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第20話:象の檻とスパイシーな試練

俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度目かの「もう慣れたろ」って自分に言い聞かせても、毎回心を抉る場所に放り込まれる。最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の原因になってるのは分かってる。昨日は北極でシロクマにビビりまくったし、もう極端すぎる場所は勘弁って思ってたけど……今回はほどほどに身近で、でもほどほどにヤバい。

今日は昼に食ったタイの「トムヤムクン」が胃の中でモヤモヤしてて、エビの酸っぱ辛さとレモングラスの香りが腹をギュルギュル鳴らしてる。耐えきれずトイレに駆け込んだ俺は、ドアをガチャッと開けた。瞬間――。

「うおっ、上野動物園!?」

目の前には、コンクリートの壁に囲まれた象の檻。地面は土と藁が混ざってて、でかい象が「ブオーン」と鼻を鳴らしながらトコトコ歩いてる。遠くで子供たちが「ゾウさんだー!」って叫んでて、檻の外の柵越しに観光客がスマホで写真撮ってる。で、俺はいつものように便器ごと、その象の檻のど真ん中にポツンと出現。

「いや、マジかよ……象の檻の中でトイレって、ほどほどどころかヤバすぎだろ!」

象、でけえ。灰色の巨体が目の前で鼻を振り回してて、時々「パオーン」と鳴き声が響く。距離、4メートルくらい。長い鼻で藁を「ササッ」と掴んで口に運んでるのが見える。檻の外では家族連れが「可愛いねぇ」とか言ってるけど、俺は便器に座ったまま動けねえ。土の匂いとトムヤムクンのスパイス臭が混ざって、鼻がヒリヒリしてる。風が吹くと、象の毛が揺れて「フワッ」と埃が舞ってくる。

「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。でもこの近さ、象の黒い目が俺をジッと見てる気がするんだぞ! コンクリートの冷たさが便器越しに伝わってきて、Tシャツに汗がじっとり滲んでる。檻の外の観光客の「ワー!」って歓声や、子供の「ゾウさん、おっきい!」って声が耳に入ってくる。こんな賑やかな場所で用を足すとか、羞恥心が象の鼻より長くなっちまう。

腹の中じゃ、トムヤムクンの辛さとエビがグチャグチャ暴れてる。時間がない。こんな場所でミッションとか、心が動物園の喧騒と緊張で爆発しそう。象が鼻で水を「シャーッ」と吸って遊んでる中、俺は必死に腹に力を入れる。

「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」

その時、象が俺の方にズシンと一歩近づいてきた。やばい、見つかる!? 俺は慌てて息を止めて固まる。でも象、俺をスルーして鼻で地面の藁を「フシュー」と吹いて、また離れた。見えてねえよな……よな? でもその瞬間、鼻から水が「バシャッ」と飛んできて、便器に少し跳ねた。「うわっ!」って声が出そうになったけど、グッと堪えた。

観光客の歓声に紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。象が一瞬耳をパタッと動かした。やばい、音でバレる!?

ぷすっ。

「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」

光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上にホッとする。全身汗だくで、トムヤムクンのスパイス臭と象の土臭さが混ざって混乱。息を整えながら、俺は呟いた。

「上野動物園の象の檻って……でかい鼻の前でトイレとか、ほどほどに日常的すぎて逆にキツいだろ……」

考えてみれば、あの象、俺のこと本当に気づいてなかったよな? 耳動かしたの、偶然だろ。でも、あの動物園の雰囲気の中でやった事実は消えねえ。俺のメンタル、もう象の足跡みたいに踏み潰されてるよ。

「ったく、次はどこだよ……もう動物絡みは勘弁してくれ」

トムヤムクンは当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。



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