第23話:上野公園の夜桜と花びらの羞恥
俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度も心が折れそうになってる。最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の原因になってるのは分かってるけど、やめられねえ。昨日は『本能寺から始める信長との天下統一』のアフレコ現場で、歴史オタクの夢が穢れそうになったし、もうオタク絡みは勘弁って思ってた。少しは平和な場所に行きてえよ……って願ってたけど、やっぱりそう簡単にはいかねえみたいだ。
今日は昼に食った日本の「桜餅」が胃の中でモヤモヤしてて、餡子の甘さと桜葉の塩気が腹をギュルギュル鳴らしてる。春らしい気分で食ったけど、結局トイレに駆け込む羽目になった。ドアをガチャッと開けた瞬間――。
「うおっ、上野公園!?」
目の前には、桜が満開に咲き誇る夜の上野公園。薄暗い空にピンクの花びらがふわふわ舞ってて、提灯のオレンジ色の灯りが桜の枝を優しく照らしてる。遠くで「わぁ、きれい!」ってカップルや家族連れの声が聞こえてきて、風が「サアア」と吹くたびに花びらが「ヒラヒラ」って地面に落ちてる。で、俺はいつものように便器ごと、その夜桜のど真ん中にポツンと出現。
「いや、マジかよ……桜満開の夜桜でトイレって、風情ありすぎて逆にキツいだろ!」
すぐ横では、桜の木の下でシート広げたグループが「乾杯!」ってビール缶をカチンと鳴らしてる。少し離れたベンチじゃ、おじいちゃんが「昔はなぁ」と孫に語ってて、子供が「花びら取った!」って走り回ってる。夜風が涼しくて、桜の甘い香りが鼻をくすぐるけど、俺の便器が土の上にドカッとあって完全に浮いてる。桜餅の葉っぱの匂いが鼻に残ってて、風に混ざって余計に気まずい。
「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。でもこの近さ、花見客の笑い声や「パシャッ」ってスマホのシャッター音が耳にガンガン入ってくるんだぞ! 提灯の灯りが便器に影を落としてて、風が吹くたび花びらが「パラパラ」って便器に落ちてくる。こんな風流な場所で用を足すとか、羞恥心が桜の花びらより散っちまう。
腹の中じゃ、桜餅の餡子と餅がグチャグチャ暴れてる。時間がない。こんな場所でミッションとか、心が春の風情と緊張で爆発しそう。シートの上のお姉さんが「桜ってほんと癒されるねぇ」って呟いてる中、俺は必死に腹に力を入れる。
「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」
その時、小学生くらいの女の子が俺のすぐ横まで来て、花びらを「ヒラッ」と拾った。やばい、見つかる!? 俺は慌てて息を止めて固まる。でも女の子、「ママ、見てー!」って走って戻った。見えてねえよな……よな? でもその瞬間、風が強まって花びらが「バサッ」と便器に降り注いできた。「うっ!」って顔を背けたけど、花びらがTシャツにくっついて取れねえ。
花見の歓声に紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。おじいちゃんが一瞬「ん?」って顔した。やばい、音でバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上にホッとする。全身汗だくで、桜餅の甘い匂いと花びらの香りが混ざって混乱。Tシャツにくっついた花びらを払いながら、俺は呟いた。
「上野公園の夜桜って……満開の桜の前でトイレとか、風情が羞恥に変わるだろ……」
考えてみれば、あの花見客、俺のこと本当に気づいてなかったよな? おじいちゃんの「ん?」は偶然だろ。でも、あの春の夜桜の中でやった事実は消えねえ。俺のメンタル、もう花びらみたいに散って風に舞ってるよ。
「ったく、次はどこだよ……もう風流すぎるとこは勘弁してくれ」
桜餅は当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。




