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第29話:大岡越前の三方一両損と痔の癒し

俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度も「もう限界だろ」って叫んでる。最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の原因になってるのは分かってるけど、やめられねえ。昨日は遠山金四郎の裁きの場で緊張感にやられたし、もう緊張感ありすぎる場所は勘弁って思ってた。リラックスできて、痔に優しい場所に行きてえよ……って願ってたけど、このトイレがどう裏切るか、毎回ハラハラだ。

今日は昼に食った日本の「そば」が胃の中でモヤモヤしてて、つゆの出汁と蕎麦の素朴な重さが腹をギュルギュル鳴らしてる。痔がまだズキズキしてるから、あっさりしたものを選んだのに、結局トイレに駆け込む羽目になった。ドアをガチャッと開けた瞬間――。

「うおっ、大岡越前の奉行所!?」

目の前には、畳敷きの座敷。障子から柔らかい日差しが差し込んでて、大岡越前が穏やかな表情で座ってる。袴姿で扇子を手に持つ姿は、威厳と優しさが混ざった雰囲気だ。「これにて一件落着」と静かに言い放つ声が響いてる。座敷の端では、三人の訴訟人が「大岡様!」って感涙にむせんでて、脇に控える役人が「判決を記録します」と巻物を広げてる。で、俺はいつものように便器ごと、その「三方一両損」の名場面のど真ん中にポツンと出現。

「いや、マジかよ……大岡越前の三方一両損の場でトイレって、痔に優しいけど感動が邪魔だろ!」

すぐ横では、大岡越前が「一両を三方で分かち、皆が納得する裁きとする」と知恵深い判決を下してる。訴訟人の一人が「これで争いが終わるなんて!」って泣いてて、もう一人が「大岡様の心遣いに感謝します」と頭下げてる。距離、3メートルくらい。畳の柔らかい感触が便器越しに尻に伝わってきて、痔の痛みが少し和らいで「ほぅ」ってなる。でも、そばの出汁の匂いが鼻に残ってて、座敷の厳かな空気と混ざって気まずい。

「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。でもこの近さ、大岡越前の扇子の「パタパタ」って音や、訴訟人の「ありがとうございます」って嗚咽が耳にガンガン入ってくるんだぞ! 座敷の空気が穏やかで、畳が痔に優しくてありがたいけど、こんな名場面で用を足すとか、羞恥心が三方一両損より複雑だ。痔のズキズキがマシでも、心がリラックスしきれねえ。

腹の中じゃ、そばのつゆと麺がグチャグチャ暴れてる。時間がない。痔の痛みが少し和らいだとはいえ、脂汗が額からポタポタ落ちてくる。こんな場所でミッションとか、心が優しさと感動で爆発しそう。大岡越前が「おしらす!」って一声穏やかに叫んで判決締めてる中、俺は必死に腹に力を入れる。

「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」

その時、役人が俺のすぐ横まで来て、「この裁き、記録に残すべき名判決ですな」と巻物を「ガサッ」と広げた。やばい、見つかる!? 俺は慌てて息を止めて固まる。でも役人、俺をスルーして大岡越前に「ご確認を」と差し出した。見えてねえよな……よな? でもその瞬間、訴訟人の一人が感極まって「大岡様ぁ!」って大声で泣き出した。畳が微妙に揺れて、痔が「ズキッ」と反応しちまった。

裁きの余韻に紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。大岡越前が一瞬「ん?」って顔して扇子止めた。やばい、音でバレる!?

ぷすっ。

「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」

光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。換気扇のブーンって音と便器の冷たさが、いつも以上に現実に戻してくる。全身汗だくで、そばの出汁の匂いが鼻に残ってる。尻の痔がまだズキズキしてるけど、畳のおかげで少し楽だった気がする。息を整えながら、俺は呟いた。

「大岡越前の三方一両損って……痔に優しい畳の前でトイレとか、名裁きに穢れ乗せすぎだろ……」

考えてみれば、大岡越前や役人、俺のこと本当に気づいてなかったよな? 扇子止めたの、偶然だろ。でも、あの感動的な座敷でやった事実は消えねえし、痔はまだ完治してねえ。俺のメンタル、もう三方一両損で割り切れねえよ。

「ったく、次はどこだよ……もう感動的すぎるとこは勘弁してくれ」

そばは当分食わねえし、痔薬塗り直さなきゃと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。

(第29話 完)



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