第18話:父のデスクとオフィスの重圧
俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度目かの「もう無理だ」って叫びも虚しく、毎回心を抉る場所に放り込まれる。最近は世界各国の料理にハマってて、それが腹痛の元凶になってる気がする。昨日は銭湯でじいちゃんに気配を感じられてビビったし、もう家族絡みは勘弁って思ってたけど……まさか今度は父親かよ。
今日は昼に食ったアメリカの「ハンバーガー」が胃の中でモヤモヤしてて、ビーフパティの油とピクルスの酸味が腹をギュルギュル鳴らしてる。耐えきれずトイレに駆け込んだ俺は、ドアをガチャッと開けた。瞬間――。
「うおっ、オフィス!?」
目の前には、蛍光灯がチカチカ光るオフィスフロア。パーテーションで区切られたデスクがズラッと並び、「カタカタ」とキーボードを叩く音や「ピロリン」とメールの通知音が響いてる。壁には「営業目標達成!」ってグラフが貼られてて、コピー機が「ガシャン」と紙を吐き出してる。で、俺はいつものように便器ごと、そのデスクのど真ん中にポツンと出現。そして――目の前に、俺の父親のデスクがある。
「いや、マジかよ……親父の会社でトイレって、気まずさ超えて恐怖だろ!」
親父、佐藤健一、45歳。真面目なサラリーマンで、俺が小さい頃から「仕事が大事だ」って家で愚痴ってた人。今はスーツのジャケットを椅子に掛けて、シャツの袖をまくって書類に目を通してる。「この数字、合わねえな……」って呟きながら、ペンをカチカチ鳴らしてるのが見える。距離、2メートルくらい。親父のコーヒーの匂いとハンバーガーの油臭が混ざって、鼻が混乱してる。
「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。でもこの近さ、デスクの上の付箋や親父の汗が光る額まで見えちまうんだぞ! オフィスの空気がエアコンでひんやりしてて、便器の冷たさが余計に際立つ。隣のデスクでは同僚が「佐藤さん、今日の会議どうします?」って話しかけてて、親父が「あとで確認する」ってぶっきらぼうに答えてる。こんな真面目な空間で用を足すとか、羞恥心が営業成績より落ち込んでる。
腹の中じゃ、ハンバーガーの油とバンズの重さがグチャグチャ暴れてる。時間がない。こんな場所でミッションとか、心が親子の絆と緊張で爆発しそう。親父が「太一の学費、どうすっかな……」って独り言つぶやいてる中、俺は必死に腹に力を入れる。
「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」
その時、親父が椅子から立ち上がって、俺の方に近づいてきた。やばい、見つかる!? 俺は慌てて息を止めて固まる。でも親父、俺をスルーしてデスク横の棚からファイル取って戻った。「見えてねえよな……よな?」って心の中で叫びながら、その瞬間、同僚が「佐藤さん、臭いっすね?」って笑った。ハンバーガーの油か!? 親父が「換気悪いからな」って鼻で笑ってて、俺の汗が冷たくなった。
オフィスの雑音に紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。親父が一瞬「ん?」って顔して首傾げた。やばい、音でバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上にホッとする。全身汗だくで、ハンバーガーの油臭と親父のコーヒーの残り香が混ざって混乱。息を整えながら、俺は呟いた。
「親父のデスク前って……会社の真面目な空気の中でトイレとか、親子関係が試されるだろ……」
考えてみれば、親父、俺のこと本当に気づいてなかったよな? 首傾げたの、偶然だろ。でも、あのオフィスでやった事実は消えねえ。俺のメンタル、もう残業続きでボロボロだよ。
「ったく、次はどこだよ……もう家族絡みは絶対勘弁してくれ」
ハンバーガーは当分食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。




