビッグバン前の無で震えてる。息を整えながら、俺は呟いた。
「ビッグバン前って……何もない無の前でトイレとか、未来的すぎて頭バグるだろ……」
考えてみれば、何もねえから気づくも何もねえよな? でも、あの虚無でやった事実は消えねえ。
俺のメンタル、もう宇宙が生まれる前に崩壊してるよ。
「ったく、次はどこだよ……もう何もなさすぎるとこは勘弁してくれ」
味噌汁は当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。




