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第21話:砂漠のフンコロガシと灼熱の羞恥

俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度目かの「もう慣れたろ」って自分に言い聞かせても、毎回心が折れる場所に放り込まれる。最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の元凶になってるのは自覚してる。昨日は上野動物園の象の檻で鼻水にやられたし、もう動物絡みは勘弁って思ってたけど……今回は虫かよ、しかも砂漠だ。

今日は昼に食ったエジプトの「コシャリ」が胃の中でモヤモヤしてて、レンズ豆とパスタ、トマトソースの混ざった重さが腹をギュルギュル鳴らしてる。耐えきれずトイレに駆け込んだ俺は、ドアをガチャッと開けた。瞬間――。

「うおっ、砂漠!?」

目の前には、果てしない砂の海。灼熱の太陽がギラギラ照りつけて、熱風が「ザアア」と吹き抜けてくる。遠くに砂丘が波打つように連なってて、地面は熱でゆらゆら揺れてる。で、俺はいつものように便器ごと、その砂漠のど真ん中にポツンと出現。そして――目の前に、フンコロガシがいる。

「いや、マジかよ……フンコロガシの前でトイレって、暑さとシュールさで死ぬだろ!」

フンコロガシ、小さい黒い体で丸めた糞を一生懸命「コロコロ」転がしてる。後ろ足で器用に押して、砂の上を「ズズッ」と進んでるのが見える。距離、1メートルくらい。太陽の熱で汗がダラダラ流れてきて、Tシャツが背中にペッタリ張り付いてる。砂が風に舞って「サラサラ」と音を立て、口に入るとジャリッて感触が気持ち悪い。コシャリのトマト臭が鼻に残ってるけど、この暑さで頭がボーッとしてきた。

「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。でもこの近さ、フンコロガシが糞を転がす「コロッ、コロッ」って音が耳にガンガン入ってくるんだぞ! こんな灼熱の場所で用を足すとか、羞恥心より先に「熱中症で倒れるんじゃね?」って恐怖が襲ってくる。フンコロガシが俺の方に少し近づいてきて、糞の微妙な臭いが風に乗って漂ってきた。いや、お前と俺、どっちが臭いんだよ!?

腹の中じゃ、コシャリの豆とスパイスがグチャグチャ暴れてる。時間がない。こんな場所でミッションとか、心が暑さと緊張で溶けそう。フンコロガシが糞を「コロコロ」転がして砂に埋めようとしてる中、俺は必死に腹に力を入れる。

「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」

その時、フンコロガシが俺のすぐ横まで来て、糞を「ドサッ」と落とした。やばい、見つかる!? 俺は慌てて息を止めて固まる。でもフンコロガシ、落とした糞をまた「コロッ」と転がし始めて離れていった。見えてねえよな……よな? でもその瞬間、熱風が強まって砂が「バサッ」と便器に当たった。「うっ!」って目をつぶったけど、汗で目が開かねえ。

砂漠の静寂に紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。フンコロガシが一瞬動き止めてアンテナ動かした。やばい、音でバレる!?

ぷすっ。

「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」

光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上に天国に感じる。全身汗だくで、砂が髪に絡まってジャリジャリしてる。コシャリのスパイス臭が鼻に残ってて、息を整えながら俺は呟いた。

「砂漠のフンコロガシって……糞転がす虫の前でトイレとか、暑さとシュールさが極まりすぎだろ……」

考えてみれば、あのフンコロガシ、俺のこと本当に気づいてなかったよな? アンテナ動かしたの、偶然だろ。でも、あの灼熱の中でやった事実は消えねえ。俺のメンタル、もう砂漠の砂みたいに乾ききってるよ。

「ったく、次はどこだよ……もう暑すぎるとこは勘弁してくれ」

コシャリは当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。



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