第41話:新撰組の切腹と厳粛な便器
俺、佐藤太一、18歳。
この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度も「もう限界だろ」って叫んでる。
最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の原因になってるのは分かってるけど、やめられねえ。
昨日はフランス革命戦争の混乱で心がボロボロになったし、もう戦争絡みは絶対勘弁って思ってた。
平和で静かな場所に行きてえよ……って願ってたけど、このトイレは毎回俺の期待を裏切ってくる。
今日は昼に食った日本の「そば」が胃の中でモヤモヤしてて、つゆの出汁と蕎麦の素朴な重さが腹をギュルギュル鳴らしてる。
痔が治ったからって油断して、シンプルなものなら大丈夫だろうと食ったのが運の尽きだ。トイレに駆け込んで、ドアをガチャッと開けた瞬間――。
「うおっ、新撰組!?」
目の前には、畳敷きの座敷。
障子から薄暗い光が差し込んでて、新撰組の隊士たちが厳かに並んでる。
正面では、一人の隊士が白装束で正座してて、刀を手に「我が命、ここで果てる」と静かに呟いてる。
脇に立つ近藤勇が「潔く逝け」と低い声で言い、土方歳三が「見届けよう」と鋭い目で見つめてる。
で、俺はいつものように便器ごと、その切腹の場面のど真ん中にポツンと出現。
「いや、マジかよ……新撰組の切腹の場でトイレって、平和どころか重すぎだろ!」
すぐ横では、隊士が「新撰組の名に恥じぬよう」と刀を腹に構えてて、他の隊士たちが「うむ」と静かに頷いてる。距離、3メートルくらい。
座敷の空気が冷たくて厳粛で、そばの出汁の匂いが鼻に残ってても、緊張感に負けて感覚が麻痺してくる。
痔は治ったから尻は平気だけど、この重い空気の中で座ってるだけで心臓がバクバクだ。Tシャツが汗でじっとりして、息が詰まりそうになる。
「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。
でもこの近さ、刀の「スッ」って音や、隊士の「南無阿弥陀仏」って呟きが耳にガンガン入ってくるんだぞ! 座敷の静けさが逆に重くて、便器が畳にドカッと浮いてるのが気まずい。
こんな厳粛な場所で用を足すとか、羞恥心が新撰組の隊規より厳しい。痔は治ったのに、心がこの場面で斬られそうだ。
腹の中じゃ、そばのつゆと麺がグチャグチャ暴れてる。
時間がない。こんな場所でミッションとか、心が緊張と恐怖で爆発しそう。近藤が「始めるか」と一言呟いてる中、俺は必死に腹に力を入れる。
「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」
その時、土方が俺のすぐ横まで歩いてきて、「覚悟はできてるな」と隊士に鋭く言った。やばい、見つかる!? 俺は慌てて息を止めて固まる。
でも土方、俺をスルーして「介錯は俺がやる」と刀を手に持った。
見えてねえよな……よな? でもその瞬間、隊士が「うっ!」って刀を腹に突き刺して、畳に「ポタッ」と血が滴った。
衝撃で便器が「ガタッ」と揺れて、「うわっ!」って声が出そうになったけど、グッと堪えた。
座敷の静寂に紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。
土方が一瞬「ん?」って顔して首傾げた。やばい、音でバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。
換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上に救いに感じる。
全身汗だくで、そばの出汁の匂いが鼻に残ってる。痔は治ってるから痛みはないけど、心がまだ新撰組の重さに震えてる。
息を整えながら、俺は呟いた。
「新撰組の切腹って……厳粛な場面の前でトイレとか、オタクと無縁すぎて心が斬られるだろ……」
考えてみれば、近藤や土方、俺のこと本当に気づいてなかったよな? 首傾げたの、緊張のせいだろ。
でも、あの重い座敷でやった事実は消えねえ。
俺のメンタル、もう新撰組の刀でズタズタだよ。
「ったく、次はどこだよ……もう重すぎるとこは絶対勘弁してくれ」
そばは当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。




