第38話:ししろんの防音室とオタクの葛藤
俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度も「もう限界だろ」って叫んでる。最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の原因になってるのは分かってるけど、やめられねえ。昨日はホロライブの配信中でオタク心が揺さぶられたし、もうオタク心くすぐる場所は勘弁って思ってた。でも、このトイレは俺の願いを完全に無視して、またしてもオタクの聖地にぶち込んでくる。
今日は昼に食った日本の「親子丼」が胃の中でモヤモヤしてて、鶏肉の旨味と卵のふわっとした重さが腹をギュルギュル鳴らしてる。痔が治ったからって油断してガッツリ食ったのが運の尽きだ。トイレに駆け込んで、ドアをガチャッと開けた瞬間――。
「うおっ、ししろん!?」
目の前には、防音壁に囲まれた配信ルーム。モニターがカラフルに光ってて、マイクとカメラがズラッと並んでる。空調が「スーッ」と涼しい風を送ってきて、机にはししろんのグッズと飲み物が置かれてる。で、俺はいつものように便器ごと、その獅白ぼたんの配信中の防音室のど真ん中にポツンと出現。そして――目の前で、ししろんが「こんしし~!今日もまったりやっていくよ~」って低めの癒しボイスで配信してる。
「いや、マジかよ……ししろんの配信中でトイレって、涼しすぎて心が燃えるだろ!」
すぐ横では、ししろんが「みんな、最近どう?コメント読むから待っててな~」ってカッコいいのに優しい声で喋ってる。画面にはスパチャが「ピロピロ!」って飛び交ってて、コメントが「ししろん最高」「癒される~」って流れまくってる。距離、2メートルくらい。部屋の空気が涼しくて快適で、親子丼の醤油臭が鼻に残ってても、防音室の清潔な空気に少し負けてる。痔は治ったから尻は平気だけど、ししろんの声にオタク心が「うおおお!」って叫びながら羞恥で縮こまってる。
「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。でもこの近さ、ししろんの「ふぁ~、眠くなってきたな」ってゆるい呟きや、マウスを「カチカチ」って動かす音が耳にガンガン入ってくるんだぞ! 配信のまったりした空気が心地いいけど、便器に座ってる俺が完全に場違いだ。こんな神聖な場所で用を足すとか、羞恥心がししろんのスパチャより目立っちまう。涼しいのに、心が熱くなってる。
腹の中じゃ、親子丼の鶏肉と卵がグチャグチャ暴れてる。時間がない。こんな場所でミッションとか、心がオタクの夢と緊張で爆発しそう。ししろんが「次はゲームやるか~、みんな何がいい?」ってコメント見てる中、俺は必死に腹に力を入れる。
「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」
その時、ししろんが俺のすぐ横まで来て、「ちょっとお茶取るわ~」って机のペットボトルに手を伸ばした。やばい、見つかる!? 俺は慌てて息を止めて固まる。でもししろん、俺をスルーして「喉乾いた~、配信長丁場だな」って呟いて戻った。見えてねえよな……よな? でもその瞬間、コメントが「何か聞こえた?」「ししろん大丈夫?」って流れ始めて、ししろんが「え、なんの音?」って首傾げた。親子丼の匂いか!? 俺の心臓がバクバクだ。
配信のBGMに紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。ししろんが一瞬「ん?お腹すいたかな、私?」って笑った。やばい、音でバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上に現実に戻してくる。全身汗だくで、親子丼の醤油臭が鼻に残ってる。痔は治ってるから痛みはないけど、心がししろんの癒しボイスで震えてる。息を整えながら、俺は呟いた。
「ししろんの配信中って……涼しい防音室の前でトイレとか、オタクの魂が羞恥で溶けるだろ……」
考えてみれば、ししろん、俺のこと本当に気づいてなかったよな? 「お腹すいた」は偶然だろ。でも、あのまったり配信でやった事実は消えねえ。俺のメンタル、もうししろんの「こんしし~」で浄化されつつ羞恥で埋まってるよ。
「ったく、次はどこだよ……もうオタク心くすぐるとこはマジで勘弁してくれ」
親子丼は当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。




